表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オレの部屋  作者: コロ
4/12

4. 飯、明け暮れ。

今オレの目の前には絶世の美女がいる。


「よーこ」


「なーに?アキちゃん。」


目の前でプカプカ浮いていた美女は

オレの呼びかけに嬉しそうに振り向いた。


「ついにあたしの魅力に気付いたの? 食べちゃう?あたし食べられちゃう?」

「違ぇよバカ。」


呼びかけるたびにコレだ。

毎回のことだが、まったくもって疲れる。


「そこジャマ、テレビが全然見えねぇ。」


キゲンよさそうにふわふわと浮いていたヨーコの表情は

そのひとことで一変、ぶうたれた顔に変わった。


「ちょっと見えないくらい、別にいーじゃない」

「画面の5分の4は見えねーんだが、それがちょっとか?」


ヨーコは諦めたように溜息をつくと

すとんと床に降り立ちオレの横に座った。


すると、途端に涼しいエアコンの風が。

チクショーめ。涼しい所、独り占めしてやがったな。


「それと、お前食うくらいなら台所にあった○テコ指にはめて食うわ。

立ったついでだ、○テコ取ってこい。」


するとヨーコは呆れたようにオレを見た。


「アキちゃんさすがにそれはデリカシーなさすぎよ、女の子は傷つくわ」


おい、どこの世界に500年くらい生きてる化け狐を『女の子』と呼ぶやつがいる?


「いいから取って来い。少しくらいならお前にも分けてやらんでもないから」

「まったくぅ、アキちゃんはしょうがないわねぇ。待ってて」


サクッと物につられるヨーコ。

ハートがふたつくらいくっついた言葉とウインクを一つ残して台所へ向かう。


お前、語尾のハートマークはオレに対してじゃねーだろ。

食か? 食に対しての(ハート)なのか?


突っ込みながら、その後姿を見てオレは思う。



――黙ってりゃ、美人なのにな。



やや釣り上った金色の瞳。通った鼻筋に透明な肌。

見慣れた俺でさえ、ため息が出るほど美しく整った顔立ちは、

この世のものとは思えないほどであった。


まぁそれもそのはず。



アイツは人じゃない。


彼女は妖狐(ヨウコ)

永い時を生きる化け狐なのだ。


人間(ヒト)とは決して相容れられず500年間ずっと一人だったと、

あいつは前に話してくれたことがある。


楽だったんだろうな、と思う。

だけど寂しかったろうな、とも思う。


そう、オレがアイツを受け入れるまでは……。




「はーいアキちゃん!お待ちかねのポテ○よ」


不覚にもオレが感傷に浸っているとその空気をぶち破る声が聞こえた。

ヨーコ、少しは空気読め。


「気にしないの。度量の狭い男は嫌われるわよ?」


お前らという非常識で厄介なものを自分の家に住まわせてやっている時点で

自分ほど度量のでかいヤツはいないんじゃないかと思うんだがな、オレは。


「あら、でも最初に言ったのはアキちゃんのほうよ?」

「何をだ?」


オレは首をかしげる。

この妖怪に何を言ったか、頭の中の引き出しを一つずつ開けてみるがさっぱり引っかかるものはない。

それを見て、ぷっくりと頬を膨らませながらも、どこか楽しそうにヨーコは悪い狐特有の笑いを浮かべた。


「覚えてないの? アキちゃん言ったじゃない、

『寂しいならボクのお家おいで。もし気に入ったのならずっといっしょにいよう』

 って」


「何年前の話だ!」


オレがまだ『ボク』だった時代(とき)の話をいつまで引きずってんだよお前!

ありえねぇ!


今度は永い永い時を生きてきた妖怪特有の時間感覚を発揮しやがった。

くすくすと笑う妖狐を見るとどうしても本心が駄々漏れになってしまう。

くそ、これではいつまでたってもコイツには勝てない。


「それであたしはアキちゃんの家に来ることになったんじゃない。

 もう、あんな衝撃的なプロポーズ忘れないでよ、アキちゃんたら」


いや、まずしてねーからプロポーズ!


「つうか、タダでとは言ってねーよな!? 思い出したぞ!

 幼いながらもオレはちゃんと『家賃払ってくれるならね』って言ったハズだ!

 いや、言った!」


断言するしできる!


するとヨーコは急にくすくす笑いを消し唇に指を当ててウインクしてきた。


「いやん、そこは記憶から抹消しといてよ」

「するか!

 てか、今月の家賃まだ貰ってねーぞ! 出せ!!」

「とりあえず、今はこの○テコで許して? ね?」


手に持ってた袋を差し出すヨーコ。


○テコ(それ)はオレのだっつーの!


「もうちょっと待って、もーすぐ給料日だから。 ……それとも今体で払う?」


心から遠慮しとく。


ヨーコはその美貌を使ってキャバクラで働いてるのだが、

どうもコイツが、というよりか店自体が売れていないようで給料もギリギリらしい。

もうそうなると、その余裕というかお気楽かげんに呆れというかもはや感心さえするヨーコの言動。


その時


「「「ただいまー!」」」

「ただイマ、マスター。」


お使いに行っていた4人が帰ってきた。

まぁ実際買ってきたのは人形ひとりだろうけど(死神や悪霊たちは姿が見えないから)。


さて、じゃあ全員そろったことだしこの人外どもに飯でも作ってやるか。



結局開けられることのなかったスナック菓子の袋、

ヨーコから奪い取ってオレは台所に歩を進めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