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彼女の臭いが

 199×年 俺は魔法の炎で包まれた。


 と思ったら大丈夫だった。確かに炎がこちらに向かってきて、俺に当たったかと思たのだが何もない。服も焦げてないし、一体何が起こったのだろう。

 どうやら向うのエルフも予想外だったらしく石を飛ばしたり水を飛ばしたりしてるが、当たった瞬間に消える。もう一人の背の低い方は何やら別の魔法を使ってるらしいが、やっぱり俺には何の影響もない。

 どうしようかと思ったら、電動ガンをまだ持ってる事に気が付いた。本来人に向けてはいけないが、効かないとはいえ魔法で攻撃されている以上そんな事も言ってられない、エルフ二人組に向けて引き金を引く。当然普通に当たるのだが、向うは何か知らないがえらく驚いてる。

 これはチャンスとばかりに殴り掛かったら、これがまた滅茶苦茶弱い。人並みに喧嘩位はしてるが、大人でこんなに弱い奴初めて見た。

 そもそも、パンチもキックもしてこない。魔法を使ってくるのだが、何故か俺に当たる瞬間に消える。俺もよく判らないが向うはもっと訳が分からないみたいだ。

 ラウラの話からここがファンタジーの世界であることは何となく理解できたのだが、俺が異世界人で魔法の無い世界から来たから魔法が効かないのか?

 こちらが蹴りを出そうとすると向うは手を出して何か結界みたいなのを出すのだが、俺の体が触れる瞬間に消えるので無意味だ。なんだこりゃ、楽勝じゃないか。

 そう思ってたら、背の高い方がナイフを出してきた。へろへろの動きで振り回してるだけなのだが、やっぱり刃物は怖い、ちょっと離れて電動ガンで撃ちまくる事にする。向うはやはり結界みたいなのを出すのだが、BB弾が当たると消滅して普通に相手に当たる。

 向うが慌てて顔を庇ったせいでナイフを落とした。また振り回されたらおっかないのでナイフを拾う。そのままナイフの柄で殴ろうとしたのだが、今度は結界みたいなのに弾かれて当たらない。何が何やら。

 とりあえず蹴りは普通に入るので、蹴り倒してあげた。


 俺の前にはエルフが2人横たわっている。恐らく足に来て立てなくなってるのだろう。良く見るとちゃんと耳が尖ってる。ファンタジーのアニメみたいな長いわけでなく某SF映画の登場人物みたいな耳だ、そして対してイケメンと言うわけでもない。俺の方がとか思うが、客観的に見てどうかは知らない。

「人間風情が我々エルフに手を出してただで済むと思ってるのか」

まだ上から目線で脅してくるので、ちょっと立場という物を判らせてあげる事にする。とりあえず背の高い方の股間に蹴りを入れたら、エルフもちゃんと付いてるのか悶絶してるので、もう一人に言ってあげる。

「このままてめーらが死ぬまでケリ入れてやってもいいんだけど、人間風情とやらに手だしてタダで済むと思ってるのかい」

 はい、お財布頂きました。中身はお札…な訳がなく、金貨と銀貨と銅貨が何枚かづつ入ってた。やっぱりここ異世界なんだな。


 二人組が見えなくなるまで確認してから、ラウラに半分あげようとした。

「いや、そんな大金頂いても困ります。私が持ってると変な詮索されていまいますから」

だそうだ。仕方ないので金貨は俺が貰って銀貨と銅貨をラウラにあげる事にした。やたらと感謝されたが、元々俺の金じゃないし持ってても俺の世界じゃ使い道が無い。金貨を日本円に変える方法なんて知らないし、どこで手に入れたか説明する自信もない。

「私は体しか貴方に差し上げられるものがございません、ここでいたしますか?それともどこかに移動してからにされますか?」


 ん?ちょっと待て、それは要するにヤろうと言ってるのか?やったね俺も卒業だよ。ってありえないから。別に同情でも親切でも何でもない、ただ単にラウラが


臭いんだ


 いや汚いし臭いし無理無理本当無理。それならちょっと綺麗にしてよ、鼻つまみながら卒業とか嫌だよ。ごめんよ失礼な事言ってる自信はあるけど生理的に無理だから。

「いやいやそういうの本当にいいから、それよりそのお金で少しでもいいもの食べて体を清潔にして。明日この町を案内してほしいんだ」

「明日もまた来ていただけるのですか?」

「そう、だから体を洗ってしっかり綺麗にして待っててくれ。何か服も持ってきてあげるよ」

 二人で例の研究室がある建物の前まで来ると、ラウラが怯えてる。

「この建物の中に魔法の扉があるのですが、誰も開けられないので何か呪われてるとか言われてるのです」

「え、でも俺その扉の向こうから来たんだよ」

 ラウラが腰を抜かさんばかりに驚いている。ちょっと怯えたようにしてるが、少し考えてから言った。

「あの扉の中からは悪魔が出てくると言われてましたが、神様がいらして頂いたのですね。神の力である魔法が効かないのもそれなら判ります。神に神の力が及ぶ訳が無いですから」

 やばい、変な誤解してる。

「そんな事無い、俺は普通に人間だって。何なら扉の向こうの俺の家に来てみるかい?」

…来てもらったら風呂に直行だけどな。

「神様の世界に行けるのですか?身に余る光栄ありがとうございます」


 研究室がある建物―普通に廃墟らしいが―の中に入って、扉を開ける。俺が先に入ろうとすると、手に持ってた金貨の袋がどうしても通り抜けられない。ひょっとしてと思ってラウラに扉に入るようにお願いするとラウラも通り抜けられないみたいだ。

 つまり、日本側の人や物しか通り抜けられないという事か。ラウラは残念がっていたが、とりあえず明日また俺が車で留守番をお願いしておいた。金貨も持ち帰れないのが判ったらラウラが預かってくれるらしい。俺の為にしか使わないと言ってたので頼むから体を洗ってくれ、臭わなくなるのが一番俺の為だ。


 とりあえず、誰か他の人に出入りされると困るので、両開きの扉の取っ手の部分を自転車のチェーンで鍵をかけた。

 また明日探検しよう、楽しい事になって来た。

エアガンは人に向けてはいけません。

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