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35. 聖堂精進お食事処

 五千年の時をへだてた、がっかりプレゼントに、超がっかりして、僕の気力は零となった。

 なんで、ミサイルの残弾や、ビームの補修ほしゅうパーツとか、じゃなくて、一番いらないし、使うつもりも無い、バスターランチャーの弾なんだ。

 オーノー。

 とりあえず、ケースの鍵を閉めて、オッドちゃんの謎空間に仕舞しまってもらった。

 きっと、あと三万五千年ほどは、この弾の出番は無かろう。


「なぜ、勇者ゲンキはそんなに、がっかりなさっていらっしゃいますの?」

「あーあーあー。そのですね、この弾は大陸間ぐらい飛びます」

「なんという飛距離なんでしょう、すばらしいです」

「起爆すると、半径百キロがコナゴナになります」

「そ、それはすばらしい……破壊力……」

「そして、半径三百キロぐらいが、爆風で平らになります」

「……」

「人の心を持ってる者は、こんな物をてません」

「そうですわね……」

「われわれはその弾を六発持ってます。さらに、エリス猊下げいかに追加の六発を貰いました」

「……」

「パンゲリア大陸全体を平べったくして、おつりが来る量なわけです」

「ま、まあ、そのうち何か使い道もあるでしょう、是非ぜひ、勇者ゲンキがお持ち下さい」


 エリス猊下げいかは、バスターランチャーの弾を厄介払やっかいばらいしたいんだな。


「ミシリアさまの教えに、心がくじけた時には、美味しいご飯を食べて、暖かくして寝るべし、という物があります」


 常識的な教えだなあ。


「ということで、みなさん、聖堂宿坊自慢の聖堂精進しょうじんお食事処で晩餐ばんさんといきましょう」

「「「おー」」」


 僕をのぞくみんなが歓声をあげて大聖堂へと歩き出す。

 僕はもう歩く気力が無いよ、魔導機にまた乗せてよ、と思ったら三号機さんは、もうどこかに行っていなかった。

 とほほ。


 みんなに置いて行かれがちになりつつ、大聖堂へ。

 お食事処は大聖堂宿坊の二階だ。

 宿坊のお客さんは、おそろいの、浴衣みたいな、作務衣みたいな、バスローブっぽい物を着て館内をうろうろしていた。

 男の人は青っぽく、女の人は桃色っぽいローブだ。

 宿坊の一階はお土産ものやさんで、たくさんのお菓子とか民芸品とかが並んでいて、温泉地みたいであった。

 老若男女の善良なミシリア信者さんたちが、ほがらかに大聖堂饅頭などのお土産を選んでいて微笑ほほえましい。

 お土産コーナーの奥に大きな階段があって、それを上るとお食事処だ。


 大きなホールみたいになっていて、沢山のテーブルに、沢山の信者さんたちが、にこやかに晩餐ばんさんを楽しんでいた。

 料理は西洋風な料理ではなく、なんか湯葉ゆばっぽい感じの鍋とか、うどんっぽい物とか、お魚とかが多い。

 和食、なのか?

