33. 大聖堂の最上階から、地下宝物庫へ
獲物を狙う肉食獣の目をしたあやめちゃんから、サリアさんを守りつつ階段を上がる。
上がる。
上がる。
つかエレベータ付けようよ、魔導って付けたら大丈夫なんでしょ何でも。
ぜいはあ言いながら、五階まで階段を上った。
「女性の方三人は、こちらでお願いいたします」
「ほー」
「なかなかの部屋じゃない」
「尻尾の先、尻尾の先でいいですから、触らせてほしいんだよ」
あやめちゃんあきらめろん。
サリアさんは、さすがにウザクなったのか、尻尾の先をエプロンのポケットに仕舞ってしまった。
最上階の部屋はとても広くて豪華な部屋だった。
聖堂都市らしい、白でまとめたシンプルながらも、匠の技術が光るインテリアが揃って、私たちを迎えてくれます。
大きな大きなベランダからは市街が一望できて涼しい風が入ってきます。
天井には煌びやかでいながらも、清楚なデザインのシャンデリアが輝きます。
ふわり、シャンデリアの横にある横長のスリットから涼しい風が。
なんとも贅沢な、魔術を使った空調装置が四季の暑さ寒さを和らげ、快適な温度を保ちます。
三十畳ほどの大きな応接室に二十畳はある寝室が二つ、光沢のある白い絹で覆われた大きな天蓋ベット。
作り付けの洗面台に行水場、白の大理石で作られたそれらは、光り輝いて、豊かで清潔な聖堂ライフを保証してくれるかのようです。
まるで王侯貴族が泊まる高級ホテルのスイートと言っても間違いはないでしょう。
というか、聖堂都市の大聖堂宿坊の最上階だから、普通に王侯貴族が泊まる所なんだろうね。
「しゅ、宿泊費は、お一人、おいくら万ケルなんでしょうか」
「ほほほ、本来ですと御浄財の寄付をおねがいしたい所なのですが、今回は女神ミシリアさまのご神託もございますので、御宿泊も、二階の聖堂精進料理のお食事処でのご会食も、全て無料となります」
「ええ、なんですってっ」
「しかも、今回に限り、地下にある、流れる巨大沐浴大浴場も無料、他にも、各種祈祷、神聖魔法医院の検診も無料にてのご提供になります」
「まあ、なんてお得なのかしらっ」
なんか猊下とパットとオッドちゃんのやりとりが、だんだんテレビCMっぽくなっていくのは何故なんだろうか。
「ミシリアさまのご神託とは、なんですか」
「昨夜遅くに、夜の勤行をしていた私に、ピピッとご神託がおりてまいりまして、オッド師と勇者さま達が聖堂都市にいらっしゃるので、誠心誠意ご接待するようにと命ぜられましたの」
「はあ」
ピピッと降りるのか、神託。
それはもう、普通の魔法電話じゃないのか?
「なんでも泊めると聖堂都市にとって良い事があるので、むりやりにでも泊めなさいと、あと、五千年前から秘蔵していた伝説の武具を勇者さまたちにお渡しするようにと、伝えられましたのです」
「伝説の武具!」
「はい、なんでも伝説級ゴーレム、ゲールシリーズに使われる武器と神殿に伝わっております」
「なんだってーっ!」
「お荷物を置かれたら、宝物庫にご案内いたしますわ」
なんと、こんな所でキルコゲール用の武器が手に入るとは!
危うく重要なイベントをスルーしてしまう所だったなあ。
とりあえず僕たちは、荷物を置いて、エリス猊下について行くことにした。
わっせわっせと昇って来た階段を、今度は降りていく。
ふうふうと息が上がった僕を見て、パトリシアが優しい目をする。
そんな目で僕を見るなーっ!
「我が君、体力をつけましょう。明日から毎朝、一緒にランニングを十キロほどいたしましょう」
ふざけんな、毎朝ランニングとか死んでしまうよ。
大聖堂の中に入り、説教台のある台上に上がる。
台の背景には、ものごっつい大きい女神像があって、下から見るとむっちり太ももに屋根のようなオパーイである。
ナイスボディと言わざるをえまい。
ナイスボディ像の下の横に扉があって、そこに入っていく。
戸をくぐると薄暗い廊下で、なんかワクワクするような変な感じ。
壁に掛けられていた、魔導ぽいカンテラを手に持ち、点灯してエリス猊下は歩く。
廊下の先に大きな扉があり、鍵を出して猊下は開ける。
そこは、なんだか地獄の底まで続いていそうな巨大な穴と、螺旋階段だった。
螺旋階段はそんなに急でもないし、細くもなかったけど、その大きさを見るに、すごく時間と手間とお金がかかってるのが見えて、ほうと、一息ため息をつく。
無駄に良い柱、無駄に彫刻、無駄ガーゴイル、無駄石畳、をカツーンカツーンと音を立てて下へ下へと進んで行く。
どんだけ続くんだーと思っていたら、先に何か見えてくる。
すわ終点か、と思ったら、それは東屋で、ベンチとテーブルが、おいてある。
「ここは第一休憩所ですわ」
「あとどんだけあるんですかっ!」
「いえ、半分来ましたので、あと半分ほどですよ」
「ここ、掃除とかどうしてるのですか」
「年に一回、修道女の幹部候補生が、過労死の覚悟で、ふき掃除ですわよ。毎年これをやると、ああ新年が来るんだなあと、修道女の頃の私は思ったものです」
「はあ」
東屋で、ちょっと一休み、大聖堂の下に、こんな凄い空洞が眠っていたなんて。
テンプレだと、過去の大悪魔が眠っていて、倒すと武器か防具と、魔王領に至るヒントをくれるやつだな。
こいよ、大悪魔っ!
……大悪魔なんか居なかったんや。
単調な下りが終わると、底が見えた。
底につくと、端っこに扉があって、魔法と鍵を併用して、エリス猊下は扉を開く。
ギイイイィリョコリャン。
と、変な音を立てて、大きな扉は開いた。
「うわ、ミスリルの扉、しかもこんなに、ぶ厚い」
「遙か昔、なにか凄い魔物を捕らえていた場所、と伝わっております。ミシリア様がご光臨なさる前から、この遺跡はあったのですよ」
「歴史的価値のある場所なんだね、げんきくん」
中に入ると、結構天井の高い、半円形の天井の倉庫だった、棚には金銀財宝、は無くて、古めかしい箱箱箱。
「宝物入ってるんですか、この箱? 金銀財宝? トラップとか仕掛けてあります?」
「あ、いえいえ、ここらへんの箱に入っているのは、教団の過去の帳簿とかですよ」
「……あ、はい」
ま、帳簿は大事だよね、年間予算の予測とか立てられるし、災害があったときの必要経費とか割り出せるし。
だが、帳簿に浪漫はない。
というか、ミスリルの分厚い扉の宝物庫に帳簿をもちこむなやっ。
さらに奥に歩くと、小さな階段があり、さらに下がある。
【次回予告】
パトリシアは地下宝物庫で聖剣を発見する。わき起こる期待に彼女の胸騒ぎは止まらない。
はたして、伝説の武具とは、いったい?
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第34話
五千年の間秘蔵されていた伝説の武具




