62. 魔導具工房 カバラン
オッドちゃんの案内で、メイリンの街を行く。
本当にもう、アップダウンの多い街だな。
しかし、街の上の方とか、塔とか、水道をどうしてるのだろう。天水で済ましている規模だとも思えないけどな。
水魔法がある世界だから、貯水塔に圧力をかけて、上までくみ上げているのかもしれない。
ある程度上まで運んで水量をためたら、重力で落ちるもんな。
魔導水道料金はいくらぐらいなのか。
目ざす魔導具工房は、口なし主道の中腹あたりにあるそうだ。
塔路のここからだと、共和国主道を降りて行き、途中で階段を降りてショートカット、上周り横路をいって、口なし主道に、ついたら少し下りれば良いらしい。
ややこしいなあ。
坂自体はそんなに角度は無いのだけれど、やっぱ昇り降りは結構足に来ますね。
上の方から中腹の上廻り横路に来ると、がらっと人の感じが変わっていって、面白い。
武器屋や道具屋も、だんだんと値段が下がっていく。
お店を冷やかしながら、横路を歩き、口なし主道を少し下りると、魔導具工房カバランはあった。
魔導具工房の大きさは、大体ガソリンスタンドぐらいの広さがあって、主道側半分で魔導具を陳列販売、奥側が工房になっている。
お店部分には、色んな魔導具が所せましと、ならべられていて、なんか地球で言うと、ホームセンターっぽい感じがした。
魔導卓上コンロとか、魔導時計とか、魔導掃除機とか、魔導ステレオとか、魔導付けば何でもありかいっ! とツッコミが入りそうなぐらい、見た事のあるような魔導具が並ぶ。
魔導具は、地球の電化製品の互換技術なんだなあ。
そりゃ、魔石がいくらでも必要なわけだ。
地球で言えば、石油にあたる存在が、生のままダンジョンから産出され、加工され、輸出されるわけだから、メイリンが都市国家として成立するのも、わかろうというものだ。
ダンジョンが枯れたら、エネルギー危機が起こるのかねえ。
オッドちゃんが店内をずんずん進み、工房のドアを開ける。
「カバランは居るかしら」
「ほいほい、お、オッドではないか、ごぶさただのう」
カバランさんは、髭と髪が金色の、おやっさん二号みたいなドワーフだった。
基本的にドワーフは見分けが付きません。
男性ドワーフの基本的な外見は背が百五十センチぐらいで、髭モジャ、手足ぶっといである。
女性は髭が無く、生涯一ロリ、みたいな感じの少女っぽい外見だが、手足がぶっとい。
小人サイズなんだけど重戦車、が、ドワーフという種族の基本である。
ドワーフは、洞窟に住み、掘り進み掘り進み、坑道をはりめぐらし、山一つ穴だらけにするという、結構環境に迷惑な種族で、鍛冶、冶金、彫金などの技術に優れた亜人種なんだ。
鍛冶小人の名前でも呼ばれて、剣などの武具で名の知れた超逸品は、たいていドワーフが作っているらしい。
「これが壊れてしまって、直して欲しいのだけど」
オッドちゃんが謎空間から転移の球を出して、カバランさんに渡すと、彼は片眼鏡を掛けて、しげしげと球のひびあたりを見た。
「転移の球か、ふむ、なんか大きい質量の物を転移させたようだの。過負荷が、かかった為の破損じゃな」
大質量の正体は、たぶんロボだ。キルコゲール丸ごと異世界転移だなんて荒技を使うから。
「直せるかしら?」
「ま、なんとかなるわい。こんどからはなるべく身軽になって飛ぶんじゃな」
「空間魔法の中身も加算されるの?」
「加算されるに決まっとる。一緒に時空を飛ばなければ、出先で出せる訳も無いぞ」
「そういえばそうね、失敗したわ。どれくらいで直るかしら?」
「材料があれば三日ほどだの。ちょっと待っててくれ」
カバランさんは奥の戸棚に引っ込んで、あちこち何かを探していた。
「いかんのう、材料が二つほどたりんわ」
「あらそうっ」
なんで、オッドちゃんは、うれしそうなんだよ。
「フランキ水晶片は別の店に売っておったから良いとして、困ったのは『純晶水』だのう」
「珍しい物なの?」
「メイリンのタンジョンから産出される、魔導具に使う素材なんじゃが、あまり使われんので、産出量が少ない。浅いところならば取りにいけば良いが、産出するのは五十三階層にある泉じゃのう」
「そんな深い所なのか、ご主人」
「余所の都市の店に在庫の取り寄せを頼むという手もあるが、高いのでおすすめはせんのう」
「困ったわねぇ♪」
だから、オッドちゃんは、なんでそんなに嬉しそうなんだよっ。
「鉱物ではなくて、水だからのう、なかなか冒険者も拾ってこんわ。五十三階まで行ける冒険者パーティも限られるし、雇うと大変じゃな。ついでに取ってきてくれとお金を渡して、気長に待つしかないわな」
「その場合どれくらい、かかりそうかな?」
「五十三階と言えば、一流パーティでも到達に七日ぐらい、かかるのう。どれくらいかかるかは、運命神ピクテのご機嫌次第じゃの」
「オッドちゃん、ちょっと行って取ってきてよ」
「いやよ、ゲンキは私を何だと思っているの?」
うへえ、最悪だ、どれくらいメイリンに足止めされるか解らないのか。
「ところで、我が君、なぜ転移の球の修理が必要なのですか?」
「……」
「……」
「あー、後でちゃんとパットに話すよ」
「そうですか、何かニホンに忘れ物ですかな」
そう言ってパットはにっこり笑った。
その、笑顔がコワイ。
「そういう事でしたら、われわれ四人で潜るのはどうでしょうか。誰かを頼るよりも早いと思います」
「うーん、それしか無いのかなあ」
「ゲンキがダンジョンに潜るならば、付き合ってあげてもよくってよ」
「わわ、ダンジョンアタック、ワクワクするんだよ」
しかし、オッドちゃんとパットは良いけど、僕は柔道でダンジョンの魔物を倒せるのか?
あやめちゃんは、まあ、【応援】してくれれば良いけど。
最悪、全部の魔物をオッドちゃんにぶっ飛ばしてもらえば良いのだけど。
「ダンジョンにキルコゲールは入らないよね」
「棍棒は無理よ、魔導機も入らないわよ」
「くそう、生身限定か、柔道は魔物に通じるのかな」
「我が君、私は聖騎士です、前衛が、つとめられますし、回復魔法も使えますよ」
「パットは頼りになりそうだね。食料とかテントとかの物資は、オッドちゃんの空間魔法と魔法袋でなんとかなるか」
「ダンジョンアタックなら、魔法の練習にもなりそうなんだよ」
「そうね、あやめをきたえながらダンジョンに潜るのも面白そうね」
ダンジョンには入るつもりだったけど、こんなガチアタックするつもりは無かったんだが。
五十三階って、どんな深度なんだろう。
怖いなあ、不安だな、と思うと同時に、なんとなく少しワクワクしている僕であったのだ。
冒険者ギルドとかに行って、いろいろ情報を集めよう。
メイリンダンジョンの到達最大深度が百階ぐらいということは、五十階層ぐらいは、だいぶ調査走破されているはずだろう。
【次回予告】
外国旅行の楽しみは食に有りっ!
頼めよげんき、声高らかに知らない異国料理をっ!
だが、食べ残しは厳禁だっ!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第63話
獣人連合国料理のお店 ウイルウイル




