49. 買い物で装備更新
買い物と貰い物は、字がよく似ているが違う。
部屋を出たところにいたサリアさんに、聖堂都市の武器屋の情報を聞くと、騎士団本部がある北側に多くあるという。
お礼を言って、みんなで、階段を降りる。
お土産コーナーを通って、聖堂宿坊から出る。
北通りの方へ向かって歩く。
ああ、こっちは魔導機整備基地がある方だな。
ぶらぶらと歩く。
たしかに、こっちの通りは、武器屋とか道具屋が多い感じだ。
「これだけ大きい街だから、転移の球とか売ってないのかな」
「どうでしょうかね、王群首都や魔導都市ならありそうですが、聖堂都市は信仰と観光の街ですから」
道を歩くと、白魔女装備のあやめちゃんは目立つらしく、あちこちで、あら、かわいい、とか、素敵だ、とか、賞賛の嵐がまきおこっていた。
その中を、あやめちゃんは、なんか「うへへい」とドヤ顔で歩むのだった。
「うむむ、私もドレスを着てくればよかったわ」
まあ、あやめちゃん以外は浴衣ローブだしね、僕を含めて。
程なくして、通りの先に、大きめの武器屋が見えてきた。
「ステイル王国では名の通った武器屋ギロンの支店ですね。領都にもあります」
「ここに入ろうか」
店に入ると、皮の匂いがした。
地球のコンビニぐらいの大きさの店舗に武器や鎧が陳列してある。
なんだろう、どこかと似ている。
似ている。
あ、スキー道具屋っぽい。
棍棒とか鈍器が無造作に下げられている。
安い剣なのだろうか、バケツの中に何本も突っ込まれている刀剣がある。
「いらっしゃいませ、何かお探しですか?」
「我が主が、皮の胴丸、金属籠手、金属グリーブを探している」
「さようでございますか……。あ、ケンリントン伯爵様のお嬢様、パトリシア様ではありませんか、いつもご贔屓にしていただいてありがとうございます」
「おや、私を知っているのか」
「はい、私はしばらく領都支店におりましたので、お嬢様には何度かご注文をいただきました。このたびは、お友達とご旅行でございますか?」
「まあ、そんな所だ、このお方は、将来、我が夫になられる大事な方でな、良い物をそろえて貰うと嬉しい」
「さようでございますか、おめでとうございます、それは気合いを入れてお見繕いさせていただきますよ」
「我が君の闘い方は、ちと特殊でな、無手にて、投げ技で闘う、ミスリルの籠手とグリーブもあるのだが、旅の普段使いで、もう少し目立たない物をあつらえたいとご希望でな」
「ふむ、たしかにミスリルの光沢は盗賊の悪心を呼びかねませんね、アマダンタイトの物ならば、見た目が地味ですが、残念ながら、今、我が店に在庫がございません。となると、銀か鋼鉄となりましょうね」
「我が君、なにかご要望は?」
「そうだね、材質は鋼鉄でかまいません。ただ、指先が出て居るとありがたいです。相手を掴む事が前提の武道なので」
「汎用の籠手で、指先を抜きますかな。剣を使うお客様でも、感触を保ちたいので指を抜く処理をする事は良くあります」
汎用の籠手 を出して貰った。
うわ、結構な値段がするな。
良い感じの籠手 があったのだけど、左右一揃いで五万ケルとかする。
胴丸、グリーブとあわせて貰い、セット割引で十五万ケルだ。
別の街でビアトーン家から貰った不要な武具類を売っちゃえば、おつりはくるだろうけど、高いなあ。
別の机では、オッドちゃんがあやめちゃんの装備を頼んでいた。
リクエストは、地味だけど防御力がそこそこある魔法使い系のローブだそうだ。
まあ良いや、ダディに好きな物を買いなさいって貰ったお金だから、良いよね。
僕は店員さんに買う事を告げて、サイズを直して貰った。
汎用品だから、指先を切って繕ったり、ベルトの穴を直したりで、すぐ済んだ。
お金を払おうと、無限財布を出したら、オッドちゃんが横に並んだ。
「どうしてゲンキはお金を持ってるの、というか、そのお財布はなに?」
「え? ケンリントン伯爵に貰ったんだけど」
「わたしも貰ったんだよ」
あ、なんかオッドちゃんが膨れた。
お金を払いたかったらしい。
「な、なによ、あんたたちは私が召還した勇者なんだから、私がお金を払う権利があるのよ」
「いや、悪いし」
「おお、父上がお財布をお二人に贈ったのですか、おそろいおそろい」
そう言って、パットが、僕たちと同じデザインの無限財布を懐から出すと、オッドちゃんが、ガーンとショックを受けた顔をした。
