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雨の魔法使い  作者: あめふらし
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盗賊退治

 皆を起こして朝の食事を終え、黒の森を探索する。

 探索と言っても闇雲でなく、目撃証言に沿って明確に探索していた。

 日が昇り、朝といったところで盗賊の根城は発見された。

 というか以前ゴブリンの沈没させた巣穴だった。

 今では入り口に二人の盗賊の見張りが眠そうにあくびをしており、ぱっとみで盗賊の根城だと分かった。

 

「さて今回の依頼では元々それなりに大規模だった盗賊団が討伐され、その生き残りがここに根城を作ったとのことだ。盗賊の数は事前情報で十から二十。取りあえず作戦を決めるか」


 人質が捕られている可能性も考えながら、作戦は考えられた。

 まず僕がこの洞窟を知っていたので、中がどうなっているかを説明する。

 中は大きな空洞があるだけの単純な作りだ。分かれ道も他に入り口もない。

 考えられた作戦は簡単だった。

 まず入り口を包囲して見張り達を殺す。その際に声を上げさせて、中から盗賊をおびき出させる。

 誘き出したところを狩るといった作戦だ。

 

「剣を使えるものは俺に続け、魔法使いは後方で待機。何かあった時はバックアップしてくれ」


 剣を使える八人と魔法使いの四人にチームは別れた。

 時間をかけて入り口周りを包囲し、フォンスの合図で八人のうち四人が一斉に見張りに襲い掛かった。


「なっ、敵襲だ! ぐふっ」


「ぐふぁっ」


 叫んだ見張りを攻撃させず仕留める先行チーム。あっという間に二人を切り裂き昇天させた。

 

「敵だと? 者ども出撃だぁああ!」


 洞窟の奥から声が鳴り響く。盗賊の親分が指示でも出したらしい。


「おらっ、なめんじゃねえぞ!」


「ガキに負けるほど雑魚じゃねえんだよ!」


 剣を持った先兵が出て来て二人同士で鍔迫り合いになる。だが、鍔迫り合いになるという事は動けないという事。他の二人が鍔迫り合いになっている賊を斬り捨てる。

 あっと言う間に四人減ったのを見た盗賊たちは一旦洞窟に引き上げることに決めたようだ。


「外は囲まれてる、中に戻って籠城するぞ!」


 その一声で賊は外に出てこなくなった。こうなったら、地の利は向こうにある。

 人質がいるかもしれないという事で大規模魔法も使えない。

 

「俺ら四人は一度撤退するぞ。他は根城を囲んだまま動くな!」


 フォンスの指示で賊を斬り捨てた四人が、戻ってきた。

 これで仕切り直しと言う訳だ。

 フォンスは作戦を立て直すと言う訳で、黄金の双盾のリーダーと集まり話し合いを始めた。

 その結果、


「これはもう突撃しかないな。今度は入り口を二人で塞いで残り全員で賊を倒す。剣士は前衛、魔法使いは後衛だ」

 

 という事になった。単純だが籠城作戦は効果絶大らしい。僕たちに作戦らしい作戦を使わせなかった。

 少し気になったことがあったのでフォンスに質問する。


「フォンスさん、これって僕はどれくらいまで力を使っていいんですか?」


 その質問の意図が分からなかったのかフォンスは首をかしげながら答える。


「ん? 普通にいつも通りというか全力でやってもらって構わないが何かあるのか?」


「最初に出てきた四人程度が中にいるなら百人でも僕一人で倒せますね、それも人質を除いてです」


「「「はぁ!?」」」


 周りの人々の驚きの声が重なる。

 

「みんなに見せた水龍たちを百匹も放てば賊は殲滅できるだろうし、でもそうすると他の人たちの出番ないですよね。それはCランク昇格試験となるこの盗賊退治でどうなのかなぁと」


