⑥ 姉妹?
「ちょっと?…ちょ、ちょいちょい………世界休め?」
「世界休め…さん!??……」
あ、あの火の玉…寝た…???「おやすみ」って言ったよな……???あ、どうすればいいの…おれ。…いきなり1人に、独りぼっちに戻っちゃった…。え、ここからなんのチュートリアルも無く“おつかい”スタートですか…。不親切設計だなぁ。まあ、いいや。取り敢えず、能力のひとつは借りたしこのまま森を出て──
「─…おいっ!!誰だ?なにしてる!?」
うおっ!!!?び、…びっくりしたぞ…マジで…。女の声…!?誰かいるのか?…人影が2人分いるな。逆光でよく見えない…けど、おれにはさっきの『我が身可愛さ』がある…。なんかあっても…大丈夫…なはず。誰だ…??こっちにどんどん近づいてくる。ヤバい、死んでんのに、なんか心臓のとこが痛くなってきた。不安要素の塊だ。まさか、この人たちもおれと同じ“流霊”ってやつなのか?
「おい、そこの緑髪のガキっッ!!!お前だ、お前!!!」
「ミドリガミ…?…は?」
2人の顔が見えた…。2人とも女…てか、おねーさんだ。怒鳴ってきた1人は黒色ショートの女。目がツリ目で気が強そうだ。もう1人の方はと言うと……。で、…デカすぎる…あ、デカすぎるって背のことね。ヤバいな、あのタッパ…。外国のバスケットマンなんかより全然デカいぞ…。顔は幼い感じの童顔なのに軽く2メーターは超えてるぞこの人…。
というか…この人たち。“巫女さん”じゃん…。服が絶対そうだもん。世界休めを封印した人の仲間…?
おれ、殺されるん?速くない??詰んだ?
…!いや、敵かもしれん2人の情報も大事だけど…
ミドリガミ…“緑の髪”って言ってたな…おれのこと?…
……は?
おれの髪の毛…緑色になってる??!!!
てか、髪も…髪も伸びてる!?呪いの人形みたいに…!!宇宙人みたいな感じになってしまった。
キモチワルイ!!!!…なんで……???なんでだ???なんなんだ!?!?
「…さっきから何言ってやがる。おい、水月…このガキ、捕まえとけ!!!」
「お姉ちゃん…この子、怖がってるよ?」
…って…。髪もめちゃくちゃ気になるけど……。
…“すいげつ”…。名前かな?“水月”か?
白くて長い髪をおさげにしてるデカいおねーちゃん。
この黒髪の方を“お姉ちゃん”って言ってるな…。姉妹…かな?にしても似てないな…性格も体格も…。
その白い髪の方のおねーちゃんが…俺の目の前でしゃがんできた。いや、それでもまだまだデカい…。いつも何食べてるんだろう…?いや、そんなことは今は…髪も気になるけど……。
「君…大丈夫??何処から来たか分かるかな?」
「この、森の中から…だけど…。」
「起きたら…最初からここにいて…そっからは分かんない。」
「…そっかあ。怖かったね…?よしよし…。」
このおねーちゃんめちゃくちゃ良い人だ。すぐわかった。全然、目が怖くない…。ちょっと恥ずかしいけど…頭撫でてくれた……。なんか、久々…な、気がする。前のことはもう、まったく思い出せないけど…。それでも、なんかあったかいや…。
「甘やかすなよ水月。ガキだろうが此処に居た以上、見過ごすわけにはいかん。」
にしても…今日は“ガキ”って言葉をよく聞くなあ……。嫌な気分になるからあんまり嫌なんだけど…。見過ごさんって……逃がしてくれないってこと?そういうことなのか。もしかして、世界休めのこと…で、かな?
でも、おれにはさっきの能力がある…。…あ、まだ…あるよな?力、なくなってないよね?なんか…いきなり不安になってきたなあ…。
「分かりましたよ、お姉ちゃん…。君、名前分かるかな?」
「名前は茅蒔…です。歳は10歳。」
「へえ〜!!凄い凄い!“歳”まで覚えてるんだね!!普通、この世に流れてきた子は覚えて来れないんだよぉ…!エライねえ〜!」
「エラくはないけど…おねーちゃんたちも、“流霊”っていうやつなの?」
その時、一瞬だけ空気が張り詰めた──
「待て…。おいガキ…。
なんでそんな言葉を知っている…?誰に聞いた…?」
黒髪の巫女…。せっかく優しいおねーちゃんと喋ってたのに…目が怖いんだよなあ。何もしてないのにおれ。取り敢えず、正直に答えとくか?まだ、敵意は感じられない。上手く行けばこの森を一緒に出られるかも──。
「世界休めってのに会って聞いた、ついさっき。」
「あ、今は居ないけど……。」
「……は?
今なんて、言った……??」
あ、どうしよ。間違えたかもしれない。言わん方が良かったかもしれない…。怒らせた??なんで?もしかして世界休めは、ワルイヤツだった…?
どうしようか…。名前だすんじゃなか──
──ガシッッッ
「その、“世界休め”は何処に行った!!!!??」
「う、う…ぐぅ!?…かは…」
「ちょ…ちょっと…!!!お姉ちゃん!!!!」
なんだ……この女…!おっかねえ巫女だ…!おれの巫女さんのイメージ像が破壊されていく…。いきなり、胸ぐら掴んできやがって…。く、苦しいまじで…。あと、握ってくる爪が痛い………!!痛いって!!ちゃんと切っとけ………!!バカ!!…まったく……いや、…それどころじゃない………足が地面から離されてバタバタする…。持ち上げられてる…!くそ…くそっ…!!苦しい…くるしい──
──バシッッ!
「─…!!!?な…ガキ、なんだ…ソレは………。」
「がはっ……はぁ…はぁ……
え?え?なに??なんかおこった……??」
…!!
…“超能力”だっっ!!!!『我が身可愛さ』が守ってくれたんだ!!…いや、でもなんかヘン…
おれの…おれの手…は動いてない…?違う…
…どれだ??
どれで防御した??どうやって乱暴なねーちゃんの腕を…はじいた…??
「──!!!!お姉ちゃん……これって……」
「まさか……まさか……寄生…してやがんのか…………?!」
「え…、寄生…???」
─ふたりの目は、おれの頭の上を見ていた。
緑色に変色した、ウニョウニョ動く
おれの髪の毛を。




