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92. ダンジョンの縦穴

「これは、縦穴ピットですね、別の階につながっている物です。うまく使えば、簡単に階を飛び越して冒険を進める事ができる物ですが」

「どこまで、つながってるのかしら」


 どうも、金網がはってあったのをクルツか誰かがこわして、入れるようにした物らしい。

 どうしようかな。


「僕とパットで追いかけるから、オッドちゃんとあやめちゃんは水場で待ってて」

「私も行くわ」

「だめだ、死舞手しまいてが来るかもだから、オッドちゃんはあやめちゃんを守って。オッドちゃんはうっかりするから、へんな事があったら、まずバリアで自分たち二人をおおってから動いて」

「しょうがないわね」

「解りました、我が君」

「げんきくん、トレバー君をおねがいね」

「まかせておいて。パット、落下して地面が近づいたら受け身ね」

「あ、なるほど、それで、私たち二人で」

「そういうこと、行くよっ!」


 僕は真っ暗な穴の中に飛びこんだ。

 怖くないと言えば嘘になるけど、こういうときは、思い切りよく行かないと。時間が大事だ。

 轟々(ごうごう)と耳元で風の音がする。ぼんやり青く光った縦坑たてこうの中をどんどん僕は落ちていく。

 やべえ、思ったより長い。

 落ちて死ぬかも。

 トレ坊もクルツも墜落死ついらくししてるかも。

 受け身でどうこうなる高さなのか。

 大丈夫か、僕。

 下の方に底が見えてきて、どんどん大きくなる。

 やべっ。

 と思ったら、出口付近で、急に落下速度が落ちるのがわかった。

 なにか魔法がかかってる?


 足が地面に付いた瞬間、体を丸め、転がって衝撃しょうげきを流し、最後に受け身を取って立ち上がった。

 パットも落ちてきて、ぱしんと受け身を取って立ち上がる。


「魔法で減速されましたね」

「命拾いしたね。ここは何階だろう。いや、それよりもトレ坊とクルツは?」

「どこでしょう」


 ランタンを持ってくるのを忘れたので、辺りはぼんやりと暗い。

 そうだと思いついて、魔法袋の中から、ビアトーンのお土産武具のランタンを出した。

 なんか、下に杖みたいな棒がついて異様いようにゴツイが、一応ランタンだ。

 パットがうなずいて、指先に火をともして、ランタンに火を移す。

 パットは火魔法が着火ちゃっかだけ出来るそうだ。

 マッチいらずで便利だな。

 あとで教えてもらおう。


 ランタンで当たりをらすと、ひとかたまりになって殴り合ってるトレ坊とクルツがいた。


「トレ坊、クルツ!」


 僕が、声をかけると、クルツはハッとして、けだした。


「ああ、逃げるな馬鹿っ!」


 ああ、クルツを追って、トレ坊もけ出す。

 魔物が出たらどうするんだっ!


 クルツは走る走る。

 トレ坊は追う追う。

 僕とパットも追いかける。

 あ、いかん、息が上がってきた。ゴツイランタンが重いのがイケナイ。

 物陰ものかげにクルツが飛び込み姿を消した。

 え?


「あ、あわわ」


 トレ坊もっこちていった。

 なんと、また縦穴ピットか?

 マジか?

 クルツは馬鹿なのか?


「行こう、パット」

「しかたがありませんね、泥棒小僧だけだったら見捨てる所ですが」

「まったくもうっ!」


 僕はランタンをかかえるようにして、縦穴ピットに飛びこんだ。

 また、耳元で轟々(ごうごう)と風がる。

 クルツが飛び込んだ所を見ると、同じタイプの縦穴ピットなんだろうけど、違ってたら普通に死ぬな。

 ぬおおおおお、怖えええっ!

 どんだけ、どんだけ、深くもぐるんだ僕たちは。

 また同じぐらいの距離で床が見えてきた。

 あれ、トレ坊とクルツがなんか叫んでるような顔で前を見ている。

 なんだ?

 魔物か?

 ぐぐっと速度が落ちた感じがして、魔法がかって落下速度が減速するのがわかった。


 僕は本日二回目の回転受け身。

 ゴツイランタンを地面にして手を離す。

 前方向に前転するようにして、受け身をとり立ち上がる。

 と、目の前に剣を構えた豚面の方々が居た。

 うおおおお、オークじゃん。


 オークが三体。

 ピグワァと叫んでオークが僕に斬りかかってきた。

 すり足でふところに入り込み、鎧の紐をつかんで腰で投げるっ!


 ズドン。


 そこへパットが落ちてきて、回転受け身を取りながら、大剣を抜いて、倒れたオークの首を両断した。上手いねパット!