 あ、ご飯食べてる人がいる。


「異世界の方が教えてくださった、ニホンのお料理を中心に、体に優しい物を選んで出しておりますのよ」

「わあ、うれしい、ご飯が恋しかったところだったんだよ」


 VIP席っぽい、奥の個室に通されて、僕たちは一息ついた。

 湯飲みっぽい茶碗に、ウーロン茶みたいなお茶が出た、後口にお花っぽい匂いが残る。

 お品書きを見ると、なるほど、和食に影響えいきょうを受けたコースらしい。


「お飲み物はいかがですか、ミシンガルド近郊で出来たワインやお米で出来た異世界酒もありますよ」

「ふむ、では、私は異世界酒をいただこう、ゲンキ殿の世界のお酒は興味がある」

「私はワインを、赤でいいわ」

「わたしはお茶でおねがいします」

「僕もお茶で」


 エリス猊下は、猫耳の獣人の仲居なかいさんに注文をする。

 あやめちゃん、仲居なかいさんの尻尾を触りたそうにするのはやめましょう。

 飲み物が来て、エリス猊下げいかが立ち上がる。


「えー、五千年の懸念けねんを解消できたこの良き日に、しき縁で出会った喜びに、ミシリアさまへの感謝の念をもって、乾杯の音頭を取らせていただきます、かんぱい」


 日本だ、日本の宴会文化が伝播でんぱしている。

 パットの前の異世界酒はちゃんと、とっくりに入って熱燗あつかんっぽい。

 お酒が飲めたら、日本のお酒と飲み比べができたのになあ。残念。

 僕はお茶の入った湯飲みで、乾杯である。


 当然のように黒い塗り箸が紙袋につつまれ僕の前に出て、料理がどんどんでてくる。

 しかし、誰だ、こんなに聖堂都市を日本文化汚染させた異世界人は。


 先付は近郊きんこうで取れた根野菜こんやさいと川魚のえもの。

 お酢が良く利いていて、とても美味しい。

 二品目は、小さな川エビのお寿司が一つ、普通に酢飯でお寿司、異世界なのに普通だ。


「うむ、このお酒、意外に強く感じるのは、熱いからか、うまい」

「ちょっとちょうだいな、……。甘い? 不思議な味ね」


 異世界酒こと日本酒も、きっと普通なのだろう。

 甘口らしいが。


 三品目は、お椀に、すまし系のお吸い物がでた、白身の魚の身と、ほうれん草系の青菜が入ってる。

 ふわっと出汁の香りがして、美味しく懐かしい。

 日本を離れて何年も経つ異世界人だと、これは泣くぞ。


 四品目は、ごぼうっぽい物と、豚肉っぽい物を甘辛く煮た一品が出る。

 ちゃんと醤油の味はするし、旨い。

 こっちの世界は素材の味が良いから、なんでも美味しくていいよなあ。


 五品目に焼き魚が出る。これはケンリントンで食べたギラギラ光る川魚だな。

 塩をして焼いただけだけど、独特の風味があって美味しい。


 パットが僕たちを見てお箸を使おうと四苦八苦していたが、あきらめてナイフとフォークを使い出す。

 オッドちゃんは元からナイフとフォークだ。


「んー、祖国を思い出すんだよ。美味しいねげんきくん」

「まあ、そんなには日にちは、たってないけど、和食はしみるね、あやめちゃん」


 しかし、良い料理人をやとっているなあ。

 和食の料理人なんか探すの大変だろうに。


 六品目に鳥の炊き込みご飯とお味噌汁が出た。

 聖堂都市はどんだけ日本食材を作ってるんだよっ。再現性が怖いわ。

 異世界の炊き込みご飯とお味噌汁は、日本の物とは、微妙びみょう差異さいがあるんだけど、その差異さいがまた美味しくて凄い。

 鳥の味がちょっと違ったり、お味噌汁の風味が違ったりしてるんだけど、それを見越して味をまとめているので、異世界料理人の腕は確かで上質じょうしつだ。

 美味しい美味しい。

 炊き込みご飯をおかわりしてしまったよ。


「これが、ゲンキ殿の世界の料理なのか、繊細せんさいで美しく楽しい料理なんだな」

「なかなかの文化ね。それを再現する大聖堂宿坊の料理人も凄いわね」

「おめいただき、なによりです」

「美味しかったです。日本の大料亭と遜色そんしょくないですよ」

「なんか、故郷の味を思い出して涙がでました。ごちそうさまです」


 僕たちは梨に似た果物をショリショリ食べながら、エリス猊下げいかにお礼を言った。

 猊下げいかは嬉しそうに笑っていた。


 やっぱ美味しい物を食べると、元気がでるね。

【次回予告】

ぼろり、それは世界の憧れ、人間の生きて行くかて、心ある漢たちの夢の結晶。

巨大な男女混浴温泉沐浴場で、げんきは何を目撃するのか!!


なろう連載:オッドちゃん(略

次回 第37話

全裸でどっきり、流れる巨大沐浴場! ぽろりもあるよ

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