表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/750

77. 柔道場にマダーム

 ぜいぜい。

 一夜明けて、またも僕はパットに追い立てられてランニングだ。死ぬー。

 コースは、昨日と、同じ、だだだ。

 ぜいはあ、ぜいはあ、ぜいぜい。

 くそう、すり足モードで走る。


「我が君、動きが気持ち悪いですよ」


 ごっほごっほ。

 わかった。すり足でも疲れ方は一緒だ。

 ぜいはあ。

 走り方を、元に戻す。

 超苦しい。

 ひいひい。


 あやめちゃんは、今日も、隣で、涼しい顔だっだっだっ!

 パットも鎧で、楽そうに走っている。

 苦しげで、死にそうに、はあひい、走って、メイリンの民衆に笑われているのは、僕だけだ。

 どえいどえい。


 でも、ちょっとだけ、ほんの少しだけど、昨日よりは楽、かな?

 おぶおぶ。

 でも、あ、足が、痛いよ。

 ぜいはあ。筋肉痛だよ。

 ほひい、ほひい。


 なんか、ごふごふ言いながら、死にそうになって、ホテルに戻る。

 部屋に入って、運動着を脱いで、行水。

 うへえ、生き返る。心地よい。

 普段着に着がえて、ガントレットとグリーブを装備、だいぶ、装着感にも、なれて来た。

 みんなでホテル最上階カルビンズレストで朝食。

 もぐもぐ。


「本日の僕の予定は、お昼まで冒険者ギルドで柔道、それから、ダンジョンアタック用の物資の買い出しです」

「では、私とアヤメは昼の五時まで図書館で魔法のお勉強ね」

「お昼にギルドにいくね」

「私は、我が君と一緒です」

「オッドちゃん、暗殺者が来るかもしれないから、あやめちゃんをよろしく」

「わかったわ」


 誰かに襲撃しゅうげきされるかもしれないというのは、なんか気が重いものだなあ。

 気が抜けない。

 柔道感覚があるのが助かる。

 常時起動しているレーダーみたいに使えるのだ。

 武道って凄いよね。


 そんなこんなで僕はパットと共に冒険者ギルドへ向かう。

 今日も良い天気だ。

 パンゲリアの今の季節は初夏、これからちょっと暑くなって、それから秋がくるそうだ。

 東部地方は、ちゃんとくっきりした四季があるようで、僕たちは良い季節に来たようだね。


 ギルドに入ると、依頼書の壁に人が一杯。

 少しでも割の良い仕事を受注じゅちゅうしようとみんな一生懸命だね。

 冒険者ギルドには最小で十歳から登録が出来るので、小さい子も結構いる。

 そして、泥棒小僧クルツも居たので、警戒すると、なに見てんだ、って目でにらまれる。

 窓口のメルクさんに朝のご挨拶。


「みなさんお待ちですよ、奥へどうぞ、ゲンキ先生」

「みなさん?」

「みなさんです」


 奥に向かって歩くと、裏庭に人混みがあふれかえってる。

 うへえ、これ、全部、みなさん?


 裏庭に入ると、建物の近くの屋根のある部分の下に十枚の固マットがかれて簡易柔道場ができていた。

 その真ん中に、柔道着のような物を着て正座して座っていた女の人が立ち上がり、礼をした。


「おはようございます。今日はよろしくおねがいしますざます」


 ギルドマスターのキャリーマダームだった。


「なんですか、その格好は?」


 柔道着かと思ったら、違った、生地の厚い関頭衣かんとういで、それを皮のベルトでめているのだ。

 下は黒のぴっちりしたバーミューダぐらいの長さのズボンだった。


「昔取った杵柄ざます。冒険者時代は格闘家モンクざましたから、その頃の稽古着を着てきたざます、帝国で見たジュードーはこんな格好ざましたが」

「あー、たしかに良いですね、ちょっと立って下さい」


 立ち上がったマダームと組み合ってみた。

 ふむ、奥襟を取ったりは出来ないが、そでは取れる。

 生地の厚みも柔道着っぽい。

 これは練習用に良いかもしれないな。


「これは、手に入れられますか?」

「レティア僧兵団の制服ざますから、購入は可能ざますよ」

「それは良いですね。僕の分と、パットの分、あと」


 僕は、思い思いの格好で座っている冒険者の男女を見回した。


「今日、ジュードーをやって、ずっとやりたいなと思った人の分を手配てはいできますか」

「そうざますね、明日の朝、販売会をするざます。ゲンキ先生とパットさンの分は講習料として、ギルドから出すざます」

「それはありがとうございます」


 しかし、マダームは僧兵上がりで格闘家モンクだったのか。意外だな、てっきり魔法系だとばっかり思ってたよ。

 モンクというのは、冒険者の中でも武器を持たないで闘う格闘系の職業だ。

 パンゲリアだと、宗教団体の僧兵の人がなる事が多い。


「ギルドマスターは柔道を覚えたいのですか」

「あたくしは、現役時代、打撃や蹴り技でブイブイ言わせていたものざますが、格闘家モンクの技には、あまり投げとかは無かったんざますよ。受け身を覚え、投げ技を覚えて、オールラウンドに闘えるようになりたいざます」


