53. バーグ襲来
「そういや、バーグさん最近、攻めてこないね」
「聖堂都市は聖別の結界をはってあるから、不浄のバンパイヤは入れないのよ」
「ああ、それでか」
「メイリンにいく事はわかってるんだから、そろそろくるかも知れないね」
「そうだねあやめちゃん」
噂をすれば影という言葉知ってる?
話題となっていたメルヘンホモが、すかしたポーズで、キルコタンクの前をふらふら飛んでるのですよ。
『あっちいけ、ホモっ!』
「つれないね、愛しのゲンキ、ミシリアめの心ない聖別で二日も僕たちの恋は引きさかれていたというのに」
『うるさい、うせろっ!』
なぜ、キルコゲールには大砲をつんでいないんだ。
いや、大砲の類はつんでるけど、あれは最終絶滅兵器で使えない。
「魔法の遠眼鏡で、ずっと、隣の山から、聖堂都市を行く君を見ていた。聖堂ローブ姿の君が、今でも目に浮かぶ、とてもよく似合っていたよ」
『出歯亀ストーカーめっ! キモいぞっ!』
「特別な魔導機で出撃して、すばらしいジュードーで敵の隊長を激闘のすえにくだす。強く優しく美しい、ゲンキ、君は僕の理想の恋人だ」
「周囲の森に所属不明存在! 三機っ!! メガトンゴーレムだよっ!!」
「くくくっ、だが、ただ見ていただけではないよ、僕は君を手に入れる方法をずっと考えていたんだ。そして、思いついた、君のジュードーを倒す方法をねっ!!」
「くそっ! 複数でかかってくるのかっ!! チェェェンジッ、キルコホォゲェェェルッ!!」
僕はパットに合図を送って、キルコゲールの変形を始める。
パットとライサンダーはキャタピラカバーをけって、地上におりた。
パッパラ~とBGMも勇ましく、キルコゲールは人型モードになった。
「私の出番のようねっ」
「おねえちゃんの出番はもっと先さ、本当に困った時に凄い人は出るべきだよ」
「そうよね、わたしたちの尊敬するおねえちゃんは、こんな所で出てはだめなんだよ」
「そ、そう言われると、そうかもしれないわね、私はおねえちゃんだから、うふふ」
僕たちの、オッドちゃんへのおべんちゃら説得は、もう熟練の域にたっしている気がする。
オッドちゃん、すげえ嬉しそう。
ちょれえっ!
『メガトンゴーレムの拳では、キルコゲールに傷ひとつ付けられない事を忘れたかっ!』
「くくく、知っている、解って居るとも、ゲンキくんっ!! メガトンゴーレムたちよ、さあ、装着せよ、ミスリルッナッコーッ!!」
「「「ま”」」」
声を合わせてメガトンゴーレムたちは、その両拳にピカピカと光るメリケンサックを装備した。
うわ、なんか、すごく強そう!!
ふんぬーと気合いを入れて三機のメガトンゴーレムを見つめる。
この前来たゴーレムに比べて、なんか丸っこい、投げ技の威力をよわめるためか?
くそっ、柔道の弱点を的確についてきたなっ。
「ははは、ゲンキくんっ、君のジュードーの第一の弱点、それは、組み合って一対一でしか本領を発揮しない武道だということだっ!! あきらめて降参したまえ、他の三人のビッチ共は殺すが、げんきくんだけは、命を助けてあげなくもないんだよ。もちろん僕の愛を受け止めてくれて、永遠に僕と愛を交わすという条件付きだが。んん、げんきくんがそれはちょっと、と抵抗があるのならば、少しは譲歩しても良いよ、時々の一緒の旅行とかね。それから、たまに一人になりたいこともあるだろうから、たまにだったら一人で出かけてもいいだろう、そんな時、僕は一人さびしく、料理とか作って待っててもいいし、どうだろう」
「こじらせた乙女みたいで、超うぜえっ」
「乙女とか言われたっ! ひどいよげんきくん、僕は本気なんだよ、このままじゃ、怪我したり、死んだりしちゃうかもしれないよ、あぶないよ。僕は、そんな危険にげんきくんを巻き込むのは本当は嫌なんだけど、これも仕事だし、上手く行けば、げんきくんが僕の物になるし、ちょっと頑張っちゃたんだけど、実際に現場に出てきたら、ちょっと危ないかなって、生来の心配性の部分が出ちゃって、ねえ、やっぱり降参してくださいよ」
もうぺらぺらぺらぺら、うるさいな、この無駄なイケメンボイスホモはっ。
柔道の弱点は、多人数戦の事をあまり考えて無い所だ。それはバーグさんの言うとおりだ。
三機はまずい。
一機にに組み付いて、二機目の方に投げるという手はあるが、三機目に確実に後ろを取られる。
剣を持つ剣術でさえ、多人数と闘うには、恐ろしいまでの技術がいる。
