55. 水中戦の決着、そして……。
メガトンゴーレムはあと一機だ。
よし、一機目が爆発したあたりに誘いこみ、ミスリルナックルを探しながら闘おう。
三機と一機では当然の事だが、圧迫感がぜんぜん違う。
避ける避ける、探す探す。
あ、岩の影にあった。
よしミスリルナックルをゲット、あとはお前が付けている奴だけだ。
殴ってきた動きの下をかいくぐって、足にタックル。水中でひっくり返して、腕を取って、ふり回す。
おお、すげえ、キルコゲールのパワー!
ゴーレムは水中から水面を割って宙を飛び、天井が崩落して空が見える辺りまで飛んで行く。
水中モーター全開で追撃する、落下地点で、つかまえて、パイルドライバー。
パイルドライバーというのは、相手を逆さまにつかまえて抱きとめ、太ももの間から出た敵の頭を地面に、くい打ちのように叩きつける技だ。
本当に死亡者も出た荒技だから、よい子のみんなは真似しちゃだめだぞ。
ゴッシン!
お、ここらへんは結構水深があさい。
キルコゲールの腰から上が水面に出るな。
そのまま、後ろに回り、左腕で、敵の腕を固め、右手で頭部を回して固める。
キルコゲールの両手をクラッチすれば、これが、チキンウイングフェイスロックだっ!!
「くそうっ、やめろっ、やめてくださいっ、おねがいですから、それ、四天王一人に一体の高いゴーレムなんですよ。他の四天王のを、土下座して、かりて来たんですっ! 壊さないでっ!」
『そんなものを、持ってくる、方が、悪いんだーっ!!』
ボキゴシャガキガキン!!
力を思い切り入れて、頭部と左肩を破壊する。
素早く、両手のミスリルナックルを回収して、離れる。
ゴーレムの全身の、ひびがビッカビッカと鈍く光り、大爆発。
浅瀬で僕は発光エフェクトとともに、かっこいいポーズをキルコゲールに取らせる。
『僕の、勝ちだっ!!』
「あああ、ひどいよ~ゲンキくん。魔王様になんといって、あやまればいいのだ。あんまりだ~」
水中に突き出した岩に、がっくりと膝をついて、バーグさんは泣いている。
しらんがな。
「あやめちゃん、ジェットパックに換装するように、キルコさんに頼んでくれる?」
「了解だよ、ジェットパック換装開始」
ジェットパックに換装したら、この地底湖から飛びだそう。
まわりを、よく見まわしたら、すごい場所だなあ。
鍾乳洞の地底湖だろうか、すごく透き通った綺麗な水で、目の無い白い魚が沢山泳いでいる。
かなりの広さがあって、奥の方は暗くなって怖いぐらいだ、なんか大型モンスターとか、龍とかが出てきそうだな。
空を見上げる、三時過ぎかな、ちょっと、空の色が変わってきた感じがする。
「げんきくん、ジェットパックに換装完了なんだよ」
「ありがとう、あやめちゃん、キルコさん」
よし、この穴蔵を出て、旅を続けよう、目的地はもうすぐ……。
なんだ、あれ?
僕たちの遙か上空、こわれた地底湖の天井から見える割れた空に、光るなにかが飛来してくる。
「あっ、あれはまさか、そんなっ!」
バーグさんが空を見上げて、焦燥感のこもった声を上げる。
『バーグの阿呆っ! なんてざまなのよっ!! バカバカッ!! あんたには、絶対、責任取ってもらうんだからねっ!』
少女の金切り声が聞こえた。
その飛来した光は、そのまま空中に停止して、がちゃんがちゃんと音を立てて巨大なロボの形に変形していく。
「上空より、所属不明機、いえ、ちがう? え? 同型機!? ゲールシリーズ五番機、ミルコゲール!?」
「なんだってっ!!」
変形が終わり、地底湖の倒壊口に立っていたのは、キルコゲールによく似たシルエットの大型ロボだった。
赤でまとめた威圧感のあるカラーリングで、古代の武者のような姿をしていた。
「なんてこと、伝説級のゲールシリーズで、この棍棒以外に動いてる物があったなんてっ!」
棍棒を呼びやめないですね、オッドちゃん。
『いいざまだね、バーグさん、大口を叩いて、それなのかいっ』
「ダイサク、それは、そのっ」
『もういいよ、あなたはひっこんでろっ』
そう言った、瞬間、ベッポゥとまぬけな音が鳴って、キルコゲールのディスプレイに、ウインドウが開いた。
そこには、一人の勝ち気そうな日本人の少年の姿が映っていた。
『キルコゲールの搭乗員、飛高げんき君、杜若あやめさん、初めまして! 僕たちは、ミルコゲール搭乗員、川島大作と……』
ベッポゥと、間抜けな音がなって、またウインドウが開く。
そこには、たれ目で人の良さそうな日本人の美少女が映っていた。
『美浜未来よっ! あっ、あやめちゃん、おひさし、運動会以来かな』
「わ、美浜さん、ど、どうして? あなたたちもパンゲリアに来たの?」
『うん、チャリアちゃんに呼ばれてきたのよ。駅前でドラゴンが暴れた直後ぐらい?』
「カワシマ・ダイサクとミハマ・ミライですって……」
そう、その名前は、オッドちゃんが本来キルコゲールに乗せるために探していた日本人の名前だ。
いきなり、美浜さんのウインドウに、黒い大きな帽子をかぶった、ローブ姿のコーヒー色の肌の美少女が、横から割り込んでくる。
耳が尖ってるから、ダークエルフなのか?
