⑤ オートマ?
「なにすんだよ!!!…たまたま、剣に当たったからいいけど!…はぁ…デッカイ声でた…。ビビった〜…」
「まあまあ、ちゃあんと守ってくれただろ、右手が。」
右手に僅かな熱を感じる。
…そうだ。さっきまで放置していた“この剣”が防御したのである。
いや、少し違う。
『右手』だ。右手がひとりでに動いて、剣を拾い防御した。
物凄いスピードで、だ。
茅蒔は、あの一瞬──右手を強く引っ張られる体験をした。
ソレだけを覚えている。
まるで後ろから服をグイッと…イタズラされる時の様な。
茅蒔はその身に沁みて理解した。
ステレオ能力という特別な力を。
フッと、我に返った茅蒔はその力の主に説明を求めた。
「どうなってたの…?おれの右手。」
「言ったろ?ついさっき貸したボクのステレオ能力の内のひとつ、『我が身可愛さ』だよ〜ん。敵意・危険が迫ったら身体が勝手に防御反応を取るようにプログラムされてる。まさに“考える盾”みたいなもん。ま、名の通り自分自身しか護らないんだけどね。」
世界休めは自慢げにつらつらと解説しだした。
コレが、茅蒔の最初の力──
「防御に特化した力」であった。
「す…すげぇーー!!!…“AIの防御”って感じか…。シンプルだけど、魔法みたいだ…。でも、コレって、ナニを立体化してるの…??盾?」
「『自動防御』という名の概念さ。立体化されるモノは物質だけとは限らない…。素敵だろ?」
茅蒔はその力と設定の構造に感動を覚えた。
こ、こんなのがあと5つもあるのか…!と、興奮もした。
こんな凄い能力をおれなんかに貸してくれるのか?と、茅蒔は感情が大渋滞だ。
これだけでも、流霊としては破格な強さだ。
世界休めは更に茅蒔に魅力的なひとことを告げる。
「言っとくけど、別に右手だけじゃないよ。キミの全身全霊が『我が身可愛さ』の“念力”で強制的に防御反応を取るようにできてる。ま、そのなまくら刀は一応、持ってたほうがいいかもね…。キミ、生身だし。」
「…そうなんだ。やっぱすげぇ…!。ねね!世界休め!もっかい撃ってよ!さっきの!」
「…めんどくさいなあ。ま、いいけど…。───…はい。」
ボン!!ボッ!!ボンッ!!!と、今度は連続攻撃を放つ世界休め。
しかし、予想の通り茅蒔の右手はそれを簡単にあしらっていく。
「ホントに身体が勝手にめっちゃ動く…!!!あんなに重い剣を…おれが…おれが…振り回してる…!!おれ今!めっちゃ剣士してる!」
「今日一番、楽しそうでヨカったね…、チマキ。」
第1番目の能力をコレでもかと体験したチマキ。
楽しむ中、ある思いが一つ。
「コイツは、こんな超能力持ってんのに封印されたんだよな……?」と、世界休めを封印した“とある巫女”の存在が気になって仕方がないといった様子だ。
あの世界休めが簡単に倒される…。
茅蒔は段々と、自分がやり遂げようとしているコトのスケールの大きさに薄々と気づかされていく。
途端、世界休めは眠そうな口調で話しかける。
「お楽しみのとこ悪いんだけど…そろそろボクは、休憩させてもらうよ?」
「えっ?休憩…??」
「そ、無闇に幽気を遣ったからね…。そろそろ休憩。」
────ヒュンっ。と今度は世界休め本体が茅蒔目掛けて飛んでくる。
茅蒔は脳内で防御指令を出すも、その霊体は何もしない茅蒔を呆気なく通過した。
───ボシュ…ボォオウ……。
まるで、焼き付くかのような音。
しかし、全くをもって熱さは感じない。
それどころか、生暖かい感触が茅蒔を包み込んだ。
「うわ!!!熱っッ!!!!なにすんさ??!!!…てか……あれ、熱くない…??」
「…キミの幽体を乗っ取った…。これからは…キミの中で過ごさせてもらうよ?…。」
「…はっ?中って?!…え!?」
茅蒔に発火した世界休め。
カラダ全体が緑色の炎に包まれてしまうというショッキングな外観なのだが、当の本人の茅蒔はなぜか心地よさそうな表情である。
まるで温泉に入ったような…コタツに入ったときのような…
小規模な極楽感をその身に一瞬だが感じた。
そしてその火は次第に消え失せていく───
世界休めの存在感が無くなっていくかのような…
茅蒔は、そう感じ取っていた。
途端、茅蒔の体内、いや、脳内から声が聞こえてくる。
「…要領良く…、やれよ…。ま、どうせまた会…えるからさ…ふぁ〜ぁ……。」
「… …世界休めさん?…ちょっと!?まだ色々聞きたいんですけど!?」
「…おやすみ… …茅蒔…。」




