31. ミシンガルドの魔導機騎士
キルコゲールに比べると、聖堂騎士団の魔導機は小さい。
だいたい十メートルぐらいだろうか、お台場の海浜公園に立ってるガ○ダムより一回り二回り小さい。
その、小型な銀色の魔導機が三機、槍をキルコタンクに向けて威嚇している。
操縦系は同じなのかな?
そうすると僕でも魔導機を動かせると思うが。
一台下さい。
「ふふふ」
あ、いかん暴れん坊のオッドちゃんがセットアップを始めた。
僕はあやめちゃんに親指を下に向けて、無言で指示をした。
あやめちゃんはうなずいて、タンクのハッチを閉め、ロックした。
ぎゅおん。ぷしゅう。
カッチ。
「どうしようか」
「どうしたらいいのかわからないよね。前門の魔導機、後門のオッドちゃんで、万策尽きそうなんだよ」
「さあ、私の出番よ、アヤメ、タンクのハッチを開けて」
「私は、ケンリントン伯の娘、パトリシア・ケンリントンである、この狼藉はなにかっ! 説明を求めたいっ!」
『くっ、じゃじゃ馬っ』
『おてんばがいたのかっ!』
『ど、どうするっ!?』
ナイスパット、彼女はくつろぎ空間から出てきて、仁王立ちで魔導機たちに怒鳴りつける。
どうでも良いのだが、パットの二つ名の前の方だけを拡声器で呼ぶのはやめてさしあげて。
『教皇様のご命令なのだ、怪しい車に乗る、不埒な魔女を連行せよとなっ』
『ケンリントン伯のお嬢様には何の関係も無い事だ、下がっていろっ!」
『そうだそうだ!』
三機の魔導機の中に、約一名、非常に弁が立たない人がいる。
「これは、異世界の勇者、ヒダカ・ゲンキを隊長にする、魔王討伐隊だっ。オッドなる、短慮で、短躯で、短気な、愚か者はいないっ!!」
なんだか後ろから、すごい殺気が、どるんどるんと、湧きだしているのですが~。
『怪しい車の中に、オッドが隠れ潜んでいるという通報があった、否定するならば、車の中を改めさせてもらうっ!!』
『この怪しい車は、伝説機と言われる、十ニ体の搭乗型ゴーレムの一つである、という疑いもある。伝説機は国家が持つべき物、個人が発見した場合は、最寄りの国家に引き渡すべし、という法律もあるっ!』
『一号二号の言う通り、まったくその通り!』
三号機~。
「ふざけるなっ! オッドなぞおらんっ!」
『では中をあらためさせよっ!』
「そ、それは駄目だ、居ないし」
『居ないのならば、あらためても問題は無かろうっ!!』
「駄目ったら駄目だ。その、国家機密だ」
『む、そなたは、われらと同じステイル王国民であろう?』
「いや、そうなんだけどな……」
やばい、そろそろパットがやばい。
ああ、あと、後ろで、くくくと口を三日月型に歪ませて、殺戮衝動に飲み込まれている大魔導な人もやばい。
やばいやばい。
あやめちゃんとブロックサイン。
(ちょっとフタを開けて、僕が出たら、すぐ閉めて)
(了解だよ、げんきくんっ)
「げんきくんがんばって~」
プシュ。
ミイイイイイン。
【応援】はありがたい。
僕はちょっと開いたハッチの隙間をするりと抜けて、梯子に取り付いた。
フミイイイイン。
「ちょ、まだ私が出てない……」
バシュウ。
カチャッ。
オッドちゃんの声も、閉まったハッチに遮られた。
「魔王討伐隊、隊長、飛高げんきであるっ!! さあ、皆の者! 僕を、讃えよっ!!」
僕はするりと操縦席の上のハッチに登り、カッコイイポーズを取った。
こういう交渉はハッタリなのだ。
アニメのヒーローになりきって、僕は声を裏返す。
「きゃーっ! 我が君!! 素敵ですっ」
『む、じゃじゃ馬が、あのように丁寧に』
