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×  作者: kojima
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3.真実か挑戦か

翌朝、麻由子はバツの悪さで目を覚ました。


レイの顔が脳裏に浮かび胃が痛くなるようだった。


ケータイを手に取り、麻由子は大樹に連絡すると彼はすぐに返信をくれた。栗栖家まで車で乗せて行くと気前よく返事をくれたのだ。


連絡を取ってから30分ほどで大樹は別荘に着くと、麻由子は東京から持ってきた紅茶の箱を手に持ち外へと出た。


「今日はわざわざありがとう」


髪をかき上げながら麻由子は大樹に声をかけると彼は笑いながら首を横に振る。


「元々栗栖家のプールで遊ぼうとしてたから」


「プール?」


「豪邸に目を回すよ?」


ニコッと笑う大樹は興奮気味に話していた。


大樹の車は更に森の奥へと進み、麻由子は目を凝らす。


「本当にこっちであってる?」


麻由子の問いに大樹は笑みで返すと、車はすぐに停車した。


「ここだよ」


そう言われ麻由子は外を見つめると、木に囲まれたコンクリート調の建物が目に入る。


「すごい…」


急に緊張感が胃に伝わり麻由子は萎縮するも大樹は何もなかったかのように車を降りた。


大樹の後に続き車を降りると麻由子は深呼吸し、栗栖家の玄関へと向かう。


「おーい!レイ遊びに来たぞ」


インターフォンを連続で押しまくる大樹に苛立ちながらレイが扉を開けると麻由子を見て目を丸くさせた。


「あの、仲直りに」


手土産の紅茶を差し出すとレイは微笑み受け取ってくれた。それに麻由子は安堵のため息を零し彼を見つめる。


「家に上がりなよ」


とレイは扉を広く開け2人は栗栖家に入っていった。


大理石の床は土足のまま上がり、まっすぐ進むと大きなリビングにたどり着く。


大きな窓から日が射しており、家中が明るく照らされていた。ガラス張りの家はシンプルに統一されており、栗栖家に相応しかった。


日の当たるプールは気持ちがいいもので、麻由子は足だけを漬けては楽しんでいた。


大樹とレイも水着になりプールで泳いでるところにリナが帰ってきては不思議そうに彼らを見つめていた。


「もう昼時だけど、おかえり!」


大樹は子犬のように手を振る様子にリナは目も向けず自室へと向かった。


「妹が朝帰りとか気にしないの?お兄さん」


大樹の問いにレイは顔を渋らせる。


「自由に生きるのがこの家のモットーだから」


するとビキニ姿でリナがプールサイドに現れた。真っ白な肌に真っ白なビキニはミケランジェロの作品のようで美術品のようだった。


「プールでオレンジジュース飲む人は?」


リナの問いに大樹とレイが笑顔で手を挙げており、リナは眉をピクリとあげる。


「アンタは?」


「欲しい!」麻由子も笑顔で手を挙げるとようやくリナは笑みを向けた。


こうして4人でつるむ事が恒例となったと麻由子は思っていたが、それは夏休みの間だけだと思うと急に虚しくなった。


夕方になると急に肌寒くなり、家の中へ移動する。そしてレイは温かいココアを作りマシュマロまで用意してくれていた。


「うわぁ、リナよりも女子力高い!」


目を輝かす大樹にレイは目を細めて笑う。


「男がココアとマシュマロとかキモくない?」


バスローブを羽織りながらマシュマロを頬張るリナに麻由子は頷いた。


「再来週の日曜日って何か予定ある?」


大樹は麻由子に尋ねると麻由子は渋る。


「特に予定っていうものがないんだよね」


「それなら俺の姉ちゃんの結婚式に参加してよ!」


「え?」思わぬ展開に麻由子は眉をひそませた。


「そんな大事な行事に部外者が参加しちゃダメでしょ?」


麻由子は首を横に振るもレイは笑っていた。


「この町のみんなが参加するよ」


「今年最後の夏休みの締めくくりが結婚式か。いい思い出になりそう」


麻由子の笑顔に大樹もレイもそしてリナも笑って応えた。






麻由子と大樹が帰った栗栖家はやたら静かだった。


ジャケットを羽織りながらプールサイドで横たわりタバコを咥えた兄妹はただ月を見つめた。


「今年の夏休みは満喫してるよな」


ふとレイの言葉にリナが目を向けると頷いた。


「レイは夏休みが終わったら大学の寮に戻るつもり?」


「まぁな…」


タバコを咥えながらレイは答える。


「私も大学行こうかな」そしてリナはそう呟くとレイは目を丸くさせ妹を見つめた。


「大学って?」


「東京の大学に行けばチャンスが増えるだろうし」


「それいい考えだと思う」


するとレイは優しく背中を押したのだ。そんな兄の様子にリナはホッと胸を撫で下ろしていた。







ある日リナの提案により森に湖がありそこでキャンプをすることになった。亮も嫌々ではあったが参加することになり麻由子はウキウキとした気分に浸っていた。


何を着ていくか迷っていると、麻由子のベッドで横になりながらリナは服を決めていた。


「大樹は可愛い系が好きだよ。レースとか来てったらイチコロ」


「別にそんなんじゃ!」


慌てる麻由子を見てリナは不敵に笑う。


「それよりリナはあの外国人とどうなの?」


「何も進展ないよ?Facebookでしか繋がってない」


口角を上げながら答えるリナに麻由子は口を尖らせた。


「でも訳ありでしょ?」


「そう訳がありすぎて訳わかんない」リナの言葉に麻由子は大きな口を開けて笑った。


「なんか毎日が楽しみで夏休み終わって欲しくないな」ふと零す麻由子にリナはフッと息を吐く。


「だから必死になって楽しむ必要があるんだよ」


「どういうこと?」


「こうして話してる間に時間が過ぎてるわけ。時間短縮しなよ」


「時間短縮?」


「大樹に気持ちを告げるってこと」


「え?無理無理無理!」


全力で首を横に振る麻由子にリナは意地悪な笑みを浮かべる。


「青春できるのも今のうちだって」


「うーん…」


顔を顰めさせながら麻由子はケータイを握ると大樹の番号にかけた。


『どうした?』


元気な大樹の声に麻由子は緊張した表情になるとリナは腹を抱えて笑っていた。


「今平気?」


『うん…、まじでどうしたの?』


麻由子の様子に大樹の不安そうな声が電話越しで聞こえてくる。


「いや、大したことじゃないんだけど…」


口ごもる麻由子を見てリナはもういいと電話を取った。


「もしもし大樹?リナだけどさ、明日アンタに話あるわ」


『え?リナ?どういうこと?』


混乱している大樹に構わず電話を切るリナに麻由子は首を傾げた。


「ごめん、いじめ過ぎた」


「え?冗談だったの?」


驚く麻由子にリナはニヤニヤと笑みを浮かべていると麻由子は脱力した様子でベッドに倒れ伏した。


「でも私が押さなきゃアンタら絶対行動に出ないってこともわかった」


呆れた、とタバコを咥えるリナを見て麻由子は慌てて止める。


「うちの家族誰もタバコ吸わないから!」


「オッケー…」


リナはため息を吐きながらタバコをしまうと麻由子はフッと笑った。


「いつか仕返しするから覚えててね」


「うー、怖い」棒読みなリナに笑う麻由子の声が隣の部屋まで響いており、2人の声に亮は興味津々の様子で壁に耳を当てていた。


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