6. 軽い昼下がり。
更新遅くて本当にスミマセン!
期末テストも終わりました。冬休み中にはもうちょっと早く更新します!
してみせます!!
……たぶん。
今日は日曜日。
「なぁ人形。」
「なニ?マスター。」
一部のクソ忙しいビジネスマンや学生その他諸々を除く、みんなのおやすみの日。
誰がなんと言おうと今日だけは世間の休息日なのだ。
もちろんオレも例に漏れず家でゴロゴロしていた。
つまりやることがなくヒマだった。
そんな中、チャキチャキと家事をこなしている人形になんとな〜く100%気分で話しかけた。
「ナァにマスター」
「いいから」
近づいてきた人形のほっぺたをふにふにとつつく、つねる、ひっぱる、最終的にはぎうぅ〜とつまんだ上でひねってねじった。
「はーヒ?はふはー?(訳:なーニ?マスター?)」
「おめー痛くねーの?」
「ほヘハひひ(訳:そレナりに)」
オレはつねる(つーかもうよじるの次元)のをやめ、じっと人形を見た。
見た目も感触も完全に人間のそれ。
ただ普通の人間よりキメのこまかくて白い(つか血の気がない?)肌で、世の女性が見たら8割がたが憧れと嫉妬の目で見るだろうことが分かるくらい整った顔なだけ。
じっとしている姿はまるで蝋人形のよう。
人形はあれだけやったのに少しも赤くなっていない頬を軽くさすりながら
「いてテ……。なにか恨みでモデキたの?マスター。そうダトシても僕をストれス発散に使ワナいでほシイナぁ……」
ブツブツ言いながら、流し台の方へ戻る人形。
最初は単なる好奇心。
「お前って結局なんなの?」
人形は皿を洗いながら器用にこちらを向いた。
首が180°回っているのはご愛嬌♪
「いや、何と言ワレましテも…。
昔ノ人間に神を模しテ作ラレた人形ダッて、まエ言わナカッたっけ?」
そう言いながら人形はやっていた仕事を終わらせてこっちの部屋に来た。
その時、オレの前にきちんと正座するのはクセだそうだ。
まぁ馴れたけど。
「ん、聞いてるけどさ」
そんなんで納得できるかっつーの。
「具体的に言えよ。
なんちゅうかほれ、よくあんじゃん。なんだっけ、呪いの人形とか?」
あぁ、なんでオレのボキャブラリーはこんなんしかないんだろう……。
「あ、人形とシテの種類ネ」
そ。まぁ別に答えなくてもいいんだけどさ。
…なんか真面目に答えてくれそうな雰囲気だけど、
正直暇つぶしに聞いただけなのだが。
ちょ、罪悪感が湧いてくるからその真剣な表情やめてくんない。
「そうだネ。形状トシてハ、人間もどきが一番近いのカモシレなイね。でも中身としテハ自動人形とか、人造人間になルノカな。」
……なぁ人形、できれば日本語で話してくれないか?
まったく理解できんのだが。
「まァ簡単に言ウト怨念のナい呪イの人形って所かナ?」
「へぇ。お前機械だから油飲んだりすんのかと思ってた。飲み過ぎて吐いたり、ときたまその吐いた油に混じって歯車とか出てきたりするし。」
「うん、ちョッと焦るヨねアアいう時っテ。」
くすくすと笑って人形がいう。
自分のことだろーが。
そのときピーっと台所からやかんが音を上げた。
人形がとたとたと台所へかけていく。
どこの主婦だお前は。
俺の前の卓袱台にコトリと湯呑み茶碗を置くと
人形はさっきと同じところにさっきと同じ姿勢で正座する。
ただし、手にはアツアツに温められた潤滑油。
なんか微かに香りがするから、今日は香油でもブレンドしてあんのかもしれない。
そんなデキた不思議な人形にオレは気軽に話しかける。
そして人形も律儀に答える。
嬉しそうに。
「お前がここに来てどれくらい経つっけ?」
ぽつりとつぶやいた言葉に一瞬キョトンとした顔をされたが、
次の瞬間にはにっこりとお得意の笑顔で答える
「そぉダネ。家に来たッテイう定義で言うナら、たブン8ヶ月と12日と26分と57秒かナ。日にチニスると256日ちょッとダよマスター?」
「もうそんなか」
なーんか感慨深くもなるわな〜。
口元に手をやって、お得意のくすくす笑いをする人形。
「もおそんなだよマスター」
「お、いま上手くしゃべれたじゃねーか人形。」
「本当?やッタ!」
「あ、戻った。」
「えェ〜?」
「日々精進せい」
「うン、マスター!」
こうして微妙ながらも人形との会話は続く。
こんな会話、最初はなかったんだ。
狂った機械がただ其処にあるだけ。
人形がまだ今の人形じゃないとき。
さいしょに、のちに人形になるモノと出逢ったのは
ある路地裏でのことだった。
学校から帰る近道。
突然そこに人形が降ってきた。
空から降ってきた人形は歯車やらバネやらを飛び散らせながら地面に叩きつけられた。
ちょうど其処には大量のゴミ袋があったので木っ端微塵になることは避けられたが。
何を血迷ったかオレはその飛び散った破片や部品をかき集め人形を持ち帰った。
それ──のちに人形になるモノ──があまりにも人間に酷似していて、焦っていたこともある。
しかし大部分の理由としては、
小さい頃から悪霊や幽霊が見えたり、
その頃すでに妖怪のヨーコが俺ン家に住み着いていたことから、
割とそういうことに寛容だったからなのかもしれない。
壊れた人形を家に連れ(持って?)帰ったオレはヨーコに無理を言って、怪しい妖術で直してもらった。
その際、直す代償だとかなんとかでヨーコはいろいろなことをねだってきたが、粘りに粘った交渉でおでことほっぺと首筋にちゅーで許してもらった。
ちなみにチューされたのは俺なのだが。
その後、目が覚めた人形は自分が誰だか分からない上に言葉に障害が起きていた。
まぁなんとか日本語はしゃべれるようだったので問題はなかったが。
そのときの記憶は曖昧で神様に会いに行ったとかなんとか言ってたが、自分に関する記憶はすっぽりと抜け落ち、その記憶が戻るのには数日を有した。
そうこうしているうちに、ちびっとずつ自分が何かを思い出してきた人形は(直接ではないが)自分を治してくれた人間、つまりオレを『マスター』と呼び、付き従うことにしたらしい。
ついでに、それをオレが渋々ながらも了承したときここに居座ることが決定したっぽい。
あ〜そのつまりあれだ、
いろいろ迷惑なんだが。
小さな親切、大きなお世話っつうヤツか?
違う?
知るかよ。
それ以来この調子だ。
ちなみに名前はヨーコの
「まんまアタシみたいな感じでいいんじゃん?」
の一言で決まった。
喜んでたみたいだから良いと思うんだけど。
食費(=オイル代)は酷いことになってるが…、
まぁ便利なお手伝いさんがいると思えばいいもん、なのかもしれない。
たとえそれが
しょっちゅう主人に逆らう
不良人形だとしてもだ。
ま、別に良いけど、
どうでも。
何回か売っぱらったろかと思ったことはあったけど直しちゃった責任もあるし。
人形は一応家族だし。
「あ。」
「どうした人形」
「ゴめんマスター。マスターの分ダけ布団干すノ忘レた」
……いや、やっぱいつか叩き売ったろ。
ムカつくもん、コイツ。