 残りのオークは二匹。

 床に刺したゴツイランタンの光で皮膚がてらてらと光っている。

 槍のオークが叫び声を上げて突いて来たので、に触れるか触れないかの距離で片手をらして行き、ふところに入る。

 これは知的生命体ではなくて、迷宮に作られたクローンの魔法生物だ、と自分に言い聞かせて、背後を取り、首を固めて、梃子てこの原理でボキリと折る。

 うっは、魔法生物と思っていても、体温のある相手を殺すのは、結構きつい。

 あとの一匹はパットが稲妻いなづまをまとった剣で真っ二つにした。


 ふう、きついきつい。

 僕は座り込んだ。

 ゴツイカンテラの下の部分は、こうやって、地面にして使うものなのか、偶然とはいえ正解だったな。

 はあはあ。


「ゆ、勇者よ、大丈夫か、あれくらいで息を荒らすとはなさけない」


 うるさい、トレ坊。おまえは王様か。

 動けない僕に代わってパットがクルツをとっつかまえてくれた。


「はなせっ! はなせよっ!!」

「クルツ君、一つ聞いても良いかな?」

「なんだよっ! 糞勇者っ!!」

「ここ、何階?」

「……。し、知らない……」


 まわりの闇が物理的重さで、僕らにみっしりと、のしかかって来たように感じた。


「一番目の縦穴ピットはどこに通じていたのだ、それは解るだろう」

「に、二十階のビックフロア」

「少なくとも、二十階以下。ここはビックフロアかな? そうすると三十階」

「ですね、我が君」

「いっそ、このまま五十三階まで行くかな」

「それは、無理だと思います、我が君」


 うん、僕もそう思う、気が合うねパット。


「クルツ、トレ坊、パット、僕で一つのパーティを組む。目的は地上へ脱出だ」

「そ、そんな事より、の財布だ」

「いいじゃねえか、貴族なんだろ、金持ちだろ、少しぐらいこっちによこせよ」

「金の問題じゃないのだっ!! あれは、あれは、の死んだ母上の形見で、世界に一つしかない思い出の品なのだ。母上は「これを私と思って大事にしてね。ごめんね」と言って死んでいったのだ、それを、それを、おまえはっ!」

「あ、……、いや、それは、お前、かあちゃんの形見かたみかよ……」

「返してやれよ」

「あ、いや、今はないんだ、財布ごと盗賊ギルドの幹部に上納じょうのうしちゃって」

「返す気はあるのか?」

「あ、ああ、かあちゃんは大事だよな。ごめんな、俺、知らなかったんだ」


 思ったより素直にクルツはあやまった。

 トレ坊はぐいっと涙を拭いた。


「中のお金は帰って来なくても良い、財布だけは返してくれ」

「わ、解った、外に出たら、幹部に掛け合うよ。必ず返す。男の約束だ」

「解った、はお前を信じる、男の約束だ。余はトレバー・トーレンツだ」

「俺はクルツ、ただのクルツだ」


 なんか坊主ズは握手とかしてやがる。

 お前らな、巻き込まれてダンジョンの深い所まで落とされた僕とパットの事も思い出せよな。

 まあ、良いけどさ。


「我が君、物資の方は?」

「キャンピング馬車の方に結構置いてきちゃったな。それでもある程度の食料と炊事すいじ器具はあるな。あ、パリムが三つある。意外に食べなかったな」

「パリムはみっしりしておりますからな」

「米と味噌などの和食材料があるから、炊事すいじが手間だけど、結構持ちそうだ。水が、僕の水筒だけか。ちょっと心許ないかな、あ、あやめちゃんの水筒も僕だ」

「なあ、兄ちゃん、まさか、魔法袋持ちか?」

「ああ、ちょっともらった」


 クルツの目がらんらんと光った。

 魔法袋なんて盗ったら、結構な稼ぎだろうしなあ。


「クルツが僕の物を盗るつもりなら、パーティには入れない、置いて行く」

「わ、解ったよあんちゃん。俺は魔法袋を狙わない、盗賊ギルドにも知らせない」

「クルツは盗賊シーフか、パットは聖騎士、トレ坊は?」

「領主の息子だ」

「騎士の卵かね」

「剣の腕は?」

「銅腕輪……」


 ぼんぼんより下か。それでも腕輪を持ってるだけでいいか。

 パットにビアトーン家の武器目録もくろくを渡す。


小僧共こぞうどもを武装させよう」

「はは、ビアトーンの武装を頼もしく思う日が来るとは思いませんでしたよ」

「クルツはナイフか? 短剣か?」

「武装があるのか?」

「前に沢山もらって売っぱらおうと思ってた所だったんだ」


 クルツ用に、何本かナイフとか短剣を出す。

 自分でバランスをためしてもらって、短剣に決まった。


「こんな良い短剣、初めてだぜっ、ありがとう、あんちゃん」

「ちゃんと使えよ、盾はバックラーか」

「大きいのは体格的に無理だな」


 バックラーというのは、お茶碗のふたぐらいの大きさの、ナックルガートみたいな小さな盾だ。

 正確に敵の攻撃をバックラーに当てて使うものだ。


 ナックルガード?

 僕は目録もくろくを見直す。

 一個だけ、護拳ごけんという物があるな。

 これまで一度も出してない、魔法袋から引っ張り出してみる。

 一対のごついブラスナックルだなあ。

 うむ、両手にはめてみる。あ、指を開けばつかみも出来るな。

 マダームの指導は受けて無いけど、達人たつじんの技を目の前であれだけ見たのだから、打撃系も使えるかもしれない。一応持っておくか。

 ブラスナックルからは、ぴりぴりと魔法の感じもする。目録には何も書いてない。

 まあ、最悪バックラー的にも使えるかもね。


 クルツに合う防具はないので、元の皮鎧のままだ。


 次はトレ坊。

 トレ坊の豪華な制服の下には、ちゃんと金属製の胴丸どうまるを着込んで、ガントレット、グリーブ付きであった。防具は問題無し。

 さすがお坊ちゃま。

 トレ坊も短剣だが、刺す系の物を好むようだ、盾も小型のカイトシールド。というか、背丈的にタワーシールドみたいになっている。

 一応、パーティとしての装備はととのったのか。

 マジックユーザーが居ないのがヤバイ。


 それにしても、現在位置が解らないのはつらい。

 最悪三十階か。

 とりあえず、水場を探して、うろうろしよう。


【次回予告】

げんきたちが落ちたのは、何階なのか?

マジックユーザーを欠いた、アンバランスなパーティで、彼らは地上を目指し動き始める!



なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第93話

ダンジョンの水場へ

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