57. 棍棒の時間よっ
ズシンズシン。
地底湖にまた落ちるのは嫌なので、森の中を北の方へ移動していく。
ミルコゲールは盛大にバーニアを噴かしながら、キルコゲールを追ってくる。
空中戦特攻機なのかな。
よし、ここらへんで良いだろう。
僕はキルコゲールを、ふり返らせ、ミルコゲールと相対する。
ベッポゥと間抜けな音と共に、通信ウインドウが開く
『勝負だっ! 飛高っ! 俺が勝ったら、キルコゲールと、オッドの身柄をいただくぞっ、そ、それから、女騎士さんも、いただくから、ねっ』
「ね、じゃないよっ。僕が勝ったら、いさぎよくミルコゲールを引けよ」
『くくく、勝てるとでも思ってるのか、飛高、お前にミルコゲールの真の恐ろしさを教えてやるよっ!』
「僕の強さを刮目しろっ! 行くぞ、川島君っ!!」
『おうっ! ミルコビィィッィムッ!!』
ミルコゲールの額のオレンジの石が、ビカリと光り、バシュワーンとビームが出て、地面を焼き、こちらにせまってくる。
「は?」
「げんきくんがんばってっ!」
うわっち。
あやめちゃんのす早い【応援】で、回避率が加算されて、ビームをとっさにさける事ができた。
「なんで、川島君のにはビームがついてんのっ!?」
『なんだ、飛高のには、ついてないのか、ビームだけじゃないぜっ、ミサイルもあるぜっ!!」
ミルコゲールが背を丸めると、肩の付け根、背中、腰から小型ミサイルがボシュンボシュンと発射されて、飛来してくる。
「げんきくんがんばれっ!」
「うおっととっ!」
避ける避ける避けるけど、ミサイルは誘導弾だ。
さらに追ってくるのを岩の影に隠れたり木に隠れたりして起爆させ避ける。
『……ミサイルの残弾は少ない、使わないことを推奨する』
『おっと、そうだったなミルコ。ビームで闘うか』
「な、なんだよ、武装が生きてるのかっ、ず、ずりいなっ!」
『はあ? キルコゲールには無いのかよ、これは良い事を聞いたなっ!! さっさと降参しろよっ!』
「え、その、やだよっ」
「我が君っ! 私も参戦させてくださいっ!」
『駄目だよ』
『だ、駄目だよ、そこに大人しくしててください、女騎士さん、俺が助けるからっ』
「ふざけろっ! 貴様ーっ!! 飛び道具を使うなっ!!」
『いや、それは、アレだよ、女騎士さん、聞けないよ』
「卑劣漢めっ! 貴様のような奴が私は一番、嫌いだっ!!」
『え、そ、そんなっ』
わはは、川島君泣きそうになってる。ざまあっ。
しかし、ミルコゲールは武装が生きてるのかよっ、状態がいいなっ、オートマタ完備だしっ。
後ろの駄目大魔導とミルコちゃんをトレードしたいところだよ。
しかし、なんとか、近づいて、柔道技でしとめたい所だ。
……。
同型機って事はショックアブソノーバー魔法もミルコゲールにもあるって事だな。
投げで攻撃が通るのか?
くそ、考えていてもしょうが無いかっ!
いくぜっ!
「げんきくん、がんばって~」
シュインと【応援】効果で視界がクリアになり、広く深く周囲が見えるようになる。
すり足でするりするりとミルコゲールに近寄っていく。
パシュンッ!
足下をビームが焼く、だが、当たらなければどうという事も無い。
ビーム発射時間は二秒ほど、発射時の狙った地点から少々移動出来るようだ。
するりするりとかわす。
『なんだ、貴様、その変な動きはっ!』
すり足だ。馬鹿者。
するする。
ビームを避ける避ける、そして、ミルコゲールの懐に飛び込む。
ミルコゲールの手を取り、姿勢を崩して、腰に乗せっ。
「危ないっ、ゲンキ!!」
ミルコゲールの額が光る、オッドちゃんが低く詠唱、発射より一瞬早く、オッドちゃんの結界魔法バリアでビームが散らされる。
至近距離で花が咲いたようにビームが散る。
ミルコゲールがその隙に、僕の手を払い、投げがキャンセルされる。
『お前、今、体落としを……。柔道が使えるのかっ』
「まあね」
『魔導師が決闘に割り込むなんて、卑怯よっ!』
「悔しかったらあなたもするのね、チャリア大魔導師。くくく」
『よくもそんな巨大な魔力集合体の中で魔法を組めるわねっ、馬鹿じゃ無いのあんた』
「負け犬の遠吠えが心地よいわ。ふふふっ」
じりじりとミルコゲールが下がり、再び対峙する。
まずいな、川島君も学校柔道をやってるはずだ。
技を外されそうだ。
『怖いなあ、げんきっち、対峙すると、すごく怖い、殺気とか言う奴?』
「げんきくんは強いんだよ。降参した方がいいよ」
『あと、なんで、あやめっちは、しょっちゅう応援してるの?』
「え、あー、未来ちゃんは敵だから秘密~」
『杜若さんにも何かあるのかっ、ミルコ、あれ使えるか?』
『……使える。起動する』
なにをするんだ、と思ったら、ミルコゲールの足のカバーが横に開き、棍棒みたいな物が突き出て来た。
え、あ、まさかっ。
そのまさかだった、棍棒を握ると、ミルコゲールは一振りする、そうするとブインムとビームで出来た刀身が飛び出した。
ビームサーベル、だとっ……。
『ミルコソードだっ、当たれば、キルコゲールでも、ただじゃあすまないぜっ!』
「この卑劣漢っ! 飛び道具に、刀剣とはっ! 無手の雄々(おお)しい我が君と比べ、なんという怯懦だ、腹を、腹を切れっ!!」
切腹の風習はパンゲリアにあるのか?
