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5. 異世界で出来ること

「ステータス!」

「ステータスオープン!」


「ひらかないねげんきくん」

「そうだねあやめちゃん」


 僕らは異世界転移もののお約束、ステータス画面を出そうとして失敗していた。


「何をやってるのかしら、あなたたちは」


 オッドちゃんが虫を見るような目で僕らを見ていた。


「この世界はステータス画面無いの?」

「すてーたす?」

「んと、レベルとか職業とか能力値とかを数値で見れるやつ」

「他にスキルとか、経験値とか」

「無いわよ、というか、全人口にそんな数値とか職業名とかあったら誰がどこでどう管理するというの?」


 なんだろ、神様とか……。

 言われてみれば、何万人ものステータスとか名前とか管理するとなると情報量はとんでもないよね。

 マイナンバー制度だね。


 あやめちゃんの方を見たら、なんだかぴょんぴょん跳んでいた。

 なるほどと思い僕は反復横跳びをしてみる。


「うーん、肉体的な、チートは、ない、みたい、だね、げんきくん」

「そう、だね、あやめ、ちゃん」


 なんか体の感じも日本にいた時と、ぜんぜん変わらないみたいだ。


「そういえば、オッドちゃんと普通に日本語で話してるけど、これはどうなってるの?」


 キルコゲールのディスプレイの表示文字も日本語じゃないけど普通に読めるし不思議だ。


「統一言語だから、世界共通で普通に会話と読み書きはできるわよ?」

「世界的に翻訳の魔法が掛かっているのかな?」

「転移の時に翻訳スキルが、私たちに書き込まれたのかもしれないんだよ」

「なんか前に会った異世界の人は、この世界はバベルの塔が壊れてないから、とか言っていたわよ」


 バベルの塔の逸話いつわは、人間がバベルという土地で、超馬鹿でかい塔を建てて天界にせまって来たので、怒った神様が落雷で塔を打ち壊し、今後人間が協力しあわないように言語を乱し、民族単位で言語を変えたという、聖書のお話だね。


 そうすると、この世界では、神様に言語が乱されて無いから、普通に誰とでも言葉が通じるのか、そのシステムに僕らも組み込まれているから、こちらの言葉を会話できるし、読み書きできるのか。