 僕の魔力ならいつも出している水龍を千セット、それに加えて氷龍、灼龍の千セットを加えた合計三千セットでも魔力は半分も使わないだろう。

 正直盗賊をぶっ潰すだけなら人質がいても楽勝なのだ。 

 そのことを伝えると、


「ほんとにできるのか? お前試験官の皆さんにアピールしようとして嘘言ってんじゃないだろうな」


 と黄金の双盾のリーダーであるアッシュが言ってきた。


「失礼ですね。出来ますよ。やろうと思えば百どころか千は軽く行けます!」


 胸を張って言うと意固地になったのかアッシュが、


「へぇー、面白いじゃねぇか。だったらやって見せたらどうだ」


 と乗って来たので、僕も乗り返し、


「そうですね。皆さんの出番を奪ってしまって申し訳ないかもしれないですがやらせていただきます」


 と水龍達で決着をつけることを勝手に二人で決めてしまった。

 そこにフォンスが割り込んだ。


「おいおい、ちょいまてアッシュ、アリア。これは俺たちの試験だぞ。この後アリアが全部片づけてしまったら俺たちは昇級できなくなるかもしれない」


「なに、気にすることねぇよ。このちびっこが調子づいているだけだからよ」


 とアッシュの弁。


「調子に何て乗ってませんよ。普通にできるだけです」


「ああ!? じゃあやって貰おうじゃねぇか」


「もちろんそのつもりです」


「だから待ってって二人ともこれは昇級試験なんだ普通にクリアすれば全員がCランクに昇格できる。それを二人が揉めて失敗したらどう責任取るつもりなんだ。アリアの信じがたい実力は帰ってからでも見ればいいだろう。今は盗賊をせん滅するのが先だ」


 フォンスの提案で結局僕はCランク相当の働きをするという事で落ち着いた。

 そして帰ったらアッシュと僕が決闘をするという話になぜかなった。

 僕としては異論がないので良かったがアッシュでは百匹も水龍を見せる前にやられるのではないかと思う。

 

「と言う訳で、アリアとアッシュのいざこざは町に帰るまで封印な。これ以上持ち上げるようだったら、お前らは反省してもらう。具体的手には盗賊退治に参加させないからな」


「分かった」


「分かりました」


 妙なことになったと思いながら、フォンスの指示に従う。

 そして僕たちは前衛と後衛に分かれて盗賊退治とばかりに中に入る。

 僕は後衛で合計六匹の水龍、氷龍、灼龍を二体ずつ作り出す。


「突撃だ! 人を切っても怯むなよ! 後衛、支援は頼むぞ!」


 中に入ると盗賊が陣営を作って待ち構えていた。

 奥に二人の弓を構えている盗賊がいて、弓を発射してくる。

 それをアッシュが盾で弾き、風魔法の使い手がそらし、僕の水龍がかみ砕いた。


「後衛! 魔法で弓持ちを何とかできるか!」


「敵を焼き尽くせ、ファイアボール!」


「風を持って貫け、ウインドアロー!」


 敵の弓持ちに炎の球体と風の矢が襲い掛かる。僕が飛ばした水龍が頭をかみ砕き、二人の弓持ちが呆気なくダウンする。

 そこからは乱戦になった。

 だがこちらが圧倒的に有利だ。何故なら相手側に魔法を使えるものがいなかったからである。

 相手は剣や斧といったもので、こちらには魔法がある。

 その差は歴然だった。

 危なげなく、盗賊たちが退治されていき人質も居なかったので、特に波乱もなく盗賊退治は終わった。

 後に残ったのは盗賊たちの死体と疲弊したフォンス達やアッシュ達だけである。

 僕はただ六匹をけしかけていただけなので、息切れなどはしていない。

 余裕である。

 こうして無事盗賊退治は終わった。

 盗賊たちの持っていた金品は回収され、討伐の印として右耳を剥ぎ取られていった。

 といってもさすがに人の耳を剥ぎ取るのは、躊躇われたのでじゃんけんで剥ぎ取る係が決められたが。

 剥ぎ取る係に決められた憐れな剣士君は、吐きそうになりながらも右耳を回収していった。

 帰るまでがCランク昇格試験という事で、僕たちはギルドに戻った。

 戻ったころには昼になっており、ギルドでは今回の盗賊退治の依頼の報酬がフォンスによって平等に配られた。

 

「お疲れさま。無事、盗賊退治も出来たし、全員Cランク昇格試験合格って所ね」


 ネルシーさんの一言で、皆が安堵の表情を浮かべて喜んだ。

 僕たちは全員DランクからCランクへと昇格した。

 それはそれでいいのだが、今日は未だメインイベントが一つ残っている。

 アッシュとの決闘だ。


アリア「負けませんよ! アッシュ君」

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