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ドワーフのすゝめ  作者: 雷
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第2話 ドワーフ

「ぼく、座るからイスに降ろして。」



 私は母に告げる。部屋の中を見ると私用のイスを用意してくれているのが分かった。。他のイスよりも一回りも小さい物があったのだ。

 母は恐る恐る私をそのイスに座らせた。普通だったらイスに座るって事も出来ない様な年齢かも知れない。ただ私は体の動かし方はわかるのでしっかりとした姿勢でイスに座ってみせた。



「かあさんも座って。」



 私がそう言うと怪訝な顔をした母が私の前のイスに座った。

 いきなりの展開に不信感を与えてしまったかもしれない。しかしどういった風に説明するのが正解か、判断に迷う所だ。まずは情報を集めないといけないか。



「おとうさんはどこにいるの?」


「えっ?あぁ、ガルムの事?おとうさんは仕事場よ。」



 父の名前はガルムというらしい。しかし仕事場か。ずっと姿を見ていないのは単身赴任でもしてどこか別の場所で働いているなどだろうか。



「そうなんだ。」


「ゴルド、あなた一体・・・。」



 母が不安そうな顔で聞いてくる。私の名前はゴルドというらしい。しかしどう説明したら母を安心させられるのか。生まれ変わりや、転生なんてことを話しても信じて貰えるかどうかだ。信じて貰えなければ余計に不安にさせてしまうだろう。どう話を切り出そうか、と思い先程の母の話を思い出す。



「えっとね、神様が凄い力をぼくにくれたんだ。ぼくいろんなことを知ってるし、いろんなことも出来るんだよ。」



 そう言う事にしておいた。母は先程神のことを話していた。信心深い所があるのだろう。だったらそれに乗って話を進めた方がいいだろう。神がそう言った力をくれたと言えばまだ信じて貰いやすいはずだ。



「まぁなんてこと。まさか私の所に神の子が生まれるなんて。」



 おや?受け入れるというよりも、その上を行きそうな感じがする。



「えっと、だた凄い力はくれたんだけど、まだまだ分からないことがいっぱいあるんだ。ぼく自身の事は教えてくれなかったからね。だからそう言ったことを聞きたいんだ。いい?」


「えぇ、もちろんよ。なんでも聞いて。」



 こうしておけば色々と聞いても不審に思われないだろう。



「最初に聞きたいんだけど何で部屋に1つも窓がないの?」


「えっ?それは必要ないからだけど。」



 私は何かおかしなことを聞いてしまったのだろうか。母はなぜそんな当たり前のことを聞くのかと言った表情と声で答えた。

 必要ないと言った・・・。窓が必要ないとすれば可能性として考えられるのは換気や採光が出来ないという事か。とすればここは地下になる。雰囲気としては閉じ込められているとは思えないのだが。



「ここって・・・どこなの?国って言うのかな?そう言うのは神様は教えてくれなかったんだ。」


「そう・・なの?ここはグランドールよ。ドワーフの王国よ。」


「えっ?今なんて?」


「王国、グランドールって言ったのよ。」


「いや、そこじゃなくて。ドワーフとかなんとか。」


「何を言ってるの?ドワーフの王国、グランドールと言ったの。」



 母は何を言っているのだろうと思った。ドワーフ?確か神話や、空想の話に出てくる種族だったかと記憶している。いや、そんなもの実在しないであろう。しかし母が嘘を言っているようにも思えない。



「ドワーフ?じゃあぼくもドワーフなの?」


「当たり前じゃない。ドワーフの両親から生まれたのだから決まってるでしょ。」



 理解が追い付いていない。こんなことは初めてだ。あまりにも私の知っている現実とはかけ離れている。母が私に嘘をついているという可能性もある。ただ何の為にそんな嘘をつく必要性があるかだ。種族などを偽った所ですぐに露呈する。サンタクロースなどを子供に信じ込ませるのとは訳が違う。

 単純に驚かせたいという可能性もなくはないが、今は母の方が私よりも驚いているだろう。そんな驚いている人が、そのような嘘を思いつくとは思えない。

 しかしそうなってくると納得できる部分と、わからない点が出てくる。

 私も興味本位で神話や、空想の話などは本でも読むことはあった。その時代の人間がどんな考えをしていたか、どんなことに興味を持ったかを私自身が読み解こうと思ったからだ。知識として無駄にもなると思えない。昔は空想であったことも現代には実現している物はある。そうした点で過去の空想話についても知っておきたかったからだ。

 そこでドワーフという種族についても知識を得た。ある人物が描いたドワーフ像が伝わり、誰しもが同じイメージを持っている。なかなかに興味深い。そこには矮躯(わいく)でありながら屈強な肉体を持ち、大酒飲みで手先が器用。鉱夫あるいは細工師や鍛冶屋などの職人であると同時に戦士であると。

 一応私は0歳児だが筋肉がある。屈強な肉体を持つといったドワーフの特性をこの体に宿しているせいだろうか。そう言う事であればすぐに立ち上がったり出来た理由は判明したと言えるかもしれない。

 だが、そうなるとここは地球ですらないという事か。

 伝説や空想でしか語られなかったドワーフが地球に存在していたとは到底思えない。どこかに隠れ住んでいるといたという可能性も低いだろう。今の地球で隠れ住める様な土地があるとは思えない。

