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52.  ルダン村にて

 ゴトゴトゴトと九十九折つづらおりをクリア。

 ルベル峠はここから少し上がった所が最高標高ひょうこう、高さは海抜かいばつ二千三百mぐらいだそうだ。(キルコマップ調べ)

 頂上には馬車だまりになってる展望台みたいな所があったのだけど、休憩はルダン村でする事にしたので華麗かれいにスルー。

 峠の頂上をこえると、道はゆるやかに下りになっていく。

 途中細い分かれ道があって、道標どうひょうがあった。

 カイルベル山の中腹にある銅鉱山に向かう道だそうだ。


 曲がり曲がり、反曲がり反曲がり、と山道はくねくねと蛇行だこうしながら高度を少しずつ落としていく。


「ゲンキ、あそこの遠くに見えるのが独立都市メイリンよ」

「え、マジマジ?」


 オッドちゃんが指さす方、遠くに都市の姿が見えた。

 キルコの中の人が、気をきかせてくれて望遠で拡大ウインドウを開いてくれた。

 ふおおお、あれが目的地メイリン。

 亜人共和国と、諸王国連邦と、獣人連合国の三つの国に国境を、せっしている場所で、独立を保つ都市。メイリン。

 遠く、空気の動きでゆらゆら、ゆれるその姿は、なにやら不思議の街のような雰囲気を僕に伝えてくる。

 なんだ、あの高い塔。

 市街がごちゃごちゃしてるな。

 城壁も高く、城壁の外にも町が広がってるようだ。


「あそこが、転移の球を直してくれる人がいるメイリンなんだね、」

「あっ、そうだ、日本に再転移した時、時間はどうなるの? ここですごした時間がそのまま向こうでもすぎてるの? それとも、出発した時間に帰れるの?」

「どっちでもできるわよ、ここの時間を経過けいかした時空に、うつる方が魔力が少なくてすむけど、ドラゴンをやっつけた時間にも帰れるわよ」

「もっと、過去にもいけるの?」

「それは無理ね、私や、ゲンキや、アヤメが観測かんそくしちゃってきざんでしまったから、出会った時点以前には戻れないわ」

「ん? じゃあ、パットが転移魔法を使ったら、あの時点よりも過去に行けるの」

「行けるわ、パットはまだきざんでないから」

「じゃあ、僕がなんか伝言をパットにたのんで、過去の僕に手紙で送るとかできるの?」


 靴下がそろってない事に気を付けろとか。


「それはできないわ、ゲンキの手紙にも、きざまれるから」

きざまれてるって、何が?」

存在律そんざいりつというか、うーん、実在証明みたいな、そんな物が、魂とか物質とかの本質にきざまれるのよ」

「うーん、わからん」


 解らないけど、なんかの仕組みでタイムパラドクスが起こらないようになってるのかな。


「たとえば、こっちの世界で五年とか暮らしちゃって、僕が大人になったとして、出発点に帰った時はどうなるの?」

「出発点に戻ったら五年分若返るわよ、そのまま転移なら向こうでも五年後よ」

「記憶は?」

「記憶は魂にきざまれるから大丈夫。魔法の品も変質へんしつはしないみたいよ、棍棒がロボになったし」

「魔法袋とか無限財布とか、向こうで使えるの?」

「使えると思うわよ」


 うおお、これは、帰ったあとのキャンプとか行楽に、魔法袋が大活躍しそうだよっ!

 テントや寝袋、クーラーボックスとか、お重箱じゅうばこのお弁当とかを入れ放題で、重さはウエストバックのままだ。

 なんかテンションが上がってきましたーっ!


「たとえばわたしが五十年ここでくらして、おばあさんになって、日本に帰るとすると」

「若返るわね、心はババアなのに、体はピチピチのあやめよ」

「で、その後、日本で五十年たってから、パンゲリアにまた来ると、若返るの? 二つの世界を交互こうごに行き来すれば不老不死が成功?」

「パンゲリアに再び来たら若返らなくて、百歳のオバアに進むわね。その時空柱じくうちゅうの中の時間は固定値で、きざまれて無かった時点までは戻る事ができるってだけなの、パンゲリアの時空柱じくうちゅうに戻れば、固定の時間が加算かさんされてしまうわ」

「うむ、なんだか複雑でちっともわからん」

「時空間理論はむずかしいのよ、現象から理論を引っ張り出している仮説にすぎないから、実際にこれが本当なのかはわからないの、実証実験もむずかしいし。アヤメが言った事を考えて、実際に実験した魔術師がいて、巻き戻りと、加算かさんが起こったので、結局、固定値があるんじゃないかって話になったの」

「うまい話は無いと言う事だね」

「ま、まあそうね」


 などと喋っているうちに、ルダン村に到着とうちゃく

 お昼休憩である。

 ルダン村は典型的な宿場村で、門は無く、中央に街道が通り、左右に店屋や宿屋が並ぶ。

 雑貨屋には、特産の銅で作られた食器などがならび、珍しい鉱石や水晶球なんかも売っていた。

 宿屋さんのオープンテラスでお茶を頼み、宿のおばさんに、お弁当を食べても良いのかと聞くと、ええよ、と愛想良く答えてくれた。

 ルベル峠は結構な難所なんしょなんで、徒歩の旅の人は大変だろうなあ、とか思いつつ、みんなでパクパクとおにぎりを食べる。

 出てきたお茶は、高地産のルベル茶という物らしく、漢方薬みたいな匂いがして、ちょっと甘い。

 甘草的な何かかな。


 冒険者ギルドは、田舎の村の典型で、総合村役場にあった。

 酒場と宿屋と役場の複合的な建屋たてやであった。

 お約束みたいなスイングドアを開けて入っても、誰も居ない。

 まあお昼だしね。

 ギルド職員らしい中年の人に、ワイバーンの出現を告げると、おどろいて顔色を変えた。


「すぐにパトロールを出さねばなりません。下の国境事務所にも誰か行ってますか」

「下りのほろ馬車の人に通報を頼みましたよ」

「それはお手数をおかけしました。ワイバーンの生息せいそく地はもう少し北の方で、こちらには滅多めったにでないのですが、それが三匹とは……。何かの前兆ぜんちょうでしょうかね……」

