12. メガトンゴーレム戦+女騎士戦 決着
「僕は解ったんだよ、僕のパンチが当たらないのは技が無いからだって、だから技のある格闘技の動きでやれば、戦えるんだよ!」
「げんきくんは別に格闘技の道場とかいったことないよね。習い事は算盤だけだったもん」
「ゲンキ、無駄な事は考えない事だわ、覚えて無い格闘技は使えないのよ」
「いや、ある、日本全国の男子は必ずやる格闘技だよっ!」
「え? そんなのがあるの?」
「ま、まさか……」
「そう、それは、それはっ!」
僕はトラックボール的な物に魔力を注ぎ込む。
キルコゲールは沈み込むように姿勢を低くして、すり足でメガトンゴーレムに近づいて行く。
両手は胸の前だ。
「それはっ!! 学校柔道だああああっ!!」
キルコゲールはがっしりとゴーレムのうなじっぽい当たりを右手で掴み、手首を左手で掴んで体勢を崩す。
腰を下ろして、ゴーレムの足を思いっきり刈る!
『これぞ、名付けて大外刈りだああっ!』
「それは、げんきくんが名付けてないからっ! 明治時代からある技だよっ!!」
「なにいいいっ! 搭乗型ゴーレムでっ、投げ技っ、だとっ!!」
ゴーレムは体勢を崩して大地に叩きつけられた。
バーグさんも頭から転げ落ちた。
とっさに、キルコゲールの手を伸ばして、受け止めてあげた。
『バーグさん、下がっていて、巻き込まれると危ないよっ』
「な、なんだと、敵であるお前が、私の心配をするなぞ……、お、おまえという奴は……」
キルコゲールの手から、バーグさんは森の方へ、ころがるようにして逃げ出した。
キルコゲールは、そのままゴーレムを立ち上がらせて、再び重心を崩す。
ああ、なんだかだんだん思い出してきたぞ、こうして、こうして、こうだっ!
そのままゴーレムを腰に乗せて、
『これぞ名付けて、体落としだっ!!』
「名付けちゃだめーっ!!」
ドカーンと大地に激しく叩きつけられて、ゴーレムの体に大きなひびが入る。
「だ、だめだよ、げんきくんっ! 柔道使うスーパーロボットなんか聞いたことがないよっ」
「いや、いる、ゲッ○ー3だっ!」
「あっ、いるんだった、盲点だったよ、ゲームでめったに3は使わないから」
はい、あやめちゃんを論破。
「こ、これが、ジュードー。ニホンの格闘技……」
よし、このままゴーレムの懐に飛び込んで、背負うようにして、重心は腰にのせてー。
『これぞ名付けて、一本背負いだあああっ!』
「名付けるのやめてー。嘉納治五郎先生が草場の影で大号泣だようーっ!」
ゴーレムは轟音と共に大地に叩きつけられる。
投げ技、というのは、単に敵を転ばせる技では無い。
敵の体重を力に変え、大地という鈍器に叩きつける打撃技なんだ。
ビキビキとゴーレムの全身にひびが走った。
そして、その巨体はコナゴナになって崩れ落ちる。
残骸がチカチカと光って、そして大爆発を起こした。
巨大なキノコ雲が空にむっくりと立ち上がる。
魔石か何かが、魔法的な反応をして、なんか爆発したのであろう、きっとそうだ。
『僕の、勝ちだ!!』
僕はキノコ雲を背に、キルコゲールにカッコイイポーズを付けさせた。
何故か、きらりと光るエフェクト。
「あー、うん、そう、だね……」
「凄いわ、ゲンキ! あなたはなんて強いの!」
微妙な表情で僕をみているあやめちゃんに比べて、オッドちゃんは目をうるうるさせて大喜びだ。
あ、バーグさんがバンパイヤウイングでホバリングしながら近づいてきた。
「ふふふ、見直したぞ、ヒダカ・ゲンキ、恐るべき格闘技術の持ち主だ、お前も魔王軍の恐るべき敵になることだろう」
『あ、うん』
そしてこちらをちらちらと見ながら、なんだか空中でもじもじしてやがるぞ、なにこの人。
「そして、その、さ、さっきは、その、あ、ありが、ありがとう、気をつかってもらって」
『い、いやべつに……』
「ど、どうして僕たちは敵同士なんだろう……、僕は、運命を激しく呪ってしまいそうだ……」
いや、キモイことを言いながら顔を赤らめるなよ、バーグさんっ。
「この僕に芽生えた気持ちは……。いやよそう、この気持ちは、また別の機会に君に打ち明けるとしよう、さらばだ、ゲンキ、また会おうっ」
キモイ事をいいながら、メルヘンポエムホモは空に向かって去って行った。
その気持ちは一生心の底にしずめていやがれでございますよ。
BL野郎め。
僕はキルコゲールをタンクモードに戻して、太い息を吐いた。ああ疲れた。
「ゲンキ、さっきの格闘技は?」
「ああ、あれは柔道といって、日本の男の子は学校でみんなやるものなんだ」
「あんな複雑な技の武道を、男性全員が覚えて居るのね。ニホン、侮れない国」
「みんな忘れるんだけどね、普通は」
とりあえず、ここで一休みしてランチにしようという事になって、路肩にキルコタンクを寄せてから、僕たちはバスケットを持って降りた。
ちなみにコックピットからは梯子が出てて、キャタピラカバーの上にのり、そこからまた梯子で地面に降りる。
人型モードから降りるよりは簡単なんだ。
道の近くの森の木陰に敷物を引いて、僕たちはバスケットをあけた、中身は宿屋で作ってもらったサンドイッチだ。
うわあ、すげえ美味そう。
お昼をとっていると、愛馬ライサンダーにまたがった、パトリシア嬢がポッカポッカと近づいてきた。
「な、なんかご用ですか?」
「あー、そのー」
パトリシア嬢は馬から下りて、僕たちに近寄ってくる。
あ、兜を脱いだ。
……。
うわー綺麗な人だなあ。すごい金髪、深い湖みたいな蒼い目。
ポンキュッポーンなくびれがあるすばらしいプロポーション。
見上げるばかりの、見事なおぱーい。
だが、甲冑だからな、偽おぱーいの可能性もある。
油断する事は、できない。
「ゲンキ殿……」
「なんですか?」
もぐもぐ、もー、ハムの風味とシャキシャキレタスとふっくらパンとバターの味わいがですね、口の中で押し合いへし合い磨き合いをいたしまして、たいへん幸福なんで、なんか言いたい事があるなら、すぱーっと言って欲しい物でございます。
「き、君が私の婿となることを、特別に差し許そうではないかっ!!」
パトリシア嬢は、真っ赤になって手を広げ、怒鳴るようにそう言った。
「な、なんですってっ!」
「なんですって、だよっ!」
もぐもぐ……。
【宣伝】
ハーレム、それは漢の夢、幾百万の漢がそれを求め、そして消えて行く。
愛と欲望の狭間で、げんきは何を見るというのかっ!
なろう連載:オッドちゃん(略
次回 第13話
あつまれ、残念美少女ハーレム