3. パンゲリアの大地に立つ
びよよんという感じのなんだか不思議なモヤモヤの景色がいきなり変わると、そこはパンゲリアとかいう異世界の草原らしかった。
「異世界に行く小説の三割は草原から始まるらしいわよ、げんきくんっ」
「そう……」
聞きたくもないし、知りたくもないよ、そんな豆知識。
とりあえず、キルコゲールから降りよう、降りてあのオッドアイのちびっ子を問い詰めよう。そして日本に帰ってあやめちゃんとデートを続けるんだ、映画館の前売りは今日までだし。
キルコゲールをしゃがませてハッチを開けた。フタの部分は下に開いて玄関みたいになるようだ。
ロボの胸あたりからワイヤー状の何かがでていて、それを持って地上に降りれるっぽい。なんか新型だなあ、昔のロボアニメだと手の平に乗って搭乗したり降りたりしてたね。ワイヤー式が出てきたのはいつぐらいからだろうか。
などと考えながら、みょいんと降りた。あやめちゃんも反対側のワイヤーからおりた。
「愛惜と暴虐の大地、パンゲリアにようこそ、異世界のお客様」
「いやその、ね、君は」
「私の名前はオッド・アイ、さすらいの大魔導師よ」
「オッドちゃんって呼んでいいかなあ?」
「かまわないわ」
「いろいろと説明してください」
「解ったわ、話は長くなるけどいいわね」
「長い話なんだ」
「この世界は今大魔王軍に襲われていて大変なの、そこで私が彼らを倒せる武器を予言者に占ってもらって、ダンジョンで見つけたの」
「ふむ」
この伝説のゴーレムを発掘したのか。
「この、棍棒を」
「……」
「……」
「この棍棒を……」
「まってほしいんだよ」
「まってくれよ」
オッドちゃんはこちらをみて、なによ、という顔をした。
「棍棒じゃない」
「棍棒じゃないと思うんだよ」
オッドちゃんはこちらを見て、お前たちは、いったい何を言ってるんだという顔をした。
「棍棒、よ?」
「なんとか搭乗型ゴーレムというかロボ」
「退重魔獣用最終決戦搭乗型ゴーレムの七番機キルコゲール、って、キルくんは言ってるんだよ」
「ゴ、ゴーレム型……棍棒」
「棍棒じゃないっ」
「ちがうんだよ」
オッドちゃんはこちらを見て口を尖らせた。
「は、話をもどすわね、で、この棍棒は人を乗せると強い力を持つって予言者に予言が降りてきたので、適合する人を探してたんだけど、この世界には居なかったので、異世界まで探しにいったの」
「それで日本に……」
「それは予言の意味まちがえて聞いてると思うんだよ」
「そうしたら、魔王軍のドラゴンも私を追ってきて、でも適合者のカワシマ・ダイサク君とミハマ・ミライが乗ったので棍棒が強くなって」
「……カワシマダイサクとミハマ・ミライって誰?」
「あー、川島君は三組のサッカー部の人、美浜さんは四組の合唱部の人だよ、げんきくん」
オッドちゃんは目を見開いた。
「あなたたち、ち、ちがうの?」
「ぜんぜんちがいます、飛高げんきと……」
「杜若あやめだよ」
「……ええ?」
こっちがえええだよっ!
「あ、地球人なら誰でも適合するって、キルくんは言ってるよ」
「て、適合するなら、それはそれで、その、問題はありません、よ」
「大ありだよっ! 僕は、これから、あやめちゃんとデートだから帰してくれよ、そのあと川島とか美浜つれて来ればいいじゃんっ」
「いいじゃんだよ」
オッドちゃんはなんか、すごいふくれっつらになった。
そして懐から、ひびの入った水晶球を突きだした。
「異世界転移の玉が壊れたから、帰せませんっ」
「「え~~」」