「我らが倒したワイバーンの死骸しがいと魔石を買い取る事は可能か?」


 パットが話をつなぐと、ギルド職員さんはうなずいた。


拝見はいけんいたします、死骸はあの大きな車の中ですか?」

「私が、空間魔法に入れてるわよ」

「あ、さようでございますか、ではこちらへ」


 職員さんは隣のカウンターへ移動した。

 買い取りカウンターだね。

 あやめちゃんは、興味深そうに、冒険依頼メモの壁を見ている。


 オッドちゃんが、どさどさっとワイバーンの死体を謎空間から出すと、職員さんは一瞬ぎょっとしたようだが、すぐに査定さていを始めた。

 ついでに僕の袋から色の魔石を二つ、カウンターに足した。


「このワイバーン二匹のポイントで、我が君とアヤメのカードをランクアップしたいのだが、可能か?」

「お二人で分けるならば、カッパーから、シルバーへの更新こうしんは可能です、四人でお分けになる場合はすこし足りませんね」

「私はポイントとかいらないわ、一番上の神銀ミスリルだし」

「私も白金プラチナに変えるまでは、だいぶかかりそうだし、かまわない、二人分で割りふってくれ」

神銀ミスリルゴールドですか、やれやれ、こんな田舎では滅多めったに見ないカードですよ」


 そう言って、職員さんは査定さてい額を用紙に書いて、パットに見せた、パットがうなずくと、お金が出てきた。

 金貨二十枚、意外ともらえるものだなあ。

 一人五枚分けだ。


「わたしはいいですよ。何もしてないし」

「駄目だ、アヤメ、そんな事を言うとオッドも何にもしてない。パーティでかせいだお金は頭割りって決まってるんだ」

「分け前でもめるのよねえ。パーティ解散のほとんどが分け前トラブルなのよ」

「そうなんですか、じゃあ」


 みんなで五枚ずつ、お揃いの無限財布に入れた。


 ギルドカードを銀に更新してもらい、ワイバーン分の点数判子はんこを押して貰った。新しいランクのカードの時は、ポイント分の判子はんこを転載するそうな。

 不安だったけど、職業らんの柔道家も、レベルも、スキルも、元と同じように記載きさいされていた。


「この数字と、なんかの言葉は、たまに書いてある人がいますね。縁起物と言われていますよ」


 ここでもレベルとスキルは縁起物あつかいかよっ!


「パーティ内ならポイントの融通ゆうずうとかしていいの?」

「問題はありません、というか、そうで無いと貴族の大半はカッパーカードしか取れないですよ」

「あ、貴族は人をやとってポイント稼ぎするんだ」

「ええ、将軍位ぐらいの軍人でも、自身の戦闘能力は低い方もおりますので、手下のポイントを融通ゆうずうするのは普通の事です」


 ああ、そりゃ自力撃破げきはのポイントだけだと、知将ちしょうの人は上位のカード取りにくいか。

 なるほどね。


 とりあえず、ルダン村でやることは終わったので、キルコタンクに乗り込んで、発進。


 ゴトゴトゴト。


 どんどん山道を下っていく。

 外気温がだんだん上がっていく。

 後ろのパットも快適かいてきそうだ。


「メイリンにはどれくらいでつきそう?」

「うーん、この速度ならば、夜十時って所かな、夜なんで街には入れないけど、どうしよう、げんきくん」

「夜間は通行止めなの?」

「通行止めというよりも、通関業務つうかんぎょうむは朝から夕方までって事ね」

「あ、独立都市だから、別の国なんだね」

「そう、三つの国の境界線きょうかいせんにある都市だから、基本的には入って来た門でしか出れないのよ。他の門を使う時は通関つうかん手続きを一から始めないといけないの」

「めんどうだね」

「そういう立地の都市国家だから」

「聖堂都市ぐらいの大きさなのに、どうやって独立してるんだろう」

「都市の中にダンジョンがあるのよ、というか、ダンジョンがあったから人が集まって村になり街になり、都市国家になったところよ」

「そんなにダンジョンは、もうかるんだ」

「魔石とかアイテムとかを産出さんしゅつするから、冒険者もいっぱいやってきて、冒険者の為のサービス業がおこって、繁栄はんえいしてるわね」


 一攫千金いっかくせんきんねらうアウトローが、あの都市には山盛りいるのか、胸が熱くなるね。


「手前でまるなら、次のトウサ村で一泊ね。メイリンの外苑がいえんにも街があるけど、オッドちゃん、あそこには泊まれないの」

「おすすめしないわ。外はスラムだから、宿もひどいわよ。あんな所に行くなら、東門前の馬車まりで、タンクの中で寝る方がましね」

「どうしたものかな、まあ近くなってから考えよう」

【次回予告】

噂をすれば影、しばらく姿をくらましていた奴が帰ってくる!

意外にも、まともな彼の兵法が、ゲンキを苦しめる。

変形せよ、キルコゲール! ホモに負けるな!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第53話

バーグ襲来

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