6. パンゲリア大陸の現在
「オッドちゃん、魔王軍との戦争について簡単に教えてよ」
オッドちゃんは小首をかしげて考え込んだ。
「うーん、そうねえ、簡単に説明するわね。パンゲリア大陸には、大きく分けて四つの勢力があるの、魔王軍、獣人連合、亜人共和国、人類諸国連合ね」
「亜人共和国ってエルフとかドワーフ?」
「そう、よくわかるわね」
「定番だからねー」
web小説とかで。
「戦争は五十年前に北方の魔族が大陸中央を侵略しはじめたことから始まるの。大陸中央の大森林は亜人の国々だったんだけど、どんどん負けていって、獣人連合と人類諸国連合が亜人共和国へ同盟を組んで参戦、今は泥沼の大戦争になっているのよ」
「地図を出すねー」
あやめちゃんがピポパとスイッチを押すと、左のウインドウに大きな世界地図が出た。ロボ便利便利。
大まかに分けると、北に魔王軍、中央に亜人共和国、東と西に人類諸国連合、南に獣人連合、という感じのようだ。
人類諸国連合というのは、西の大帝国と、東の諸王国連邦に分かれているっぽい。
ぼくらが今いるのは東の諸王国連邦の真ん中あたりの場所みたいだ。
「魔王軍に向けて三つの勢力がまとまって闘えばすぐ戦争は終わるのだけど、なかなか足並みが揃わないのよ。あっちで突出して負けて、あっちで魔王軍に寝返って、とはいえ魔王軍も大勢力にはなれず、各国疲弊して戦争はどんどん長引き、庶民は戦費の負担で貧困になり、革命は起きる、農民の反乱は起きる、まあ、乱世よね」
やあやあ乱世乱世って所だね。
「オッドちゃんは戦争をやめさせたいの?」
「簡単に言うと、そういう事ね」
「どうしたら戦争は終わるのかなあ、やっぱ魔王を倒す感じ?」
「魔王の元まで行って懲らしめるつもりよ」
なかなか王道ファンタジーだな。
「トップを潰しただけで魔王軍は弱くなるの?」
「魔王軍は魔王を頂点にしたトップダウン組織だから、魔王が居なくなったら各種族でバラバラになって内戦が起こって軍なんかコナゴナになるとおもうわよ」
「魔王軍は独裁組織なんだ。民主主義になればいいのに」
「パンゲリアにも議会民主制の国もあるんだけど……。ものすごい物事決めるの遅いわよ」
「そうなんだ、あるんだ議会制」
現代日本知識で民主主義を導入して、内政TUEEしようと思ったけど、もうあるなら駄目だなあ。
キルコタンクはゴトゴトと草原の道を行く。
時々馬車とすれちがったりする。そのたびにあやめちゃんが窓からにこやかな笑顔で手を振る。
のんきのんき。
ちなみに、タンクになった時のハッチは人型の時と反対側がヒンジになって開く。
鳥のくちばしみたいな感じだ。
開けて進むと風が入って涼しい。
前方に川発見、小さな跳ね橋がかかっている。
……。
タンク通れないよなあ、これ。片側のキャタピラしか乗らない。
「タンクは川の中いけるかな? マリンにならないとだめ?」
「んー、タンクでも大丈夫だけど。人型で歩けば、ってキルくんは言ってるんだよ」
「あ、それもそうか。チェンジキルコゲールッ! かな?」
「音声はあってる、でもスイッチは青と黄色だよ」
「チェエエンンジッキルコゲェェェェェルッ!!」
ポチ。
「なんでそんな変な節回しで言うの?」
「お約束です」
ぱっぱら~♪ と、また軽快なBGMと共にキルコゲールは立ち上がり、手をあげ胸を張りホーズ! 謎の光るエフェクト!
そして足を川につけ、ジャブジャブと歩き、対岸にあがる。
「チェエエンンジッキルコトワァァンンクゥゥゥッ!!」
ポチ。
「なんだか、どんどん変な風になまってない?」
「気のせいです」
神○明の口調のまねは難しいんだぞ。
僕はこれをスーパー○ボット大戦シリーズで覚えた。
タンクモードに戻って、ごとごと走る。
キルコマリンも試してみたいなあ。湖か海は無いのか。
そうやってゴトゴト走っていると、あたりがだんだん牧場やら畑やらになってきて、遠くの丘に村が見えてきた。
大体、日本の学校ぐらいの敷地面積に木で作った柵で囲われた、所帯数五十ぐらいの村だ。
「あそこで一泊して、いろいろ買い物をしましょう。冒険者ギルドもあるから登録するわよ」
「おおおっ、って、キルコタンクだと村に入れないみたいだけどどうするの?」
キルコタンクのサイズでは、村の門を破壊、その後メインストリートの両側の店舗住居をぺしゃんこにするのは目に見えている。
「置いて行きましょう、大丈夫誰も取らないわよ、重いからこの棍棒」
まだ棍棒扱いですかっ!