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ずっと貴方が好きだったの。
でもね、貴方が私じゃなくてあの子の方が好きなのも知ってたの。
貴方は、あの子を自分で汚すことを何よりも恐れていた。
だから私を汚したの?
私を彼女に重て愛したの?
そこには私への愛なんてこれっぽっちも無いのね。
あの子は何も知らずに笑っていて、貴方もそれを見て笑っている。
そこに私なんて最初から居ないのでしょう?
貴方が憎かった。
でも、それ以上に好きだったの。
やがて、貴方とあの子が結ばれてしまうのも分かっているわ。
でもね、私ね、それでもね?
ピーターは多分、死の恐ろしさを理解したがっているだけだ。
何せ、アイツは元が人間だから。
いや、普通の人間なら出来れば一生味わいたくないはずだからやはり、彼はもう人間ではないのか。
「....メンドクサイ奴」
サントリナは足を組んで、庭の木の陰に座り込む。
その姿はまるで、この世の物では無いような恐怖と、人を魅了する現実離れした美しさが共存する、という不思議な物だった。
「隠れん坊なウェンディを掴まえるには、彼は純粋すぎる」
彼女は満足げな笑みを浮かべると、その黒くて艶やかな尾を揺らす。
悪魔の尾を。
「そういうの、見苦しくて結構好きだなぁ」
ニンマリと見た目には似合わない怪しい笑みを浮かべて少女、サントリナはその金色の目で何時の間にか目の前にいた仮面の少年を満足げに見つめる。
「お前も、見苦しいと思うだろう?あの自殺少年。」
「________。」
「ふぅん、あっそ。この偽善者が。」
お尻を払い、サントリナは立ち上がると仮面の少年の横をすり抜けようとする。
「_________。」
「....あぁ、安心しな。アイツは死なせはしないさ...あんなに面白い玩具、この先絶対にお目にかかれないからな。」
「____。」
「あぁ、そうだ。私は悪魔さ。」
ケラケラと笑いながら少女は尾を揺らして、羽毛の無い羽根を羽ばたかせた。
「.....死に損ないの、な」
途端に強い風が吹いたかと思うと、すでに少女の姿はなく
仮面の少年がただ静かにそこに佇んでいるだけだった。