56. 同型機、その名はミルコゲール
川島君がめくばせをして、パネルを叩くので、感覚球からヘルプ説明を引くと、秘匿回線のボタンであった。
僕はヘッドセット無いから、面倒なんだよなあ。
とはいえ、女子に秘匿したいとはなんだろう。
僕は操作パネルにかがみ込んで、秘匿回線をつないだ。
『(飛高君は、杜若さんと、つきあってるのかいっ)』
どうでも良い事だった。
『(むずかしい所、告白して初デート中ではあるよ)』
『(なんだ、良いなあ、ほぼお付き合いが確定じゃないか)』
『(そっちはどうなの、美浜さんとはどういう関係?)』
『(いや、近くに居たってだけで一緒に連れてこられただけだよ、結構可愛いくて良い人みたいだけどね)』
『(魔王軍に可愛い子とか居ないの? チャリアさんとか綺麗じゃん)』
『(チャリアさんはなあ、なんか考える事が斜め下にすっとんでてさ。魔導師って全般的に社交性が駄目みたいだよ)』
『(ああ、魔導師駄目なのかあ、うちのも、ひどいからなあ)』
『(ああ、聞いた聞いた、大陸的極悪人だって?)』
『(噂ほどはひどくはないよ、近所の駄目なお姉さんっぽいね)』
『(そうなのか、実は、異世界に来ないかって誘われた時、俺の理想の女子と会えるかと思って来たんだけど、魔王軍だと居ないっぽいんだよ)』
『(どんなの、どんなの? 川島くんの理想の女の子って、興味あるなあ)』
『(え、恥ずかしいんだけど、その、女騎士っていうんですか、その、くっ殺せとかいう感じの)』
えーと、約一名、僕の知り合いでいますね。
『(諸王国連邦だといるんじゃ無いかな、げんき君は知らない? 一目だけでも見たいんだ)』
『(え、あ、うん……)』
『(白銀の甲冑を着て、髪は輝くような銀髪で、背中には大剣、勝ち気な子なんだけど、僕がロボで命を救った事で、べたぼれになったりしてねっ)』
ちょ、おま、川島、やめろ、なんだそのピンポイント爆撃みたいな精度のどんぴしゃな理想は!
『(それで、彼女の実家のお城に行くと、結婚をかけて決闘だとか、兄弟に言われてさ、でも僕は勇気を持って打ち破って、彼女への愛を勝ち取るんだよ、でも、魔王軍の理想を打ち立てるまでは恋とか無いとか僕は言うんだけど、彼女は僕の旅に無理矢理ついてきてとか、こう、妄想が止まらないんだ。ねえ飛高君、そういう子はいないかな)』
ちょっとまて、これは何のフラグだ、そういやパットはどうしたのだ……。
「我が君ーっ!! こんな所に、ややっ! なんですか、その禍々(まがまが)しい赤ゴーレムはっ!!」
ああ、なんか、噂をすれば影と、ライサンダーに乗ったパットが、森の小道から、倒壊した崖の所まで来て、大声を出している。
『なんだっ!! 飛高君っ!! あの姫騎士はーっ!! どういう関係なのっ!!』
「え、僕の仲間……」
『仲間っ、え? なんで俺の理想の嫁が、え? 飛高君の仲間? どういうことっ!』
「誰が、理想の嫁だっ!! 貴様は何を言っている、赤ゴーレム!! 私は勇者ヒダカ・ゲンキの婚約者だっ!!」
え、なんで、声が外に通ってるの?
『あ、川島っち、それ拡声ボタンだよ、駄目だよ~』
『え、あっ、というかどういうことだっ! 飛高君っ!! こ、婚約者ってなんだよっ、あ、あんたは、杜若さんと付き合ってるんじゃないのかっ!!』
「馬鹿め、赤ゴーレムの中のたわけめ、聞かせてやる、私はゲンキ殿の正妻!! アヤメとオッドは愛人だっ!!」
『ちょ、おまっ、ハーレム? ハーレムパーティなの? 俺がチャリアとか、美浜さんとかに、うんざりさせられている間に、勇者さまは、ぱこってぱこってぱこりまくりの、つやつや桃色生活なのっ!! どういうことっ?』
「ゲンキの愛人でーす、てへへっ」
うるさい、だまってなさい、オッドちゃんっ!!
ずっと黙ってるくせに、いらない時にいらない事ばっか言ってるんじゃないですよっ!
『ダイサク、あんた、うんざりってなによっ』
『えー、川島っち、そんな目で見てたの、あたしは檄オコプンプン丸だよ~』
「いや、川島君、それにはいろいろ事情があったんだよ、パットの弟さんからの婚約解消をかけて決闘したり」
あ、だめ、あやめちゃん。
そのエピソードは逆に川島を激高させるだけだよ。
『なんだとーっ!! なんてうらやまけしからんっ!! ちきしょうちきしょうっ!!』
川島は、血の涙を出しそうな顔をして、絶叫した。
う、うらやましいかな?