『え、偉いやつなのか、小僧のようだが』
『今ちらっとさあ、車の中に手配書っぽい女がさあ』
「僕の名において、黙れっ! 三号よっ!」
『あ、はい、ごめんなさい』
やはり弁の立たない人は三号機さんだったようだ。
僕は辺りを見回す。
ミシンガルドの西城門前は、旅人やら野次馬やら巡礼者やらで、凄い事になっていた。
すごい数の群衆が、僕らと魔導機を取り囲んでいる。
「魔導機じゃあ、聖堂騎士団の魔導機じゃあ、ありがたやありがたや」
「すげえ、俺、十年ぶりに魔導機見たぜ」
「新年のパレードとかで見てない?」
「止まって運ばれてる魔導機なんざ、魔導機じゃねえよ」
「聖堂騎士団の魔導機のB型は、本来、大型魔獣の殲滅用の機体で、バランスの良い設計と、コストパフォーマンスに優れた名設計と言われているね」
「おお、手持ち武装は電磁雷槍ではないか、あの装備は、それがし、初めて見たでのであるよ」
「基本的な聖堂魔導機の武装は、加熱断罪剣なんだけど、今回は命中性を重視しての槍装備のようだね」
なんだか、軍事オタっぽい野次馬がいる。
魔導機ってそんなに沢山は無い物みたいだね。
「ケンリントン伯の押印のある正規の通行御免状を持つ、我ら魔王討伐隊の通行を、何の権利があって妨げるのか、返答を伺おう!!」
ビシイッ、ポーズ変え!
通行御免状というのは、貴族の裏書きをした、通行手形のような物で、裏書きした人が偉ければ偉いほど効果が高い。
伯爵位発行の御免状というと、まあ、連邦内であれば、ほぼ、どこでも通行自由と言うもので、ダディが「これを出しても、まだ、ごちゃごちゃ言う奴が居たら、武力でどこまでも押し通って行け、儂がケツ持ちをしてやる、がはは」とまで言った代物だ。
その御免状をパトリシアが印籠のように突きつける。
その迫力に、魔導機は三機揃って一歩後ろに下がる。
『ぬうう、た、確かに通行御免状、いやだがしかし』
『兄者、しかし、ここで引くわけにはっ! 臨検は聖堂都市の正当で神聖な権利! 伯爵位の裏書きといえど、何するものでありましょうやっ!』
『うむ、一号二号の言うとおりかもしれんっ!』
なんというか、もはや三号機が癒やしキャラになってる。
『何をしているのです、あなた方は!!』
そう言いながら、東門の向こうから、もう一機、魔導機が現れた。
同じタイプの魔導機だけど、銀の機体に金の装飾が綺麗だ。
「おっ、聖堂騎士団の魔導機、指揮官専用特殊チューンタイプだね。大型の魔石エンジンを積んで、制御系魔法をチェーンナップ、見かけは鈍重だけど、思いがけないほどの速度とパワーを持つ傑作機体だね」
「手持ち武器は、やや、なんと、連射散弾大砲とは珍しい。見かけよりもキルレシオに重きを置くとは、なかなか出来る搭乗者ですな!」
こういう事はオタクの人に語らせるに限るね。
月刊魔導機とか、本屋に売ってるのではあるまいな。
東門から出てきた綺麗な魔導機を、三体の魔導機はお辞儀をして迎える。
『教皇さまっ!』
『教皇猊下っ!』
『あ、おかあさっ、ではなかった、猊下っ!』
おまっ、三号機っ! こんな場面で上司の女の人を、お母さん呼びかよっ!!
どんだけおいしいんだっ、あんたぁっ!!
【次回予告】
女教皇エリス、彼女の真意はどこか。
連れて行かれた大聖堂の上で、あやめは驚喜の叫びを上げる。
がんばれ、あやめ、欲望に負けるな!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第32話
女教皇エリス猊下