 だとすると、別の星、もしくは別の世界という事になるのか。

 転生といった現実離れしたことがあり、私は今のこの体を手にしたのだ。別の世界へ移ってきたと言っても不思議ではないのかもしれない。

 なんにせよ、外の世界へ出ればそれはわかるだろう。今は母の言葉をそのまま信じることにしてみよう。



「そっか。そう言えば誰かにぼくのこと話すとかいってなかった?」


「あぁ、そうだわ。早く伝えないと。」


「それって誰の事?おとうさん?」


「ガルムにも伝えないといけないけど、まずは司教様かしら?」


「司教様?教会の人ってこと?」


「そうよ、あなたがどんな力を持って生まれたか教えて頂かないと。」



 会話の流れが見えてこない。私が神の話をしたからだろうか。しかしどんな力か教えてもらうとはどういうことなのか?やはり私の知っている常識とは大きくかけ離れているようだ。ここは一旦素直にその流れに乗ってしまった方がいいだろう。今の時点で考えていても仕方がないようだ。



「わかった。じゃあそこに連れて行って。」


「そ、そうね。じゃあ行きましょうか。」



 母そう言って準備を始めた。そう言っても私に靴を履かせ、自身も着替えただけだった。遠くに行く訳ではないという事だろう。

 準備を終えた母が私を抱きかかえた。そして扉を開き家を出た。

 その家を出たという行為ですら私に新たな驚きを与えた。


 扉から出たのは道だった。ただ一般的な道と違い周りは土の壁がずっと続き、空もなく土の天井があった。本当に地下にいたんだ。後ろを見ると家の扉は土の壁の一部分をくり抜いたところに、付けてあるだけの様に見えた。周りを見るとそう言った扉が幾つか見えた。それぞれが1つの家の様になってるのか。どちらかというと集合住宅といった方がいいのだろうか。

 母は気にした様子もなく道を歩き始めた。しばらく道を歩いているが殆ど代り映えのしない景色だった。洞窟の様な所に左右にいくつもの扉が並んでいるだけ。すれ違う人もいなかった。街灯などは見当たらないが暗いという事はなかった。壁や天井が薄っすらと光っている様だった。どうなっているのだろうと思ったが母親がそこで立ち止まったのだ。



「着いたわよ。」



 母は1つの扉の前に立ち、私にそう言った。扉には恐らく字が書かれていたが私には読めなかった。言葉は何となく話せるようになったが字はまだ読み書きが出来ない。

 母は扉をノックし、開けて中に入った。

 扉の中は大分広いスペースだった。大学の小さな教室程あった。教会に行くと言っていたが、まさにそう言った場所だった。

 背もたれの付いた長椅子が前を向かっていくつも並び。正面には何かを模った像の様な物が置かれてあった。その像の前には佇む人がいた。母親以外に会うのは初めてだ。

 その人物は背が低いがよい体格を持ち、立派な髭を蓄えていた。ローブの様な物を着ている。物語などに出てくるドワーフの種族とはこうあるべきだという見た目をしていた。



「おや?リーサか?どうされたんじゃ、子供などを連れて。何か相談事かね?」



 そう目の前の人物はこちらに問いかけた。リーサは私の母の名だ。



「いえ、司教様そういう訳では・・・。いや、相談といえば相談となるのでしょうけど。」


「どうしたのじゃ?慌てている様じゃが。ゆっくり話を聞こうではないか。こちらに来なさい。」



 そう言って目の前の司教と呼ばれる人物は母を呼んだ。母はそれに従い教会の中を歩き司教の元へ向かう。



「うむ、ではお座りなさい。」



 司教は母にイスに座る様に促した。母は近くのイスに腰かける。



「それで一体何があったのじゃ?」


「それが、私の子ゴルドが神の子の様なのです。」


「なんじゃと!?どういう事じゃ?」


「それが、この子は生まれてさほど年月を重ねていない今でも話すことが出来るんです。そして自分は神に凄い力を頂いたと。」


「本当の事か?」



 母と司教が俺の顔を覗き込む。これは失敗してしまったかもしれないな。しかし今更先程の事は嘘だったとも言えない。もし何かあったら子供の勘違いだったという事で済ましてもらうことにしよう。



「えぇ、お話しすることが出来ます。初めまして司教様。」



 俺は当たり障りのない挨拶を司教に行った。



「なんと・・・。これはまさしく。いや、実際に調べてみない事にはわからんか。」


「何を調べるのですか?」


「お主がどのような力を持っておるかじゃよ。」



 私の問いに司教はそう答えて、右手を私の額に置いた。しばらく訪れる静寂。



「こんな、まさか!?【探究者】じゃと?聞いたこともない。」



 静寂を打ち破ったのは司教の驚いた声だった。私としてはまさかと言われても何のことだがわからない。母の顔を見ると不安そうな表情を浮かべていた。



「どういう事でしょうか?いったい何が分かったというのでしょうか?」



 私は司教に問う。



「わかったのはお主が今までにない力を持っておるという事じゃ。」



 そう司教は答えた。だがその答えも私にはどういうことかわからない。



「申し訳ありませんが詳しく教えてもらえませんでしょうか?」


「そうじゃな、わしも詳しく知りたいと思っておった。」



 司教のその言葉で私の生活は一変することになった。

お読み頂きありがとうございます。

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