なんか、席が無いみたいで、後部二席の間の隙間にせまそうに、はさまっている。
『彼らを呼んだのは私よ! 不可触の大魔女オッドよりも凄い、大陸一の大魔導師、チャリア・チャリオッツとは私の事よっ!」
「なんですって、へたれチャリアのくせに生意気な、聞き捨てならないわねっ」
あと、キルコゲールだと、オッドちゃんが座っている席にも一人の美少女が座っているのが、川島君ウインドウにちらりと見える。
白い髪白い肌、人形のように無表情な蒼い目の女の子だ。
まさか。
あれは、僕が、夢にまで見た、管制制御用オートマタでは無いだろうなっ。
ミルコゲールの方には残っていたのかっ!
「川島君、その子、オートマタ?」
『え、あ? ミルコの事かい? オートマタだけど』
「その子、ください、同型機だから、こっちにも乗るでしょ」
『い、いやだよ、飛高くん、何言ってんだよ』
そういう川島の頭にはヘッドセットが乗っていた。
おのれっ、僕の分のヘッドセットは無かったというのにっ。
妬ましい、妬ましい、ミルコゲールの装備の充実さが妬ましい。
あと、ジェットで普通に飛べるのも妬ましい、魔力の燃費が良いのだろうか。
この前、リガン湖で見た、遠い空を南に向けて飛んで行ったUFOは彼らだったっぽい。
高空を長距離飛行できて妬ましい。
『ひ、飛高くん、なんか目が怖いよ』
「で、美浜さんは、今、魔王領に居るの? 寒い?」
『魔王領、すごく寒いよ、魔王城で凍死しかけたのよ。あやめっちは、どうなの、諸王国連邦ってどう?』
「いいところだよ~。二日目にはお城に泊まったよ。晩餐会をしてもらって、すごく料理が美味しかったんだよ」
『うわ、いいなあ、お城で晩餐会とか、超うらやましいんですけどー。魔王城は飯マズで、こまっちゃってて、自炊するかなとか、川島っちと相談してたんだ、この世界、お米とかないのかな?』
「あ、昨日まで泊まっていた聖堂都市に、和食素材なんでもあるよ。お米も、お醤油も、お味噌も。なんでも日本人の人がプランナーしてるって話で、なんでも凄く美味しいよ、凄い温泉もあるし、おすすめだよ」
『えー、マジ、それは行かなければ。ミルコゲールならジェットでぴゅーだし』
「この服も、聖堂都市で買ったんだ、ほら」
そう言って、あやめちゃんは猫耳フードローブを自慢する。
『なにそれっ、超カワイイっ! ずるいっ、私も欲しいっ! 服とかいっぱい売ってるの?』
「いやもう、なんでもあるよ、聖堂都市は観光の街だから、超おすすめだよ」
なんか女子が、すごい普通の会話で盛り上がってる。
本当にここは異世界のロボの中なのだろうか、目をつぶると、昼下がりの教室にしか思えない会話だ。
『チャリアちゃん、わたし聖堂都市行きたい、お買い物したいっ、美味しいご飯食べたい~』
『そ、それは、べつに構わないけど、その、今は、接敵中で、なんで、なごんでおしゃべりしてるのよっ』
『えー、でもチャリアちゃん凄いと思わないあのフード、猫耳だよ、超カワイイよっ』
『魔王領に獣人少ないし、魔王領だって良いコートあるでしょ、この前買ってあげたでしょ』
『えー、だって魔王領のお店のって、なんかスキー行く時みたいな、ごっついのばっかりで、色も地味だし』
『魔王領は寒いから、薄着は死ぬからっ! デザインがアレなのは、魔族の職人さんが、質実剛健を重んじるので、しかたがないのよっ!』
『美浜さん、ちょっと、関係のない会話はつつしんでくれないか』
『えーでも、川島君、せっかく異世界で同じ学校の子と会えたのにさあ』
「美浜さん、美浜さん、これこれ、秘匿通話機能、男子なんかほっといて、こっそりしゃべろう」
『あ、同型機だから、うんうん、プライベートチャットだね。しようしよう』
そうしてください。
女子は出会うと、恐るべき、いきおいで、おしゃべりモードになるのだなあ。女子あなどれん。
あと、美浜さんって、結構ギャルっぽいんだなあ、もっと地味な人かと思ってたよ。
「魔王領ってそんなに飯マズなの?」
『あ? うん、まあ、美味しくは無いなあ。……って、そういう事を言いに来たわけじゃ無いんだ、聖堂都市の食料情報はとても気になるけど、それは後の事だ』