「私とゲンキ殿の間には固い絆があるんだっ!! お、乙女の柔肌を見られた事もあるしっ、そのっ、一緒の風呂に入った事もあるんだぞっ! どうだっ、まいったかっ!」
「私も一緒にお風呂に入ったわよ、もうゲンキの目つきがいやらしくって、本当に困っちゃったわ」
『なんだって、混浴イベントもっ! おまえ、飛高お前って奴はっ! か、杜若さんは混浴なんかしてないよねっ』
「え、あー、その、ちょ、ちょっとね」
『うひゃあ、あやめっち大胆っ! 聖堂都市、聖堂都市の温泉っ? いいなあいいなあっ!』
『き、君は、こっちに来て、まだ五日しか経ってないだろうっ!! なんで知り合う奴をみんなコマしてるんだ、たらし、たらしなのかっ! 君はっ!!』
そう考えると、この五日間は盛り沢山のイベント大連チャンだったなあ。
こんなのぜったいおかしいよ。
『そんなにモテる感じじゃないのにねえ、ヒダカ氏、やっぱ、心配りとか優しさとかが、すごいんでしょうね、ちょっと興味がでてきたわね』
『川島っちは、ちょっと一人よがりな所あるしね。うんざりさせられたとか言っちゃう人だし~。げんきっちは、なんかほんわかして良いねえ、タイプかもしれないなあ』
「げんきくんはね、やさしくて、人の事をよく考えてくれるんだよ、でね、いざ闘うと格好いいし、強いし、凄いんだよっ」
「姿は冴えないけど、わりと、下僕としては、気が利く所はあるわね、でも、私の物だから手をださないでね」
「げんき君の魅力は、万人に通じる、素晴らしい物だ、敵である僕にまで手を伸ばす愛、あれこそ、英雄の証と僕は思う」
うおおい、バーグさん、ここぞとばかり立ち上がって熱弁をするなよ。はずかしい。
「私が、一番なんだからな、正妻なんだからなっ! 私が一番ゲンキ殿を愛してるんだっ!! 早く愛を交わして子宝をさずかって、一緒に領地を経営して、末永く幸せに暮らすんだっ!」
ウインドウに映る川島君の顔は、鬼、まさに鬼の顔に変形していた。
赤く変色し、憎しみのこもった目で僕をにらみつけている。
アイエエエ。コワイ!
「そんなことはないんだよー、みんなおおげさだよう、おちついてくれよう、川島くーん」
『うわ、超むかつくっ、くそーっ、なんてやつだっ! お前なんかもう、飛高でいいっ!! お前は敵だ、俺の敵だっ!! これは俺の私怨とか、うらやましくて身がばらばらになりそうだからとか、そういう私的な恨みじゃないっ!! 飛高はパンゲリア大陸全土に、悲惨と悲しみをまき散らす大悪人だからだっ!! リア充爆発しろっ!! ハーレムは俺が作りたかったので、お前は作るんじゃ無いっ!! お前はお前はお前はっ!! 敵だ、敵だ、敵だっ!!』
「ちょ、おま、川島君、何する気だ?」
『知れたことっ! ミルコゲールでお前を懲らしめるっ!! これは正義の弾丸だっ!! お、お前を懲らしめて、あの女騎士さんの洗脳を解く、絶対に、解いて、俺は、彼女と、彼女を俺はーっ!!』
「ふざけるなーっ!! 私の体は我が君ゲンキ殿の物、貴様なぞに指一本触れさせないぞっ!!」
『え? 川島っち、ホントにやるの、あっちがいいものッぽいよ?』
『ここはバーグ拾って逃げるべき? ゲンキは強そうよ?』
『お”ま”え”た”ち”ま”でえええっ!! ぼええええっ!』
泣いた、それは泣き声!
川島は味方にまで行動を止められて、声を出して男泣きだっ!
『……拡声のスイッチは、切るべき』
あ、オートマタのミルコちゃんが、拡声スイッチ切ったようだ。
僕も、パット達に噴煙が掛からない位置まで移動して、バーニアを噴かせて崖を飛び上がる。
「赤ゴーレムと闘うのですねっ! 我が君!」
誰のせいだと思っているのだ、このポンコツ令嬢はっ。
なぐりたい、この笑顔。
リターンズ。
【次回予告】
同型機の戦いは、なかなか決め手が見つからない。
武装の揃ったミルコゲールの猛襲に打つ手がないげんき。
そのとき、あのお方が声を上げる!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第57話
棍棒の時間よっ




