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雨の魔法使い  作者: あめふらし
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Cランク昇格試験

 率直に言うと一波乱には至らなかった。

 最初は六人組パーティが文句を言っていたが、リーダーの大男バルサスが


「じゃあ、俺と勝負しよう。お前ら六人が勝ったらCランク昇格試験に参加させてやる。ハンデとして一対六でいい」


 と言われ、六人パ―ティはすごすご帰っていった。

 

「意気地のない奴らだ。せめて戦っていけばいいものを」


 とバルサスには言われていた。


「さて、邪魔が入ったがCランク昇格試験開始だ。ここからは基本、お前らの自由行動となる。俺達黄昏の竜は基本的にお前らの後ろをちょろちょろさせて貰うぜ」


 バルサスの一言でCランク昇格試験が始まった。

 始まってまず話し合われたのは今回の依頼のリーダーをどうするかという話だ。

 今回、Dランクパーティで六人組の黄金の双盾と五人組の紅蓮の虎の二つのパーティがいる。どっちのパーティのリーダーがこのCランク昇格試験組のリーダーをするかという話になった。

 リーダーに選ばれた方が主導権を握るのは自明の理、二つのパーティは長々と話し合いを続けた。

 その結果、第三者に決めてもらおうという事になり僕に話が回って来た。僕は


「野営の経験がある方のパーティのリーダーがいいです」


 と言ったので野営の経験があった紅蓮の虎のリーダーがリーダーをすることになった。

 そして紅蓮の虎のリーダー、フォンスの言い分により皆の実力を把握しようという事で、ギルドの裏手にある訓練場に皆が集まった。

 

「得意分野を見せてくれ」

 

 とのフォンスの言い分により、皆が得意分野を見せ合った。剣が得意なものは剣捌きを見せ、魔法が得意なものは魔法を実演して見せた。

 僕は水魔法が得意なので、もちろん水魔法を見せることにする。

 僕と同じ大きさの、水龍、氷龍、灼龍を一匹づつ作りだす。

 僕の体に纏わせて遊んで見せた後、全員を蒸発させた。


「ほう、素晴らしいな。あそこまで細かに龍を作るとは俺でもできるか分からん」


 とはAランクの魔法使いレガントの言い分だ。

 何か褒められたようでうれしくなった。

 Aランクのレガントが素晴らしいと言ってくれたおかげか、僕は他のパーティに実力を認められた。

 各々の実力の把握が終わった後は、それぞれの準備期間となり黒の森には夕方から出発することになった。

 夕方に出発し、夜に到着。野営をして、次の日に盗賊の根城まで行き、盗賊退治。

 これがフォンスの発表した今回のCランク昇格試験の作戦というか概要である。

 各方から異議はなく、準備期間となった。

 僕は野営の道具を持っていなかったので、急いでそろえる。

 夕方となり、集合場所であるザビエンスの出入り口に急いで向かう。

 出発時間には間に合ったようで、何事もなく僕たちCランク昇格試験者と試験官の三人は黒の森へ向かう。

 黒の森へ着いた時には計画通りに夜で、野営の準備が始まった。

 皆が寝袋や見張りのための焚火を用意する。

 そして夜の間の見張りの人選が発表された。

 と言っても見張りには全員が参加する。

 一時間ごとに二人づつ交代するというもので、僕はフォンスと一緒に見張りをすることになった。見張りの順番としては一番最後に当たる。

 今回はそれに加えて、黄昏の竜の三人が二時間づつ見張りを一緒にしてくれるそうだ。順番はバルサス、ネルシー、レガント、の順番で僕たちと一緒に見張ってくれるのは必然的にレガントになった。

 寝袋に潜り込み、寝ようとする。

 たき火の方からは黄金の双盾の二人が何やら会話している様だ。

 何かの遠吠えや鳴き声、風に木が揺れる音なども聞こえた。

 最初は野宿何て初めてだったので、眠れるか心配だったが、それも杞憂に終わりいつの間にか僕は夢の中へ旅立っていった。


 