まあそうだろう。
『俺は今、魔王軍に所属している、このミルコゲールと共に』
「なんでまた、魔王軍なんかに、悪者じゃんよ」
『失礼だけど、飛高君、君は視野が狭いと思う、魔王軍とは言うけれど、魔族の王の軍という意味で、ここは君が思ってるような悪魔の軍ではない』
「うん、まあそれは条約とかあるから、なんとなく解る」
『魔王軍の真の目的は、すべての人民の幸せだ、魔族は差別され、いわれの無い偏見の元に北に追いやられていた。そして人口が増えて、北の地が生み出す食料生産では、もう、やっていけないんだ、だから、南の地を望み、兵を挙げた、そういう事であっての侵攻であって、理由のない暴虐で邪悪な侵略戦争ではないんだよ、これは』
「あ、うん、そうかもね」
『俺は、それを聞いて、なるほどと思った。虐げられた人々が、暮らしに困って蜂起するほどなのに、南の地では、いまだに貴族制度がはびこり、一部の特権階級が、全ての富を収奪し、人民は塗炭の苦しみに喘いでいる、それが許せるのか、人間として許せないと俺は思ったんだ。だから、俺は魔王軍として、この世界に革命を起こし、人民による、人民の為の世界を作りたいと、こう思ったんだ!』
「……川島君のお父さんって、市民活動とかしてない?」
『し、してるけど、してるけどっ!! お父さんは関係無いっ! これは魔王に話を聞いて、俺が考えて、俺が結論を出した答えだっ!』
んー、パンゲリアの社会矛盾を、日本人の僕たちが気にする必要があるかなあ。
川島君は、貴族制度を批判してるけれども、ダディんちとか見ると上手く回ってるみたいだしな、ピエールの所も頑張って行くって言ってたし、それを別の世界から来た人が気に入らないから、変えるってのはどうだろう。
魔王軍は食糧難で戦争もやむなしって言うけれども、それによって、国を半分にされて住むところとか無くした共和国の人たちを、僕は聖堂都市の外の難民キャンプで見たしなあ。
悲惨な生活を何とかしたいから、余所の国を攻めて、豊かさを奪い、不幸を他人に押しつけるのはどうなのよ、とも思ったりするなあ。
なんか、川島君に激しく反論したいというよりも、なんかちょっと違うんじゃない? って感じに、もにょもにょする。
「美浜さんはどう思ってるの?」
『え、あたし? あたしに聞くの? あやめっちの彼チン』
だれが彼チンだっ!
美浜さんは、あやめちゃんとのプライベートチャットから顔を上げて、びっくりしたようにこっちを見た。
「ま、まだ、げんきくんは、仮彼氏で、その、デート継続中なんだよ」
『いいなあ、ロマンス素敵だよう、胸がきゅんきゅんするなあ。魔王軍にも格好いい人いるんだけど、普通にホモだしさあ』
ああ、その格好いいホモの人は、そこの岩の上でぐったりしてるよ。
『だから、女子の話はさあっ、激しく脱線するから、真面目な話ができなくてっ』
『え、川島っち、それを言いますか、だって、政事とか面倒じゃないですかー、でも川島っちは真面目に考えているのでー、まあ、コパイっていうの、の立場だから、良いんじゃ無いかって思いますよ、あたしはー』
『なんで、あんたたちは敵と話合ってるのよっ! ごちゃごちゃ、言ってないで、やっつけなさいよ、ダイサクっ!!』
『まてまて、チャリア、お互いの話し合いで、こう、落としどころを見つけて、話し合いで解決するのがベターなんだよ』
「それって、話し合いがこじれたら?」
『その時は武力、だな、悲しいけど』
「結局は殴り合いかあ」
『革命の為に、言葉をつくす事をおしんではいけない、だが、時に弾丸を使う事も恐れてはいけない、俺の大好きな革命家、チェ・ゲバラの言葉だ』
うぬぬ、川島君は赤い革命家のようだ。
【次回予告】
キルコゲールの同型機が魔王軍の所属になっていた。
衝撃の事実を前に、少女達はおしゃべりに興じる。
戦えげんき! 雑談は後だっ!!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第56話
同型機、その名はミルコゲール