 ギルドマスターがこれ以上、闘わなくてもいいじゃん、って気がするのだが、やっぱり格闘家の血が騒ぐのだろうか。偉いお人だ。


 とりあえず、柔道場が出来たので、一通り受け身の実演をする。パットにも復習のため、一緒にやってもらう。

 ここに集まっている、みなさんは、十五人ぐらいの冒険者で、なんだか熱心さが凄い。

 遊び半分の人は一人も居ない。

 食いつくように実演を見て、それから自分でもやってみている。

 みんな目が真剣。

 良い生徒さんだ。

 パアンパアンといい音をさせて受け身の練習が続く。

 みんな覚えるの早いなあ。

 パットとマダームを投げて、実戦での受け身の説明をする。

 頭を保護するのを強調する。

 事故があると嫌だからね。

 マダームは体が凄く柔らかい、軟体動物を投げてる感じがする。

 凄い。

 体が柔らかいのは格闘の才能の一つなのかもね。


 生徒さんを一人ずつ投げて行く。

 あれ?

 なんだろう、この人、にこやかな笑顔だけど、かすかに殺気がするな。

 細身の斥候職か盗賊の人なんだけど、みょうな感じ。

 近づいてくる移動方向を、曲線を描いてすり足でかわすと、右手にナイフをにぎっていて、それを僕の居た空間に、吃驚びっくりするぐらいの速度で突き入れていた。


「くっ!」


 突いたナイフをそのまま変化させて、斜め上から、僕に切りつけてくる。

 軌跡きせきを読んで、手首を取り、相手の胸板に肩を当てるようにふところに入って、腰で投げる。

 ダーン! といい音をさせて、彼は受け身をとった。

 そのまま僕は彼の胸にひざを乗せて、手首を固め、制圧せいあつする。


「貴様っ! 我が君にっ!」


 パットが大木剣で、男に殴りかかろうとするのを、手でせいする。


「どういうことですか?」

「くっ! 離せっ!」


 手首をしぼり、関節に痛みを与える。

 男は悲鳴を上げた。


「は、離してくれっ! 金だ、金、あんたの首には賞金が掛かってるんだっ! い、いてえっ!」

「なるほど、ちなみにおいくら?」

「首をもってきたら、五万グースだっ!!」


 なんか安いね。

 ホテルのシングル一泊分が僕の首の値段かあ。

 マダームがなわを持ってきたので、男を縛り上げる。

 職員さんに、衛士に突きだして貰うようにお願いして、男を引き取ってもらった。


「なんですの? 賞金首になられたざますか、ゲンキ先生」

「我が君、これは、あいつらが、メイリンの裏社会に金をいたんですね」

「僕は懸賞首になったみたいですね」

「どこが動いてるざますか?」

「共和国の暗殺部隊の死舞手しまいてです、昨晩、オッドちゃんに挑戦状を叩きつけて来ましたよ」

「我が君、これはまだ前哨ぜんしょう戦ですね。これから本格的に金で雇われた刺客が襲ってきますよ」

「ほほほ、さすがはゲンキ先生、勇者とはそうでなくては面白くありませんざますわ」


 笑い事じゃないですよ、マダーム。


常時じょうじ、刺客に狙われている状態でいるというのは、武道の成長に素晴らしく効果があるんざますよ。あたくしも、終生の宿敵と何十年にも渡る死闘で、どれほど技がみがかれたかしれませんざます。超一流の格闘者グラップラーが必ず通る道ざますわ」

「……その宿敵さんは?」

「十年前に決闘で、見事討ちたしましたざます」


 物騒ぶっそうなマダームだね、猫抱いて家事してるような見た目なのに。


 僕は気を取り直して、柔道の講習を続けた。

 パットと乱取りをする。

 だんだん、パットの剣筋けんすじが早くなってきて、ひやりとすることが多くなる。

 ひやりとするたびに、対応とか、動きの捌きとかが解ってきて、柔道の腕が上がっていくのが実感できる。

 これは面白いな。

 本気のパットと戦えるようになれば、大体の剣客とは戦えるようになるだろう。


「あたくしとも、乱取りをしてほしいざます」

「ギルドマスターとですか?」

「あたくしの、レティア武闘術が、どこまでジュードーと戦えるか興味があるざますわ」

「パンチもキックも有りですか?」

全部有りざます」


 それは怖そうだなあ。

 でも、打撃系格闘との対応とかも覚えないといけないし。

 いきなり実戦より、乱取りの方が良いか。


「解りました、やりましょう」


【次回予告】

ギルドマスターの武術の猛攻に、げんきは死をも覚悟する。

柔道対レティア武闘術、勝つのはどちらか!

絶対的な窮地に、魂を燃やせ、げんき!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第78話

78. マダームの使うレティア武闘術

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