23. 冒険者カードの謎
失敗した、パトリシア嬢との結婚が確定してしまったではないか。
まあ、引くも結婚、進むも結婚で、わりと詰んでいたんですけどね。
「お、お前を、お兄様……、って、呼んで、やっても、いいぞ。ふん」
目を真っ赤にしてぼんぼんがデレる。
特に、嬉しく無いぞー。
「くくく、僕の事は、おにいちゃんと呼ぶのだ」
「え、なんで、そ、そんなの恥ずかしいよ、僕」
「我が君、素敵でした。なんという心の強さとやさしさでありましょうか。我が君は、ケインに、どんな敵と出会ってもあなどる事なかれ、と教える為に、わざとお茶目なまねをしていたのですね。さすがは我が君です」
「そ、そうだったの、お、おにいちゃん!」
しまった、この世界の奴は基本的にちょろいのであった。
ケインをからかってると、マッハでデレられてしまいそうだ。
僕には無口な妹はいるのだが、弟はいなかった、だから男の子におにいちゃんと呼ばれるととても新鮮だ。
ちなみに僕の妹のひかりは「……兄よ」とか呼んでくる。
なんかマッチョな騎士の人たちが、僕の周りに、わやわやと寄ってくる。
「おい、エビ小僧、おまえすげえなっ」
「エビ小僧、俺にもジュウドー教えてくれよ」
「おまえ、姫様と結婚すんの、だったら上司じゃん、よろしくなエビ」
「エビ小僧ってなんですか」
「お前のあだ名」
なんだ、この、フランクだが、基本的に失礼な騎士団は。
僕がケンリントン家の婿となった暁には、抜本的な改革をしなければなるまい。
いや、婿なんかまっぴらごめんですけどね。
あやめちゃんは、褒めてくれないのかなあ、と探してみると、ちょっと遠くで、オッドちゃんとなんか話している。
しょうがないなあ、と、褒めてもらうためにあやめちゃんの方へ移動する。
「あ、大変だよ、げんきくん、冒険者カードを見せてほしいんだ」
「え、なんで?」
僕はズボンのポケットから冒険者カードを出して、あやめちゃんに渡した。
「やっぱり、職業が変わってる」
あやめちゃんが、僕の冒険者カードの裏を指さした。
そこにはパンゲリア文字で黒々と「柔道家」との職業名が書いてあった。
「な、なんだ、これ、柔道家?」
「わたしのは、これなんだよ」
あやめちゃんのカードには「管制員」と職業が書いてあった。
なんだこれ?
「オッドちゃんの職業名は?」
「私のは最初から変わって無いわよ。「旅人」で固定ね。私は旅人以外の職業名は、「王様」しか見た事ないわね」
「勝手に切り替わるの?」
「特別な職業になると、切り替わるみたいね。でも勇者でも普通に旅人のままよ」
「それどころじゃないんだよ、げんきくんっ、名前の横!」
わ、名前の横に、「5レベル」って書いてある。
あやめちゃんのカードにも「5レベル」、もしやオッドちゃんは999レベルか、と思って見たら、彼女のカードにはレベル表記自体がない。
僕のカードには、職業欄の下にも、何か書いてある。【徒手格闘】って何? もしや、スキル?
あやめちゃんのカードにもあるけど、字が違う、【応援】とあった。
あの、回避率と命中率が三十パーセント上がったような効果の事?
オッドちゃんのカードには【ぼっち】とかありそうだと見たのだが、彼女のカードのその場所は空欄だった。
「なんだろうこれ」
「なんだろうねえ」
「応援は効果あったよ、決闘の時、回避率と命中率が三十パーセント上がったような感じになったよ」
「ほんと! それって、スキル? スキル?」
「オッドちゃん、ギルドカードって何?」
「え? 太古の昔からある、冒険者・浮浪者等の取り締まりを目的とする身分証明カードシステムよ」
「どうやって発行するものなの? 発行する機械はどこで作ってるの?」
「カード発行の魔法機械はダンジョンからけっこう沢山産出されるのよ。超古代の遺物で、中身や仕掛けは、よくわかってないらしいわ」
「不思議だよ、げんきくん」
「不思議だね、あやめちゃん」
なんだなんだと寄ってきた、パトリシア嬢とぼんぼんのカードも見せてもらった。
両方とも、名前と職業名旅人の表記だけだった。
カードの色は勝手に変化するのかと、オッドちゃんに聞いたが、あれはカード発行の魔法機械の上にカード材料を入れる場所があって、そこに金属を入れると、その材質のカードが発行されるらしい。
僕のカードの色は赤銅なんだけど、なんの事は無い、材料の所に銅貨を入れるからだと判明した。
なーんだ。
ギルドで色々と依頼をこなして、功績ポイントを規定の数だけ溜めると、ご褒美に別の材質のカードに切り替えてくれるらしい。
銅・銀・金・白金・神銀の順番で位が上がっていく。
ちなみにパトリシア嬢のカードは金で、ぼんぼんのは銀だった。
私の神銀カードは大陸に五人も居ないのよ! とオッドちゃんが威張っていたが、たぶんそれはきっとボッチの証なのだろうと思い、僕は目頭が熱くなった。
あやめちゃんのスキルっぽい【応援】を試してみた。
どうやら、普段の状態では【応援】をかけても、なんの効果もないが、敵と対峙している時に【応援】をかけると、回避率と命中率に三十パーセントぐらい加算されるようだ。
まあ、ステータス表示も無いので体感ではあるのだけど。
肉体強化の魔法なのかなとオッドちゃんに聞いてみたんだけど、魔力の動きは無いそうで、不思議技能としか言いようがないそうだ。
僕以外にかけたら、どうなるのかな、と、パトリシア嬢にも【応援】を掛けてもらったが、誰にでも効果があるようだ。
これは凄い、凄いぞアヤメ! とパトリシア嬢は興奮していた。
オッドちゃんも掛けて欲しそうだったが、ほぼ無限大に三十パーセント掛けても結果がよくわからないのでやめておいた。
【応援】の効果は、大体、一挙動が終わるまで、僕で言えば、柔道技をかけて、反撃をする、ぐらいの時間まで掛かるらしい。
ケンリントン失礼騎士団の人たちも交えて、楽しく【応援】の実験を繰り返した。
十人ぐらいの複数人の集団にも【応援】は掛かるようで、こりゃすごい、アヤメ、騎士団に入れと、失礼騎士さんたちの勧誘が激しい。
十回ぐらい【応援】を繰り返したら、急に効果が出ないようになった。
なんかポイント切れっぽいんだよ、とあやめちゃんは首をひねっていた。
使用回数制限があるのかー。でも十回でも【応援】が使えるのは凄いな。
睡眠を取るとポイントは回復するのだろうか、それとも時間で回復かな?
「チートに片足が掛かったんだよ、げんきくんっ」
あやめちゃんが、むふーという感じでそう言った。
「僕たちTuee伝説の始まりだね、あやめちゃんっ」
僕も、むふーと興奮している。
【次回予告】
子供は父親の気持ちなど一つも解ろうとしないものだ。
愛のあふれる好漢は、子供の心を先回りして、げんきとあやめにある依頼を告げる。
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第24話
24. 父親の気持ち




