54. 地底湖での死闘
くっそー、よく考えてある、伊達に魔王軍四天王を名乗っていないな、ちょっとバーグさんを見なおした。
うざい糞馬鹿ホモだと思って油断したよ。
だが、僕だって、聖堂都市で魔導機に乗って、レベルは上がってるんだ。
そのレベルが何を、しめしていて、ステータスとかが上がってるかどうかは知らないけどね。
でも、最初の闘いよりも、ずっと、キルコゲールと僕の動きの差は少なくなっている。
前は全身タイツをかぶってる感じだったけど、今はもう、そう、むき出しっぽい。
まさに全裸で闘っている感じだ。
だから、僕は、負けないっ!
全裸だからっ!
丸出しなのだからっ!
古代ギリシャの漢たちが、オリンピックをフルチンで闘ったように、雄々しく僕も闘うのだ。
いわば、僕は、全裸のヘラクレス状態と言えるのだっ!
ぬおおおおおっ!
組み付いたメガトンゴーレムは、ガンガンとキルコゲールの機体を、ミスリルナックルで殴ってくる。
おおおおおっ!
感覚球に魔力を流し込み、肘打ち、からの、ハンマーパンチッ!
地底湖は結構深い、キルコゲールとゴーレムは、殴り合いながら、どんどん水中へ潜って行く。
「水深五十メートル、五十一、げんきくん、がんばれっ!」
「わかってるっ! こんのーっ!!」
膝を入れるようにして、蹴りっ!
やっと、メガトンゴーレムが離れて、湖底に着底する。
ずしんという衝撃が腰に響く。
ドンドンという振動がつたわってきて、二機のメガトンゴーレムが水中に入ってきたのを感じる。
「魔導ソナー、ピンガー行きます、三、二、一、今っ!」
カンカーンと水中に探索音が打ち込まれ、一瞬で地底湖の地形が地図ウインドウに書き込まれる。
なんとか、地上に出なくちゃ、水中で柔道技は使えない、ゲッ○ー3じゃあ無いんだから。
「苦戦してるみたいね、ゲンキ、そろそろおねえちゃんが出てあげましょうか?」
「出れないけど」
「なんでよっ」
「水の中だからハッチを開けると、みんな、おぼれちゃうんだよ」
「……」
オッドちゃんが、ぷうと膨れて、すとんと座った。
しかし、バーグさんも馬鹿だな、足場の悪い場所ならば別だけど、水中だとミスリルナックルの威力も下がってしまうし、メガトンゴーレムの動きも悪く……。
え?
僕の目に映ったのは、ものすごい勢いで、こちらに向かってくるメガトンゴーレムの姿だった。
あいつの背中にあるのは?
「キル君が、水中用魔導モーターって言ってる! 今回のメガトンゴーレムは水中戦仕様だってっ!!」
「くそっ! バーグさんめ、ぬかりなしかっ!!」
それで、ゴーレムの形が丸っこかったのかっ!!
「キルコゲールのバックパックを水中戦仕様に換装するんだってっ! 二分ほどかかるって、キル君言ってますっ!」
「あるの?」
「今のジェットパックを、マリンの水中モーターに変形にさせるんだって! それまで頑張って、げんきくんっ!」
「わかったっ! なんとかしてみる、あやめちゃんっ!」
「私、暇だわ……」
とりあえず、駄目魔導は無視の方向で。
緊張感がゆるむからね。
操縦席の後ろが、ゴトゴトいってる、内部換装もできるのかー。
水中ジェットで、メガトンゴーレムが、え、こんなにって思うほどの速度で、キルコゲールに迫り、ナックルを叩き込んでくる。
その直線的な動きを、曲線をえがくキルコゲールの手の平の動きでずらす。
目の前のゴーレムが過ぎると、すかさず次のゴーレム、そして違う方向から別のゴーレム。
【応援】の効果で、なんとか、しのいでいる。
くっ、このままではじり貧だっ!
なんとかしなくちゃ、なんとかっ。
柔道技、だが、投げは無理だ、なにかっ!
その時僕の脳裏に、なぜか突然、全裸マッチョが浮かんだ。
なんか、裸でくんぐほぐれつしているガチムチマッチョ。
それは、ギリシャのレスリングのイメージ。
――あ”ーーーー。
柔道が駄目なら、レスリングがあるじゃありませんかっ!
投げられないなら!
組んで!
関節を決めてしまえば良いんだ、これだっ!!
全裸のヘラクレスさん、僕に天啓をくれてありがとうっ!!
飛び込んで来た、メガトンゴーレムの腕を取る。
わかる、わかる、これは、僕が、ぼんぼんにかけた、アームロックだっ!
するっと複雑に腕が組み合い、極める。
そして、そして、がっ、と力を入れて!
折るっ!!
ボガキン!
鈍い音が、水中に伝わり、メガトンゴーレムの片手がぶらりと、たれ下がる。
関節が半分ちぎれて、骨にあたる鋼材も見える。
やれる!
固めて、極めて、折る!
関節技で闘うっ!
これだっ!
