39. その名は、大聖堂機特攻型V
聖堂都市は、大聖堂を中心に政府機構の建物が放射状に並んでいる。
だから、魔導機の整備基地は意外に近かった。
宅急便のトラックヤードみたいな雰囲気の建物に入ると、ドワーフみたいな親父がスパナを持って立っていた。
というか、これ、本物のドワーフか。
「遅えじゃねえか、ジョージ。とっとと三号機に乗って、帝国の黒いのをぶっ壊してこい」
「はい、おやっさん」
おやっさんかあ、良いねえ。
「で、なんだ、この餓鬼は?」
「飛高げんきですっ!」
「例の東門の伝説級の操縦者ですよ」
「マジか、おめえっ、今すぐ、あのゲールに乗せろ、研究させろっ!」
「今はドタバタしてますから無理ですね」
「ちっ、このドタバタが終わったら乗せろ、良いな」
「そのためにですね、ご相談したいことが」
「なんだ、餓鬼のくせに、もごもごと、はっきり言え」
「余ってる魔導機は無いですか」
「ねえよっ。おい、ジョージ、早く乗れ、三号機は暖気済みだっ!!」
「へいっ、おやっさんっ」
「本当に、余ってる魔導機はないんですか、教皇さんのとか」
「教皇の嬢ちゃんなら、出撃したぞ。仮にあっても、教皇機は本人以外乗れねえよ」
「教皇猊下はご無事ですか」
「ああ、ぴんぴんしてるぜ、ガエルの馬鹿をぶっ殺すって、手持ち大筒を持ってったぜ、ゲハハ」
「練習用魔導機とか無いんですか?」
「しつけえな、坊主、おめえはここで、ドタバタが終わるまで茶を飲んで、終わったら儂をゲールに乗せろ」
がっかり。
「そういや、坊主おめえ、ゲールに乗れるって事は馬鹿みたいな魔力量なのか?」
「え、そうなのかな?」
「ふむ、先々代の教皇がよう、もう馬鹿みたいな魔力量でな、それを当て込んだ馬鹿機体があるのよ」
「ほ、本当ですか!」
「ものは試しだ、乗ってみるか、今は一台でも戦力が欲しい所だしな」
「はいっ!」
おやっさんに先導されて、整備基地の奥に入る。
そこにあった機体は、カラーリングが金と赤銅で、教皇猊下の特別機に似たデザインの機体だった。
「大聖堂機特攻型Vって呼ばれている。足にローラーダッシュ機構とか、手にパイルバンカー機能とか浪漫な物ばっか乗せやがってなあ、普通の魔力量の奴じゃ、起動もできねえ、おら、これが搭乗服だ、すぐ着替えろっ」
今の僕は、浴衣ローブ姿なので、手間もない。
その場で僕は、体にぴっちりした搭乗服に着替えた。
その間に、おやっさんが、魔導機のハッチを開けてくれる。
「おい、手が空いてるやつ、来いっ! 特攻型Vを立上んぞっ!!」
へい、おやっさん! という声と共に個性が強そうな面々が現れて、起動作業をこなしていく。
僕は操縦席に潜り込み、藍色のトラックボール状の物に魔力を流し込む。
モイモイモイーーーンという音とともに、操作パネルに火が点り、ボビンと音を立てて、ディスプレイが起動する。
「へへへ、いい音させんじゃねえか、うひゃあ、すげえ魔力量だ、ゲールを動かしたってのも嘘じゃあなさそうだな」
頭部ハッチカバーが回転して閉まる。
操作方法は大体同じようだ。
操作感は……。
うわ、なんというか、キルコゲールが体に全身タイツをはいたような感触だとすると、ウレタンのぬいぐるみを着てるような感じに凄く鈍い。
「導線ケーブル、離脱っ! 魔導コンデンサー、全て青っ! 行けるぞ、坊主、動かしてみろ」
お尻から背中にかけて、モイミイイイインという鈍い振動がして、特攻型Vはガショインと歩き出した。
うん、まあ、伝達感が鈍いけど動かせないことは無いな。