「な、なによ、なによっ、私だけ、仲間はずれみたいじゃないのっ!」
「いやその、そんなに気にすることないと思うのだけど」
「とりあえず、ここは私が払うわ。で、そのお財布、この街にも売ってるわよね」
「え、ああ、まあ、メルメノの無限財布だから、ここにもあるかな?」
「ええ、メルメノの支店は東通りにございます」
「オッドちゃん、悪いから良いよ」
「私が払いたいの、払うのっ!!」
わあ、これはオッドちゃんの言い張って譲らないフラグだ。
しょうがないなあ。
僕はあやめちゃんと目を合わせて、苦笑いを交わした。
「じゃあおねがいします、おねえちゃん」
「ありがとう、オッドおねえちゃん」
「ありがとう、助かるよ」
ふふんと笑ったオッドちゃんは無限財布から、金貨をジャラジャラ出して、僕たち二人の装備のお金を払った。
そして、僕らを引っ張るように、東通りの高級バック専門店メルメノ聖堂都市支店に向かった。
メルメノのお店に、同じデザインの財布がなかったらやだなあ、と思っていたのだが、定番商品だったらしく、ウインドウに飾られてあった。
二十センチぐらいの大きさのお財布で腰に付ける組紐が付いている。本体に綺麗な色のラインが側面に入った、ちょっとオシャレな感じのお財布だ
ちなみに、僕の財布が青のライン、あやめちゃんがピンクのライン、パットが黄色のライン、オッドちゃんが、いま選んだのが赤のラインだった。あとは緑が居れば五人揃うな。
お値段は百三十万ケル。
高いよっ。
オッドちゃんは白金貨十三枚を、ポンと出してお財布を買い、腰のサッシュベルトに着けて満面の笑みを見せた。
「だいたい、あなたたちはお金の心配とかしちゃ駄目なのよ。私がおねえちゃんなんだから、全部出してあげるんだからねっ」
はいはい。
解りましたから、店舗の中で、旧無限財布から、ジャラジャラ手づかみで金貨、銀貨、白金貨をつかみ出して、新しい財布に入れるのはやめようよ。
というか、あなたはお金を幾ら持ってるんですか。いまちらっと何枚か見えた、赤っぽい金色のは赤龍金貨ですか?
「沢山、お金を持ってるなあ、オッドは」
「昔、ダンジョンの宝物庫を掘り当てた事があるのよ。お金ならもってるのよっ、おーほっほっほっほっ」
高笑いすんなし。
とりあえず仲間の証を手に入れて、オッドちゃんも、ご満悦になったので、食料品屋でいろいろ買い込む。
お醤油を二本、お米を十キロぐらい? 飯盒や鍋も買わないとね。
店先で買った食料品を買って、ひょいひょい魔法袋に放り込んでたら、店のおばちゃんに注意された。
外からは解らないように魔法袋は地味な外見になっているので、人の居ない所で入れるもんだよ、と言われた。
泥棒に目を付けられてしまうらしい。
お礼を言うと、店の奥で入れなよ、と奥の物陰に入れてくれた。
おばちゃんありがとう。
味噌はどれくらいいるかな、出汁とかいるんだっけ。
味噌と昆布と鰹節と鰹節削りを買った。
ひょいひょい入るから問題無し。
魔法袋の中で、ごちゃごちゃにならないのがすごいな、武具に味噌とかかぶったら台無しだもんな。
お鍋、包丁、箸とかも買っていれる。
お金を払おうとすると、オッドちゃんがささっと寄ってきて、おばちゃんにお金を押しつけた。
払わせてよ。もう。
「僕が、払うっ!」
「駄目よ!」
しょんぼり。
お買い物の後は、宿坊二階の食堂へ行って、晩ご飯、いつもながら、ここの食堂は和食風で美味い。
ああ、今日でここのご飯も終わりか。
まあ、自炊でご飯食べられるようになったから良しとしようか。
まだ異世界に来て、そんなでも無いから、和食に飢えてる訳でないし。
ご飯の後は、また大沐浴場へ。
こんどこそ、パットかあやめちゃんとの混浴イベントか! と期待したのだが、そんなことは無かった。
またジョージたちムサい騎士どもに捕まって、ムサいお風呂イベントでした。
いや、いいんだけどさ、騎士のぽろりが本当にうぜえ。
ぼろり落として入ってこい貴様ら。
そのまま部屋に戻り、ベットへGO。
一瞬で睡眠、今晩は何にもありませんように。
【次回予告】
【宣伝】
沢山の思い出と友人を作ったミシンガルドから、ついに出発する一行。
新しい道、メイリン街道に待つのは、敵か味方か!
キルコタンクが地を駆ける!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第50話
聖堂都市ミシンガルドを出発




