2. 非日常たちの日常。
お待たせしました!
ご期待通り主要メンバー登場です!!
え、別に期待してない…?
期待して下さるとうれしいです!
突然だが、
オレの部屋には、悪霊と死神と人形と妖怪が住んでいる。
オレの部屋と言っても、家賃が安いから、と言う理由だけで選んだボロアパートのそれだ。
よって、それほど部屋が広いわけではない。
それなのにたったふたつしかない部屋の一つのほとんどは、台所に占領されてるときた。
つまり、
この狭っ苦しい座敷の中に合計6人が住んでいることになる。
異形のヤツらを人と数えるなら、だが。
なぜこんな状態になってしまったのか。
あぁそうさ。
どうせオレは、小さい頃から変なもんが視えるし話せるし触れるし、
挙げ句の果てには何故かそういうモンばっかに好かれるし……。
いやいや、今更嘆いても仕方ない。
そんなことよりも、今はアイツらをどうやって追い出すかが先決だ。
あ〜ぁ、ここはアイツらがいねー分部屋ン中よりよっぽど平和で快適だ。
狭いし暗いがオレの未来ほど真っ暗なワケでもないしな………。
「ハル!」
「ハル?」
「ドコにいるのさぁ」
「ドコにいるのぉ?」
「レイが」
「ユウが」
「「捜してるよぉ?」」
うっさい、悪霊ども!
ちっさくて可愛い姿に騙される男じゃないぞ、オレは!
ついでに言うと、オレはハルじゃねーッつの!
オレはアキ!!
上谷秋紀だ!
「あっくん出てきてよーふたりが呼んでるよー? 困ってるよ〜??」
あァ死神が呼んでる。なんてシュールな。
死ぬのかオレは!
死ぬのか!!
死なす予定もねぇのに 呼ぶな、暇神!
「えっト、おなかスイたよ〜ヒもじィよーでてきテよ〜マスタぁー」
テメー、人形だろ!
飯食わねーだろうが!! 油差してやんねーぞ、コラ!
「そーよそーよ出てきてご飯作ってよアキちゃん。あたし飢え死にしちゃうわよ? 家の中で餓死。あぁんあたしってばなんて可哀想な美女なのかしら」
寝言は寝てから言え!
妖怪が死ぬのかこの程度で! たった五時間飯食わねー程度で! つーか自分で美女ゆーな!
ちっとはガマンしろ、大食い女狐妖怪!!
ッて突っ込みたい! 非常に突っ込みたい!
しかし、耐えろオレ!
でないと今までの苦労が全部水の泡に…。
ガキンっ!!
・・・・・・ん?
ぎりぎり…………、ばきっ
「あ」
「ハルっ!」
「みーッけた!!」
やられたっ!!
やっぱ押入れの奥の(大家のおばちゃんに黙って作った)隠し扉に隠れるだけじゃダメかッ!
くそっ、チビたちのかくれんぼ経験値を甘く見てた!
伊達に毎日遊んでねーってか、ガキども!!
「あっくん、ユウたちじゃないよ? ボクのチカラ。」
スィっと横から顔を出したのは黒いローブを着た美しい少年。
「ちっ、テメーか死神 コノヤロー」
キッと睨み付けると死神はクスクスと笑って、オレの前に降り立った。
「いくらなんでもさぁ」
面白がっているような美声が辺り一面に響く。
「そんなもん作らなくてもよかったんじゃない? しかもこんなとこに」
「うるへー」
オレだって一人になりたいときもあんだよ。
死神はまたクスリと笑い、少し後ろの方に突っ立っていた青年の背に隠れる。
青年は透けるように白い肌を持ち端正な顔立ちをしていた。
死神といい勝負だ。
青年は困ったように苦笑すると死神の頭をやさしく撫で、こっちに向き直った。
「デも、しょうガナいんじゃなイ? 死神はユウとレイのお願イを優先させるに決まってルんだカラさ、マスター」
青年は、どことなく発音のおかしい言葉で話した。
「そうは言うがな、人形。ここの家主はオレだぞ? 何故そのオレが居候に虐げられなくちゃならない? つうか何でお前は止めない!?」
人形はニコリと笑うと「命令がなかったかラネ」とかほざきやがった。
あ、なんか頭痛くなってきた……。
ふと上方に絡みつくような視線を感じ顔をもたげると、そこには重力をまるで無視したむちゃくちゃな場所に妙齢の妖艶な美女がたたずんでいた。
金の瞳を有する彼女の体には、異形の証――すなわち目と同じ色をした狐耳と狐尾が生えていた。
女は天井から音もなくするりと下りてくると何を血迷ったかオレの背中に躊躇無く抱き付き、何の前触れもなく耳を甘噛みした。
肩がゾクゾクする。
「何をするか妖狐!」
彼女は花びらのような唇に細い指をあて、コロコロと鈴のように笑った
「あら、虐げてるなんて心外ね。こぉんなに尽くしてるのにぃ」
「どこがだ!」
いろんな意味で、面倒なヤツめ!
「ヨーコお前、家にいるときだけカラコン外すの止めろ! 目ぇ見るだけでチカチカする! あと耳と尻尾も隠せ! 誰か急に来たらどうすんだ!! それと無駄に色気をまき散らすな! いーかげんうっとおしい!!」
一呼吸で言い切って荒く息をするオレを見て、嬉しそうに微笑む美女。
あー! この化け狐は、ホントにもう!!
「いいじゃない。家に居るときくらいのびのびさせてよぅ」
「アホか!」
むしろしすぎじゃボケ!
「アキちゃんのイケズぅ」
居るだけで人を不快にさせる牝狐がぷにっと俺の頬をつついた。
それを機に居候共がいっせいに騒ぎ出して……
「そーだよ、ハル。夕飯作って!」「そうだよ、ハル。夕飯作って?」
「ハルじゃねーッつーの!いい加減覚えろ悪霊共!つうかテメーら関係なくね?!メシ、食えねーだろ!」
「「いいの!」」
「見てるだけで」「楽しいんだよ?」
「作ってあげてよ、あっくん」
「うるっさい死神!仕事しろ!」
「ひどっ!」
「マスター、そんナ言い方なインじゃなイカナ」
「だったら止めろ、人形!」
「あら、夕飯まだなの。だったら代わりにあたしを食べる?」
ぴきっ
「……ああ、そうか。もともと家主に感謝なんて言葉テメーらの辞書にはねぇよなぁ………」
うん、もういいよな……?
・・・・ぷっちん。
「ウガーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「「ハルがキレた~~ッ!!」」
「ありゃま。じゃ、あっくんのお言葉に従ってお仕事に行ってきま〜す☆」
「死神! まっテ、逃げるナ! アぁあマスター落チ着いテ……。うわ目がマジでイッチャってルシ………」
「うふふふ……、怒ったアキちゃんもかーわい♪」
そんなこんなで俺の一日は過ぎて行く。
ああもうヤダこんな生活……。
ご意見ご感想ございましたら、是非書き込んでやってください。
誤字脱字も見つけてしまいましたら、こそっと教えてくれたら嬉しいです。
未熟な作者ゆえ至らないところもありますでしょうが、
これを読まれている読者様方には、これから先も長いお付き合いになっていただきたいと思います。
という訳で、これからも『オレの部屋』をよろしくお願いします!
2008/7/29/月