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85. 楽しい車内晩餐(しゃないばんさん)

 あやめちゃんが作っていたのは、ミルクシチューであった。小麦粉が無かったのでとろみはないが、色々入っていていろどりが良い。

 あとは、ハムとソーセージを焼いた物と目玉焼き。パリムパンの上にチーズをのっけて焼いたもの。グリーンサラダであった。

 みんなでテーブルについて、いただきます。


 うん、うん、ミルクシチュー美味しい。

 ジャガイモっぽいお芋がほこほこして、黄色人参も美味しい。ソーセージから肉の味わいが汁にしみ出していて、絶妙な塩加減になっていて、キャベツ系菜っ葉も美味くなっている。


「これは、おいしいよ、あやめちゃん」

「うふふ、ありがとう、げんきくん」

「わあ、美味しいな、これは、アヤメ」

「げんきのドレッシングも、野菜に良く合うわね」

「それはどうも、オッドちゃん」

「我が君も、料理が出来るのか、ぐぬぬ」


 パリムは焼くとカリカリになって美味い。

 バターをたっぷりとつけて、バリバリと食べる。

 オッドちゃんが出してきたお茶は、紅茶系で、アールグレーのような味がする。そこへ、濃厚のうこう牛乳を入れて、砂糖を入れると、良い味わい。

 パン食に実に良く合う。


 サラダを取って、レタス系菜っ葉やトマトもどきにドレッシングをかけて食べる。

 ふむ、これは、僕の調合ちょうごうが上手いというより、お酢が美味しいね、風味があってサッパリスッパで野菜のおいしさを際立たせている感じだ。

 お酢だけで食べるというのも、嘘ではなさそうだ。


 ハムとソーセージは、今日買って来た物が中心。

 サラミみたいなドライソーセージや、あぶらののったハムが、とても美味い。

 ちょっと、しょっぱい物もあったが、これはパンとかと一緒に食べるものなんだろうね。

 この世界は、食材が基本的に良いので、自炊でも結構行けそうだ。


 そういや、パン屋で買ったビスキュイがあった。食べてみよう。


 がりん。


 ……。

 もの凄く固い。なんだろう、鉄で出来てるのかこれ。

 かかか噛み切れないっ、ガチンガチン。


「我が君、それはお茶かスープに、つけてから食べる物ですよ」

「あ、そうだろうね、鉄かと思った」


 お茶に漬けてみる。

 しばらく経ってから、噛む。


 がしん。


 やっぱりしんは硬い。

 ビスキュイに干し肉でダンジョンに潜ったら、僕は悲しい思いをする事であろう。


「空間魔法を使えるか、魔法袋がある人間は、ビスキュイとか食べなくても良いのよ」

「迷宮探索者が、魔法袋を、どんな小さな物でも欲しがるのは、そういう物資輸送の手間が省けるからなのですよね」

「無限財布に、保存食を入れてる人は結構いたわね」

「パットはダンジョンアタックをしたことがあるの?」

「無いですね、騎士は基本的に迷宮に入らないので、学校で迷宮観光ツアーを一回しました。メイリンの十階まで見ましたよ」

「あ、ここら辺のタンジョンというと、メイリン市なんだ」

「連邦にも二つ大ダンジョンがあるのですが、一つは海の孤島にあって、周辺施設が貧弱ひんじゃくですし、もう一つは北のはしなので、ここらへんの地方では、メイリンが一番来やすいですね」