 ゆさゆさと誰かが僕を揺らす。


「うーん、あと五分」


「おい、何寝ぼけてるんだ。見張りの時間だぞ」


「はっ! そうでした」


 僕はフォンスに起こされて、寝袋を後にする。

 たき火の方へと行くと、レガントさんが何やら水を宙に浮かべている。

 細長く、それでいて口や鱗の様なものが見えたので、何か水の魔法で模しているのだろうか。


「何やっているんですか? レガントさん」


 僕は興味本位で尋ねてみた。


「いや、見張り中は暇でね。君のように龍を作れるか実験してみたんだが上手くいかなくてな。これじゃせいぜい蛇といったところか」

 

 そう言って、水を蒸発させるレガント。どうやら僕のまねをしていたらしい。だが水龍は僕が年単位で練習して生み出したものだ。

 そう簡単にまねされては困る。でもまねされていい気分になった。それだけ水龍が素晴らしかったという事、だろうからだ。

 たき火を囲み、三人で会話する。

 たわいもない話もあったが、Aランクのレガントさんの話はためになった。

 話題は一転も二転もしてころころ移り変わっていく。


「アリアはリキュール家なんだろ、という事はいつか嫁に行くのか?」


 フォンスが興味本位といった感じで聞いてくる。

 うん、間違いだらけだ。


「僕はリキュール家の中でも地位が低いので縁談の話はないですね。冒険者やっている時点でお察しです。あと僕は男なので嫁にはいきません」


 そう言うと、フォンスとレガントの二人は驚いていた。主に僕が男だという事実にだ。

 自分から見てもショートカットの女の子にしか見えないが、やはり二人からも女に見えていたのだろう。こんな事なら自己紹介の時に僕はオスですよ、と言っていたほうが良かったかもしれない。

 そうやって話していると、フォンスが何かに気が付いたようだ。


「襲撃者か、ゴブリンの様だな」


 フォンスが指さす方を見ると六匹のゴブリンが森をかき分け接近してくるとこだった。


「これは試験だからな。俺は手を出さんぞ」


 レガントが釘をさす。ということはこの六匹のゴブリンはフォンスと僕の二人で対処しなければならないという事だ。他の皆を起こすという手もあるが、所詮六匹のゴブリンだ、起こさなくても平気だろう。

 Cランクとなるならゴブリン六匹くらい単騎で狩れないと話にならない。

 と言う訳でゴブリンはフォンスと僕の二人で相手することになった。


「右半分は俺がやる。左半分はアリアがやってくれ」


「了解です」


 僕はいつも通り、水龍、氷龍、灼龍の三匹を作り出す。

 今回は他の皆が眠っているために静かに倒すことに決めた。

 僕は水龍達をゴブリン達にけしかける。

 今回は全員窒息死して貰おう。

 水龍達はゴブリンの頭にかぶさる、かぶさった水によってゴブリンは息が出来なくなる。

 当然声は気泡に変わって虚しく水龍の体を通り抜けるだけだ。

 水龍にやられたゴブリンはただの窒息死で終わったが、氷龍にやられたゴブリンは顔が凍り付いている。灼龍にやられたゴブリンは顔が焼けただれて惨いことになっている。

 音もなく三匹のゴブリンは沈む。

 隣を見ると、フォンスが最後のゴブリンの喉を剣で切り裂くところだった。

 他の二匹も喉を切り裂かれ死亡していた。

 さすがはCランク昇格試験者といったところか、ゴブリン程度相手じゃないらしい。


「ふぅ、一人でゴブリン三匹相手にするのは初めてだから少し緊張したな。音もなく倒せたから良かったが。そっちは見事だなアリア」


「そっちも見事ですよ。フォンスさん。僕じゃ剣を使って喉を的確に切り裂くなんてできません」


「そりゃな。アリアは剣士じゃなくて魔法使いだもんな」


 ゴブリンの魔石と右耳を回収したころには、丁度見張りが終わりの時間になっていて、僕たちは皆を起こすことにした。

 


アリア「あと五分って、絶対あと五分じゃすみませんよね」

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