「すんげえな、坊主、そんなになめらかに動かせるのかよ!」
『飛高ゲンキ、出ます』
「ばっきゃろー、武装はどうする、好みはねえのか? 手持ち火器と、どつき合い用の剣か槍がいるぞ」
『必要ありません、僕は素手の方が強いので』
「ええ、マジか、マジに伝説のジュードー使いとか言わねえよな」
『ええ、それ、使えます』
過去にも柔道使える人が居たのか。
「ホントに? 馬鹿野郎、お前、面白れえなあ、よーし、ゲンキ、行って、帝国の黒いのをぶっ壊してこいっ!!」
『げんき機、特攻型V、行きますっ!』
前面ディスプレイに、ウインドウが開き、ジョージが映った。
『おお、本当に特攻型Vで出てるのか、すげえ、呪いの機体って言われてんだぜ、それ』
『まかせろー』
「ゲンキ、ローラダッシュを試して見ろ、感覚球の上にある二つのトルグスイッチだ。前に倒すと前方にダッシュ、真ん中で停止、後ろでダッシュ後退の馬鹿でも使える素敵仕様だ。右左の両足にローラーが付いてる、片方だけで回転とか、両方を逆にして急回転とか高度な奴は、やめとけ、練習がいる」
『そういうの大好きです僕!』
ローラーダッシュというのは、機体の足にそれぞれ、歯車みたいなホイールが付いていて、これが大地を噛んで高速回転、中腰のまま、前にぶっ飛んでいくという浪漫機構だ。
この機体のローラーは魔力を消費する型のようで、僕の魔力量だと、四、五時間ぶっ通しでダッシュできるもよう。
まあ、連続使用する物じゃないので、ぶっ通しで使うと、そのうち故障するだろうけどね。
それでは、ローラーダッシュを試そうっ!
両方のスイッチを前進!
バチン。
コキュゥゥゥゥゥン。
うおおおおおおおおっっ!
もの凄いGで、景色が後ろに後ろに、すっげーっ!
停止停止。
バチン。
『ぬおおおおおお、良いなあ、ゲンキ、それ』
かっこいい、それに、すり足に近いんで、そのまま柔道につなげられるのも気に入った。
これはいい。
「あと、パイルバンカーは、フレームの脇にぞんざいに付いてる、赤いボタンをぶったたけ、魔導炸薬は五発分入ってる」
『はいっ、おやっさん、行ってきますっ!』
パイルバンカーというのは、特攻型Vの右手に付いてる盾の中に、普通にぶっとい鉄の杭が付いていて、杭の底に付いてる炸薬で杭の長さだけ高速発射して伸ばして、ぶっ刺すという、男らしい浪漫武器だ。
柔道で組み付いて、頭部に向けてぶっ放すとか、ワクワクする攻撃が使えるね。
『いくぜ、ジョージ!』
コキュゥゥゥゥン。
『ばか、おめえ、ローラーダッシュは早ええよっ! 普通に歩け、俺が息切れしちまう』
『早く早く!』
ジョージの三番機は、夕方見た装備と同じ、電磁雷槍だった。
それに、背中にショットガンみたいな物を背負っていた。
どたどたと三号機と速度を合わせて、大聖堂に向かう道を行く、大聖堂まで行って、……どうしよう。
『僕の仲間が捕まってる場所は解るかい?』
『聖堂の兵士が捕まえたのなら、兵士省。騎士なら騎士団本部だな』
『ガエルのおっさんが連れていたのは兵隊だったな。兵士省に行ってみよう』
『解った、先導する、付いてこい、相棒っ』
『おうよ、相棒っ!』
ディスプレイのジョージとにやりと笑い合う。
こういう、男臭い展開は、良いね。
【次回予告】
げんきとジョージはバディを組んで兵士省に向かう。
激闘につぐ激闘、混乱の極みの聖堂都市で、二人が最後に見た物とは!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第40話
兵士省制圧戦




