34. 五千年の間秘蔵されていた伝説の武具
なんとなく瘴気みたいな、薄い嫌な、なにかが立ち上って来る感じで僕は顔をしかめた。
階段を降りると、四十畳ほどの方形の部屋で、中にはごちゃごちゃと武器とか防具とかが沢山置いてある。
「聖堂騎士団の団員の物だった武具です。最上級とはいかない、でも、普通の倉庫に入れておくには勿体ない、ぐらいの武具ですわ」
「ちなみに一番良い武具は?」
「伝説級の武具は、大聖堂に併設された、聖堂騎士博物館に飾ってありますわよ」
さらに、階段があり、そこを降りる。
今度は結構長い。
疲れた、もう帰りたい。
「ずいぶん厳重なんですね」
「世界に十二体しかない、伝説級ゴーレムの武器ですもの、これくらいの警備はいたしますわ」
「その伝説級ゴーレムってなんですか?」
「伝説級ゴーレムとは、遙か昔、超古代魔法文明の魔導王と言われる方が建造したといわれるゴーレムたちの事です」
「超古代魔法文明……」
「超古代魔法文明は一万年前、謎の大破壊により滅びてしまい、その技術のほとんどは失伝してしまったといいます。その時代の後期に作られたのが、ゲールシリーズという、十二体の伝説級ゴーレムです。最近、ダンジョンで、ある大魔導師が一体発見したとの噂もありますね」
うん、その大魔導師は、その伝説ゴーレムを棍棒にしてますけどね。
「そのゴーレムの実力はほとんど伝わっておりませんが、伝説では、一台で空を飛び、陸を走り、海をゆく万能の行動性や、一発で大陸全土を破壊してしまうような、恐ろしい爆弾などがあると言われております」
まあ、その爆弾は、六発ほど、キルコゲールに積んであるんだけどね。
「十二機のゲールシリーズは、一機ずつ、特別な能力を持つとも言われています。また、魔導王の搭乗機である、ガランゲールは、その力で大破壊を引き起こし、超古代魔法文明 を滅ぼしたとも伝えられています」
降りた先は、民家の扉ぐらいの大きさの、赤黒い金属の扉になっていた。
エリス猊下が、魔法と勘合札と鍵を併用して、そこを開けた。
分厚い扉の奥には、鉄梃のような物があり、そこには白銀に輝く大剣がささっていた。
人間用の。
「あ、それは聖剣ですので、さわらないでくださいね」
「え、誰でも引き抜けたら普通にもらえるんじゃないですか?」
「いえ、誰でも普通にそこからぬけますし、来年の聖堂騎士宝物展に備えて、しまってあるだけですよ」
なんだよ、これじゃないのか。
というか、聖剣くださいよ。
エリス猊下はさらに奥に進み、壁の金庫を開けた。
中に入ってるのは、銀と金の色の謎金属で出来た綺麗なアタッシュケースみたいな箱だった。
旅行用大型スーツケースぐらいの大きさがある。
「これです。よいしょ」
よいしょっとばかりに、エリス猊下は、輝く箱を小部屋の机の上に置いた。
この大きさだと、ロボ用の手持ち武器じゃないのかあ。
パットは聖剣に興味津々みたいだ。聖騎士だしなあ。
オッドちゃんも、あちこち開けては猊下に、ちょっと、やめてください、と怒られている。
「これが鍵になります」
猊下が懐から小さめの鍵をだして、僕に渡してくる。
僕が鍵を鍵穴に入れて回すとカチリと音がして、フタが開いた。
中にあるのは、ジュースの缶ぐらいの太さで、三十センチほどの長い筒が六本。
「なんだろう、ミサイルの予備弾かな? あやめちゃん、キルコの中の人と連絡は?」
「ここは地下深いから連絡がとれないんだよ。それに、ヘッドセットで送れるのは音声だけだしね」
「よし、キルコタンクまで持っていって、確認しよう。何の弾であっても、どうせ補充するんだし」
ケースの鍵を閉めて持ち上げる、うわ、結構重い。
「オッドちゃん持ってくれない?」
「嫌よ、あなたが持ちなさい、ゲンキ、男でしょ」
「いや、無理だって、この重さの物を持って、地上まで上がったら死んじゃうよ」
「我が主は非力ですねえ。わかりました私が持ちましょう」
「わあ、パット頼めるかい、ありがとう」
「い、いえ、主の笑顔が私のご褒美なので、お礼にはおよびませんよ」