なんか別の風習を、僕が切腹と聞いているのだろうか。
そんな事は、どうでも良いが、困ったぞ。
「私の出番のようねっ」
「いやそれはっ」
オッドちゃんに出てもらうか、だがそれは、ロボット乗りとしての誇りが。
だからといって、このまま闘うには、近くに寄って、ミルコビームをかいくぐり、ミルコソードの一撃を避けながら、懐に入る。
それはなんて無理ゲーなんだ。
「げんきくん、その、がんばってっ」
「よし、出来る所まで……」
ぶしゅうぅ、ゴアン。
な、なぜハッチが開いた。
「くくく大魔導師を舐めないことね、ハッチを開くボタンはあなたたちの手元を見て覚えたわっ!!」
あ、いかん、オッドちゃんがハッチを開けたのかっ!
オッドちゃんはひらりと、ハッチから飛び出し、フタの上に乗り、そのまま躊躇なく外に飛び降りた。
「あはははははっ、棍棒の時間よっ!!」
『ばっ、お前、なんなのっ?!』
なんだか、たとえるならば、飼っていた猫が、新聞の勧誘の人が開けた玄関のドアからまっしぐらに走って逃げた感がある。
「ハッチ閉鎖、ショックアブソノーバー魔法全開するよっ! げんきくん、オッドちゃんを【応援】していいかな?」
「しかたがないね、【応援】してあげて」
あやめちゃんはハッチをしめると、拡声ボタンを押す。
『オッドちゃん、がんばってー』
オッドちゃんはニッカリ笑ってサムズアップ。
彼女は、こきこきと肩を鳴らす動きをして、キルコゲールを持ち上げ、ミルコゲールに向けて、振り回した。
『『『は?』』』
『……は?』
「きゃーはははっ!! 砕けちりなさいっ!!」
ドガラッシャーン!!
轟音と共に、キルコゲールの肩がミルコゲールの腹部にぶち当たり火花を散らした。
相手の虚をついて、二撃、三撃と、オッドちゃんは無慈悲にキルコゲールをふり回し、ミルコゲールを殴っていく。
「えーと、機体の損害、軽微。向こうもそうみたいだよ」
「まあ、同じ材質で殴ってるわけだから、それはそうだろうね」
む? 同じ材質? では、ミスリルナックルを打撃と同時にあてたらどうだろうか。
ふり回されつつ、ちょっと狙って、キルコゲールの腕を動かして当ててみる。
ゴワッシャーン!
「あ、ちょっとミルコゲールに傷が入ったような気がするよっ!」
「よし、これだっ!」
『くそおっ! ふざけんなっ!」
ミルコゲールがミルコソードをこちらに向かってふってくる。
「くくく、無駄よっ!」
オッドちゃんが、キルコゲールをふり回しながら、片手を出してバリアを展開した。
上手いっ!
ミルコソードはオッドバリアによってはじき返されて、その隙を棍棒キルコゲールが狙う。
その上で、僕はキルコゲールの手をちょんと伸ばし、ミスリルナックルを当てる。
ドグワァァァム!!
『くそっ! ちくしょう、なんだそのせこい攻撃はっ!! 真面目にやれっ!!』
『……ああああああっ、ありえない、ありえないっ……』
『ミルコっち、どうしたの? 具合悪いの?』
『……あんなの、物理的にありえないんだっ!! ……ふざけんなちくしょうっ!! ……キイイイイッ』
なんか、ミルコゲールの中で、オートマタのミルコちゃんが暴れはじめた。
『……私の目の前でっ!! ……魔導科学的じゃないものをっ!! ……見せるんじゃあないっ!!」
『うわ、ミルコなにをする、やめろやめろっ!!』
『落ち着いてよ、ミルコっちっ!!』
『……くぁwせdrftgyふじこlp!!』
なんだか、ミルコちゃんが操作パネルをぶっ壊して、操縦席で飛び上がり殴り蹴飛ばし大暴れしている画像がウインドウに映ってる。
あ、川島君が殴られた。
ミルコゲールが動きを止めている間も、オッドちゃんはお構いなしに、ガンガンとキルコゲールを振り上げふり下ろし、ドカドカぶち当てている。
『くそっ、ちきしょう、飛高、おぼえていろ、退散だっ!!』
『みんなまたね~』
『……うがー、みんな死ねーっ!!』
『きょ、今日の所は勘弁してあげるわっ! やめなさい、ミルコっ!!』
ミルコゲールは宙に飛び上がると、そのままジェットに変形して北の方に飛び去って行った。
ふう、同型機だと決め手が無いから、キルコゲールに不利だなあ。
ふと下を見ると、オッドちゃんがかっこいいポーズを取っていた。
「私の、勝ちよ!!」
真似すんなし。
【次回予告】
ついに、もう少しで独立都市メイリンに着く。
そんな時、げんきとオッドちゃんは口論をしてしまう。
なんとかしろげんき! 車内の空気が最悪だ。
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第58話
独立都市メイリン着