 それは便利。


「じゃあ、さっそく、ゴブリンとかスライム倒しにいってレベルアップしようよ、げんきくん」

「そうだね、手っ取り早くレベルアップしよう」

「れべるあっぷ、とは?」

「沢山モンスターを倒すと、こう、各種能力があがるんだよ、オッドちゃん」

「は?」

「もしかしてレベルアップも無いの!」

「手っ取り早いのは無いとおもうわ。普通に剣振ってると筋肉が付いたり、走り込むと足が速くなったりはするけど……」

「えー、なによー、不良品だわこの異世界」

「つまんないなあ、帰るよ僕たち」

「帰れません」


 なんかチートなのはオッドちゃんだけみたいだ。ちえー。


「魔法魔法、魔法を覚えて魔法少女プリティあやめになります、なりたいのです」

「おー、僕も攻撃魔法おぼえちゃうぜ」

「えーと、大体十年ぐらい、きちんとお勉強すると、出来るようになるわ」

「えー? スキルとかで炎魔法レベル1とか取れば出来るんじゃ無いの?」

「魔法はそんなに簡単な物じゃないわよ。ニホンの世界はそんなに物事が簡単なの?」

「いや、まあ、日本でもおんなじだけど、ここ異世界じゃん」

「手っ取り早く簡単に魔法とか武芸とか使いたいの、修業とか学習とか根性とかは、まっぴらごめんなんだよ」

「ど、どれだけ、ワガママなの。そんなことではちゃんとした大人になれないわよ」

「ちっきしょー、この異世界はだめだめだよっ!」

「もう、夢も希望もないなあ、帰るよ僕たち」

「帰れません」


 オッドちゃんに日本の若者のこらえ性のなさを、さんざんアピールしてからキルコゲールを見上げる。


「まあ、ステータスもレベルもスキルも無いけど、講習うけないでロボをうごかせるのはチートか」

「そうだねえ、日本では巨大ロボに乗ることなんかできないもん」


 僕たちは二人ならんで、ピカピカと日を浴びて輝くキルコゲールをいつまでも見上げていた。

 ほれぼれ。カコイイ。


「それじゃあ、旅に必要な物を買いに、近くの村まで行くわよ」

「おお、はじまりの村だね」

「ワクワクするねえ、げんきくん!」


 僕たちはならんで歩き出し、キルコゲールを忘れたので引き返し、ロボに、乗って、歩かせて村へ向かった。

 ずしんずしん。

 座席は三席あったのでオッドちゃんにも乗ってもらった。

 なんだか珍しそうに彼女は操縦席を見回していた。


「棍棒が自走する上に乗れるなんて……」


 まだ、棍棒って言ってる。


「あ、はい、へー。げんきくん、茶色のボタンと黄色のボタンを同時押ししてみて」

「こう?」


 特に何もおこらない。


「あ、音声も必要なのね。げんきくん押しながら、チェンジキルコタンクって言ってみて」


 なんだか、キルコゲールが、あやめちゃんにヘッドセット経由で助言したみたいだ。


「チェンジッキルコタンクッ!」


 ぱっぱっぱ、ぱっぱっぱ~とトランペット系のBGMも勇ましく、キルコゲールが変形を始めた。しかし、このBGMは、なぜ鳴るのだろうか。

 正座するように足がたたまれ、どこからかキャタピラが出てきて、頭が引っ込んで上半身が寝た。

 コックピットのハッチの上面が透明に透けて、窓状になる。


「おー、タンクモード!」

「他にもマリンモードとジェットモードがあるんだって」

「飛べる、空を飛べるの?」

「あ、ジェットモードは魔力がまってないから、まだ駄目だってキル君はいってるんだよ」


 おー、なんだか燃えるなあ。


 キャタピラをがたぴし言わせながら、キルコタンクは街道を進む。

 馬車道の幅だから大幅にキャタピラがはみ出すけど、まあ良いよね。

 戦車みたいな物だから乗り心地悪いかなと思ったけど、サスペンション魔法とかがいているのかほとんどれない。

 快速に、どこまでも続く草原の中の一本道を走っていける。


 キルコゲールの時は腕だった所はたたまれるようにして車体の上にある。そしてひじのところから大砲の砲身のような物が二つ出て居た。


「あれって大砲かな、あやめちゃん」

「えっとね、キルコゲールバスターランチャーだって」

「へえ、こんどドラゴンとか来たら撃ってもいいかな」

「やめといた方がいいってキル君言ってるよ。えーと、バスターランチャーの射程は大陸間ぐらいあって、えーと弾着地点を中心に半径百キロ平方メートルぐらいを粉砕ふんさい、半径三百キロ平方メートルが爆風で平らになるって」

「ぜったい撃っちゃだめよっ」


 オッドちゃんがけわしい表情で釘をさした。たないようこんな絶滅ぜつめつMAP兵器。


「もうちょっと丁度ちょうど良い威力の武器はないのかな、機関銃的な」

「えーと、うん、昔はあったんだけど、今は外されて無いって。小さい敵はキャタピラでみつぶせば良いって」


 なんという大味兵器なんだ。

 きっとビームガンみたいな中距離兵器は稼働かどう率が高くて故障とかして外されたんだろうなあ。めったに使わないというか、使えない絶滅兵器の残弾だけ残った感じか。


「オッドちゃん、キルコゲールバスターランチャーを魔王軍の本拠地に全弾たたきこんじゃ駄目なの」


 オッドちゃんがくわっと目を見開いた。

 オッドちゃん目こわ。


「なんて恐ろしい事を言うのっ、魔族だって一般市民はいるのよっ」

「だめなのかー」

「そういう広域巨大魔法は条約で行使こうししてはいけない事になってるのよ」

「条約あるんだ」


 わりと普通に戦争してるんだなあ。魔王軍というからルール無用で闘ってるのかと思ったよ。


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