僕にレスリングの経験は無い。
だが、子供の頃にプロレスを見て、妹のひかりとプロレスごっこをしたことはある。
いまにして思えば、ひどいおにいちゃんで、コブラツイストとか、サソリ固めとか、四の字固めとか、ひかりにガチで掛けて、がん泣きされた時がある。
一週間ほど、口もきいて、もらえませんでしたがね。
学校柔道に【徒手格闘】で補正が入ったように、プロレスごっこにも補正が、かかるはずなのである。
食いしん坊の貿易商の人がご飯をたべまくる漫画で見ただけのアームロックがかけられたのだから、きっと大丈夫!
ゴーレムの頭部に、キルコゲールの右手を掛けて、左手でがっちりと固定する。
そのまま、体重を掛けて捻って、折るっ!
ゴワッシャン!
にぶい音が、水中を伝わり、ゴーレムの頭が反対側を向き、目の光が消える。
手を外すと、後ろに倒れるようにして、湖底に落ちていき、爆発!
まずは一機!
「水中用バックパックに換装完了だよっ! げんきくん、がんばれっ!」
「ああ、ここからは、僕の、ターンだっ!」
「意外と土壇場に強いわね、ゲンキ」
「水中モーター! 最大戦速っ!!」
ゴルムゥゥイイイイイイン!!
背後からキックされたような加速度で、水の中をキルコゲールがぶっ飛んで行くっ!
おおおおおおっ!
水中の中を三次元に機動できるるるるっ!
レバーを左に切って急旋回、ゴーレムの、後ろに、くそっ、奴も逃げる!
なんか、水中で空中戦をやってる感じになる。
さすがキルコゲール、どこでも戦える用の伝説級搭乗型ゴーレムだぜっ!
きっと、宇宙に行っても、地形対応Aなんだろう。
湖底にきらりと光る物を発見! ゴーレムのおれた腕とミスリルナックルだ。
反転して急降下、とっさにガメる。
「げんきくん、キルコの拳と、ミスリルナックルの堅さは、ほぼ同じなんだよ。そんなのどうするの?」
「高く、売れる!!」
「……さようでございましたか。げんきくん、がんばってくださいませ」
あと、なんか格好いい。
キルコゲールの右拳に装着する。
カコイイ、むふーっ。
もう一個欲しい。爆発したヤツのは壊れたかな。
鳥のように二機のメガトンゴーレムと水中で飛び回り、隙をうかがう。
お前のミスリルナックル置いてけ~。
正面衝突する感じで、接敵。
敵の拳をキルコの手の平ですかすっ。
流れるように、二の腕を取り、水中モーターの力を借りて、くるりと背後を取る。
そのまま、フルネルソンの体勢に極める。
フルネルソンってのは、羽交いじめというか、敵の両脇から手を入れて、敵の首の後ろで手を組んでホールドする技だ。
そのままの体勢で、水中モーターを全開にする。
水の中を三十メーター級のゴーレムが二機、矢のような速度で地底湖を横断していく。
速度が上がり、深度が上がってキルコゲールの頭と、メガトンゴーレムの頭が水上に出て、水しぶきが高速で後ろにふっとんでいく。
バーグさんが、あせった表情で、空中を併走して飛んでいる。
「馬鹿な、馬鹿なっ! 水中でっ! なぜ戦えるのだっ! それもジュードーの力だとでも言うのかっ!!」
『そうだっ! これが、これが、僕の、学校柔道の、力なんだっ!!』
レスリングとか入ってるけど、気にすンな、バーグさんっ。
そのまま、キルコゲールの肩を沈め、さらに速度を上げる。
地底湖の端の、大きな白い巨石に、最大戦速で、メガトンゴーレムの体をぶち当てるっ!
ドッゴワワンッ!
激しい衝撃と共に、メガトンゴーレムの両肩が破壊されて、腕がもげる、
もげた両腕を持ったまま、メガトンゴーレムの背中に蹴りを入れ、さらに巨石にぶち当て、離れる。
大きなひびが全身に走り、メガトンゴーレムは爆発した。
二機目っ!
もげた腕から、ミスリルナックルを二つゲット!
左手にも装着、余ったナックルは、キルコゲールの腰の、なんかビームガンか何かをホールドしてたらしい所に引っかける。
「み、見くびっていた、ジュードー、なんと恐ろしい武道っ!」
よし、残りはあと一機だっ!
ミスリルナックルもあと二つ、これは、高価で売れまっせーっ!!
無くなったあと一個も、湖底をさらっても、探さんとあきませんなーっ!!
「ゲンキ、おにぎり余ってないかしら、おねえちゃんお腹がすいてしまったわ」
「オッドちゃん、どうぞー、二個余ってるよ」
「ありがとう、アヤメ」
コックピットに海苔の香りが、ただよう。
君たち、戦闘中ですから、もっと緊張感を持とうよっ!!
【次回予告】
関節技で、なんとか敵をしりぞける事ができた、げんき。
しかし、高空から飛来する、あの光球はなんなのか!
最大の衝撃に、気持ちで負けるな、げんきっ!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第55話
水中戦の決着、そして……。