 あやめちゃんが、食後のデザートに、リンゴっぽい形の青い実をくるくると綺麗にむいて、八つに割って、テーブルに出してくれた。甘くてシャリシャリだね。おいしい。


 食器を下げて、シンクで洗い物をする。

 温水使えるのは良いなあ、相変わらずあまり泡が立たない液体石けん食器洗い用で洗っていく。

 洗い物は当番制に……。オッドちゃんは出来るのかなあ。

 踏み台とか要るかな。

 洗い物のたびにフワフワ浮いてるのも大変だろう。


「我が君、洗い物ぐらい、私が」

「もう終わりだから良いよ。明日の朝は、僕がご飯当番だから、洗い物はパットでおねがいね」

「はっ、了解いたしましたっ」

「オッドちゃんは洗い物とか出来る?」

「やらないわよ」

「なんでよ?」

「……やったこと無いもの」

「洗い物ぐらい覚えよう」


 あ、黙って膨れた。

 もー、この駄目お姉ちゃんはー。


「そうよ、メイドをやとうわ!!」

「出来る事は自分でやろうよ。それから、この時期に雇うと、死舞手の息が掛かった人かもしれないから、あぶない」

「それを言ったらジーナだって」

「あの人は、死舞手がメイリンに来る前に、ギルドで依頼書見て名前を知ったから、可能性は薄いね」

「でも自炊のために家を借りるなら、メイドをやとうのもありですね」

豪邸ごうていを借りるわ」

「普通の家で良いよ、家の事は、明日、ダンジョンにもぐった後に考えよう」


 死舞手の息のかかってなさそうなメイドさんというと、どこで紹介してもらえば良いのだろうか、明後日あさって、マダームにでも相談するかな。

 しかし、ダンジョンもぐってる間は貸家だと無駄だなあ。

 何度も腰を据えてやるのではなくて、できれば一回で五十三階まで行きたいな。

 僕らの資産しさん状況からすると、貸家どころか、普通に家も買えるのだけど、メイリンにずっと住みたい訳でも無いし。


 住むのだったら、聖堂都市か、ケンリンバーグか。

 リガンテン子爵領でピエールの相談に乗りながらのんびり内政ってのも良いなあ。

 あやめちゃんにはケモ耳っ子のサツキをあてがっておけばいいし。

 魔王軍の事さえなかったら、パンゲリア中を旅して回りたいなあ、獣人国食べ歩きとか、帝国の鉄道の旅もしてみたい。

 あと、共和国の世界樹の街にも行きたいし。

 魔王領の飯は本当に不味まずいのか確かめたいなあ。

 この馬車をキルコタンクにつないで、諸国しょこく漫遊まんゆうしたいものだなあ。


 などと考えて居ると、女子たちが、パジャマ姿でうろうろしている。

 時計を見ると、パンゲリア時間で夜の四時、地球時間だと十時半ぐらいだな。


「もう寝るの?」


 なぜ、びくっとする、パット。


「あ、あの、私が寝ているのは下ですので、その、お間違えないよう、上に行ってはいけません」

「どっちにも行きません」


 なんで、しょんぼりする?


「あの、こんな事を言うのはなんですが、我が君は男性として、どうなのですか? 話に聞くと男性というのは何時でも何処でも、あの、アレの事ばかり考えてすきをねらっていると教えられてきました。我が君は、その、どこかの器質障害きしつしょうがいとかで」

「ないよっ」


 人をED扱いすんなし。


「まあ、忙しく日々を暮らしていて、そういう気にならない所もあるし。僕はとても臆病おくびょうで女性との距離を徐々にしか詰められないので、思い切った行為にはでれませんので、安心してくれなさい」

「何時でも私はオッケーなのですが」

「パットと色々あると、即結婚につながるので、色々二の足をふむというか、無理ですね」


 あ、パットがしょぼーんとした。


「パットの事が嫌いっていう事じゃ無いんだよ。主に僕のほうのヘタレっぷりだから、ごめんね」

「あ、いえいえ、我が君があやまることではないのです。私が思っていた餓狼がろうのような男性観と違いすぎるので、驚いていただけで、優しい我が君のやりかたは、とても好ましく思ってます。そういう慎重な所もとても好きな所で、その、いとおしく思っており、ます、はい」


 パットは真っ赤になると、ソファーから立ち上がり、お休みなさいと一言言って、ぱたぱたと奥に行ってしまった。

 もう、パットは好意をはっきり伝えるので、こっちが照れくさくなるよ。


 ソファー冷蔵庫の戸を開けて、牛乳を一本出してテーブルに置くと、今度はオッドちゃんが座っていた。


 なんですか、一人ずつ、カウンセリングする日なんですか、今日は。


「牛乳飲む?」

「頂くわ」

「温める?」

「冷たいままで良いわ」


 オッドちゃんの前に牛乳瓶を置く。

 オッドちゃんは、コルクのキャップを外して、こくこくと飲む。


「なんでしょう」

「ゲンキは私が誘惑しているのに、なんで、寝所に忍んでこないの?」

「してねーだろっ! 誘惑っ!」

「ぶー、パットには真面目に答えるのに、なんで私には突っ込むのよ」

「誘惑された事実がないからだね」

「私はこんなに魅力的なのに」


 はあ? まあ、特定の趣味の人にはストライクかもしれないが、妹の居る人間にとってはちびっ子の体なんか、見慣れた肉塊にすぎないのだよ。

 というか、その壮絶な自信はどこからくるのだ。


「楽しいわ」

「ん? なにが?」

「こうして、みんなでわいわいと旅をするのが、楽しいわ」

「これまで十回、魔王遠征してるんでしょ?」

「うっ、思い出させないで」


 どんだけー。

 あなたはどんだけ『パンゲリア大陸、パーティ参加なのにボッチ旅』を続けて来たんですか。

 ああ、目頭めがしらが熱くなる。


「わ、私は偉い大魔導師だから、あまり下々の者と関わらないように旅をしてきたわ、今回はなんだか、下々のゲンキのペースに巻き込まれて、みっともない事ばかりしてるけど、なんか、その、……楽しいわ」

「それはよかったね」

「パットも話をしたら、結構良い奴だったわ。アヤメも優しくて良い子だわ。ゲンキも、その、ときどきむかつくけど、お説教しすぎだけど、私の話を聞いてくれない事が多いけど、ときどき、その、はっ、とさせられるような事を言うわ」


 なんで僕の時だけ不満が超山盛りなんだよ。


「その、あり……」

「うん」

「……ありっぽく、明日はタンジョンね」

「いや、普通に言いなさい」

さっしの良い小僧は嫌いだわ」


 そういうと、オッドちゃんは牛乳を飲み干して、ビョンとソファーから跳び上がり、奥に向かった。


「ありがとうね、ゲンキ……」


 オッドちゃんの小声の、らしくない感謝の言葉が、耳に届いて、僕はすこし嬉しくなった。


 さあ、寝ようか。


 ……、あれ? 僕用の毛布はどこっ!?

 枕は?

 え、奥に取りに行くの? 毛布と枕が余ってるのはパットの下ベットの所だよね。

 そんな貞操ていそう危険地帯には行けないよっ。

 南無三なむさんっ!!!


 懊悩おうのうする僕は、十分後、おトイレに起きてきた、あやめちゃんにお願いして、パットの下ベットから、枕と毛布を持ってきて貰い、助かったのであった。

 あやめちゃん大好きだよ。


 僕は、ソファーに横たわり、心安らかに寝たのだった。

【次回予告】

ついにダンジョンアタックの朝が来た。

だが、日課のランニングの途中、死舞手の襲撃が始まる!

卑劣な敵の包囲を噛み破れっ、げんき!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第86話

初めてのダンジョンアタック

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