組み付く必要がある柔道では、三人と戦うのは、相手が、よほどのでくの坊でないかぎり不可能に近い。
しかも、メガトンゴーレムはゴーレムのくせに動きが良い。
なんか、ふわっと動いて避けて、キリッと殴ってくる。
「やれやれ、やっぱり闘わなきゃならないのだね。げんきくんは悪い子だ、だったら、バンパイアの月にかわっておしおきだよっ!」
バーグさんは、昇りつつある、小さな赤い月をバックに、珍妙なポーズを取った。
「ゲンキ、パンゲリアの小さな赤い月は、別名バンパイアの月といって、不吉の象徴とされているのよ」
「くわしい説明とかいらないからっ!」
三機、三機のメガトンゴーレムをさばくには、
一つ、絶対に囲まれない。
一つ、動き続ける。
一つ、背負い系の技は使わず、足払い系で、まず、一機をつぶす。
これしか、無いっ。
僕は、キルコゲールをすり足で下がらせる、街道をはみ出し、森へ下がっていく。
「後退しながら闘う、あやめちゃん、後方の管制をおねがいっ!」
「わかったよ、げんきくん、がんばれ~」
【応援】が掛かり、目の前がクリアになる。
三機のメガトンゴーレムは、ミスリルナックルをガチガチ打ち付けながら、僕を包囲するように寄ってくる。
「後方に大きな木は無いんだよ、下がって大丈夫」
「了解っ」
あやめちゃんの席に、後方の画像ウインドウと、地形図ウインドウが開いている。
一機のメガトンゴーレムが拳をふり上げ、突っ込んでくる。
ふり上げた拳は見せ拳だ、本命は、左の中段突き!
右の大ぶりをかわし、左の錐のように、するどい中段突きを手を添えるようにして、受け流し、体勢を崩す。
くっ、投げに入りたい所だけど、別の一機が背後に回るように動いてる。
フェイントに連携って、どんだけ高度なゴーレムなんだよ。
魔法で出来た一種のプログラムで動いてるんだろ、ゴーレムって。
「はっはっは、君を倒すために、魔導技術将軍チャリア・チャリオッツに土下座する勢いでたのみこんで、格闘戦用に特殊チューンしてもらった、特製メガトンゴーレムだ、この前のようにはいかないのだよっ!」
「くっそ、良い腕してんな、そのチャリオって奴っ!」
「ふふふ、女の身ながら、魔王軍で、チャリアに敵う魔導の使い手はいないっ、恐れおののけ、ゲンキ君!」
「チャリアは、まだ四天王にいるのね、あれよ、コミュ障って奴よ、暗いのよ」
オッドちゃん、あなたが言いますか。
この世界の魔導師は、みんなコミュ障の呪い受けてるんじゃないだろうねっ。
メガトンゴーレムの猛攻を、受け流し受け流ししながら、僕は森の中へ、木々を倒しながら後退し続ける。
「あやめちゃん、袋小路みたいな地形は無い? 崖の突端でも良い、一対一になりたい」
「えーと、えーと、遠いよっ! だいぶ時間がかかるよっ」
くそっ、隙を見つけて潰すしかないかっ!
ふと、バーグさんを拡大表示した、Liveの文字が上の方に付いたウインドウが目にとまる。
笑ってる?
「そう、そちらに逃げると思いましたよ、げんきくん」
罠っ!?
わははははという高笑いと共に、バーグさんが片手をあげた。
「ん、設置魔方陣ね。罠だわ」
周りの五カ所で、ライトパープルの魔方陣が光り出し、五芒星を描いてキルコゲールを囲んだ。
メガトンゴーレムごと、なにか大規模な魔法で巻き込むのかっ!!
バーグさんが手を振り下ろすと、魔方陣が次々に爆発した。爆炎で森が赤く染まる。
キルコゲールの足下の地面に凄まじい地割れが走り、押し上げるようなゆれを感じた時、僕たちは地中に落下していた。
「あーはっはっはっはっは、そして、ジュードーのもう一つの弱点です。その武道は地盤がゆるい場所では本来の力を発揮できません。たとえば、地底湖の中とかっ!!」
「ブースター全開っ!! 逃げないとっ!」
「直上から、メガトンゴーレムだよっ!! 接触!! 今っ!! げんきくんがんばれだよっ!!」
【応援】の効果が掛かると同時に、上から飛び降りてきたメガトンゴーレムがキルコゲールにしがみつき、僕らは水柱を上げて水中に没した。
【次回予告】
水中では柔道が使えない、ゲンキ最大の危機に、全裸のヘラクレスが降臨するっ!
水中でも戦え、キルコゲール! ホモに負けるなっ!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第54話
地底湖での死闘




