5歳児の優しい心
『よつ葉ちゃん、絵本読んで』
ともちゃんが声をかけてくれました。
『良いよ。どれかなぁ?』
ともちゃんへ返事をする看護学生。
今日の担当は小児科病棟、女の子の6人部屋でした。
『よつ葉ちゃん、これ!』
と一冊の本を渡されました。そんな時、指導看護師さんに声をかけられました。
『菜須さん、はなちゃんのレントゲン室への送迎今から行ってくれる』
と指示を受けました。絵本は、お預けです。ともちゃんに「レントゲンから戻ったら絵本読むからね。少しだけ待っててね」と声をかけました。
『嫌! 今!!』
との返事に困る看護学生。ともちゃんのお母様が説得をしてくれていました。それでも許してもらえない様子に、ともちゃんのお母様が私に「行ってください大丈夫ですから。ごめんなさいね」と言って下さいました。本当なら私が説明をしてわかってもらわなくてはいけないが、レントゲン室で待っている医療スタッフをあまり待たせるわけにもいかない。ともちゃんのお母様にお礼を伝えて、はなちゃんをレントゲン室へ連れて行くその時ともちゃんが
『よつ葉ちゃん、キライ』
と言われちゃいました。絵本を読んでもらうのを楽しみにしてくれていたのが痛いほど伝わってきました。でも、ここで迷っているわけにはいかない。はなちゃんを連れてレントゲン室へ向かう廊下を手を繋いで歩く。
『よつ葉ちゃん、大好き! はなちゃんが、よつ葉ちゃんを守ってあげるね』
と言ってくれました。小さくても、先程の出来事をに気にしてくれていたんだと思いました。
『よつ葉ちゃん、泣かないでね』
『泣いてないよ。大丈夫! はなちゃん、ありがとう』
話ながら廊下を進んでいると無事レントゲン室に着きました。受付で来たことを伝えました。
しばらく待つとレントゲン室の扉が開き、はなちゃんが連れていかれました。技師さんに任せて廊下で待つ。
初めて言われた「よつ葉ちゃん、キライ」にショックを受けていたのを、感じとった5歳児に「よつ葉ちゃん、守ってあげるね」と言われてしまう情けない看護学生。
初めて6人部屋を任され、戸惑う出来事でした。
こんなことでは、看護師として通用しないと考えさせられた出来事でした。
何気ない一言でしたが「よつ葉ちゃん、キライ」は、ショックでした。