パットがケースを、かるがると持ち上げた。
「オッドちゃんの謎空間にケースを入れて、タンクの所でまた出せば良いと思うんだよ」
「「「あっ!」」」
そうであった、オッドちゃんの四次元ポケット魔法なら、何を入れても重さは変わらないのであった。
渋い顔をしながら、オッドちゃんはケースを、ひょいっと持ち上げ、謎空間に入れた。
やれやれ。
もー、宝物庫をいろいろ見て回りたいけど、疲れた、もう、地上に帰る。
わっしょいわっしょいと気力を上げながら螺旋階段を上る。死ぬ-。
オッドちゃんの謎空間から魔法水筒を出してもらい、水をがぶがぶ飲む。
「ゲンキさんは鍛錬不足とおもいますよ」
エリス猊下にも言われてしまった。
うるさいうるさい、僕はインドア派なんだよ。
ぜいはあぜいはあ、やっと地上だよ。汗だく。
なんか知らないあいだに日が暮れてるー、空が紺色だー。
もう、部屋に帰って寝る。
ああ、部屋は五階、しかも僕の泊まる部屋見てないや。シングルとだけ聞いたけど。
もういや。
僕よりも、あやめちゃんの方が体力があるようだ。
くやしい、くっ殺せ。
「しょうがないわね、お姉ちゃんがおんぶしてあげるわ、さ」
「……自分で歩きますから」
「さあっ」
あ、オッドちゃんの目が怒り始めている。
なんという、言い出したら聞かないお姉ちゃんだ。
オッドちゃんにおぶさってみる。
……。
いや、その、オッドちゃんは怪力だから、僕を軽々とおぶれるのは良いんだ、だが、体格が違いすぎて、なんか、あれだよ、年端もいかない少女を高校生が虐めているようにしか見えないよ。
だめだよ、これはオッドちゃん。
僕はオッドちゃんの背から降りた。
「やっぱいい」
「おぶ、さり、なさ、い」
……。
ここは、日暮れすぐの人通りの多い大聖堂の正面玄関の前である。
そこで僕はオッドアイのゴスロリ少女と睨み合いである。
睨み合いである。
『んじゃ、こうしましょう』
と言って、僕を後ろから、ひょいっと持ち上げたのは、銀色の魔導機であった。
声からすると三号機さん。
『東門までですね、行きますぞ』
「あ、ありがとう」
「ちょ、ちょっと待ちなさいっ」
魔導機の肩にちょこんと乗って、僕は聖堂都市を行く。
結構高いので景色が良い。
でも十メートルの高さは結構なもので、実際怖い。
後ろから膨れっつらのオッドちゃんが小走りでついてくる。
そのうしろに、パット、あやめちゃん、エリス猊下と続く。
「助かりました」
『なに、先ほどは失礼をしたから、罪滅ぼしってやつ』
さすがに、魔導機は早い、すぐ東門に着いたので降ろしてもらった。
「なんでゲンキは、私の言う事を聞かないのっ!!」
「もう、疲れはとれたので、良いのです」
「そういう問題じゃないわっ!」
あーもう、カンカンになってるなあ、オッドちゃんは。
こういうときは、と、頭を撫でようとしたら、ふんっ、と言って手で払われた。
まったくもう、どうしたらいいのやら。
とりあえず、キルコタンクに上がった。
オッドちゃんに引き上げようと手を伸ばすと、彼女は宙に飛び上がり、僕の手を軽く蹴っ飛ばしたあと、くるりと一回転して自分の席に座った。
無駄に運動性が高くて器用だなあ。
あやめちゃんが上がって来たので、オッドちゃんにケースを出してもらった。
彼女は膨れたまま無言でケースを出してくる。
パットは梯子に足をかけたまま、操縦室をのぞき込んでいる。
ケースの鍵を開け、フタを開ける。
「え、ああああ! そ、そんなっ!」
あやめちゃんが顔を手で覆って悲鳴を上げた。
「ど、どうしたのっ? 何だったの?」
「これ、バスターランチャーの予備弾だって」
そんな物、もう一発もいらねーよっ!!!
【次回予告】
新しい土地に来ると気になるのは食事の質だ!
頬張れ、げんきっ! 食欲の赴くままに大聖堂都市の料理をむさぼりつくせ!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第35話
聖堂精進お食事処




