一章 〜さいふういん?〜
異様な空気感が二人を包むように漂う。
言葉の意味がよく理解できない茅蒔。まさか、殺されるのでは…?そんなことが頭の中で交錯していた。
「えっと…さいふーいん…って、なんのこと?…」
「文字通りだよ、茅蒔クン。」
「キミさぁ…起こしたよね?ボクのこと。」
「え!?そうなの?!ごめんなさい!!」
よく分からないまま年相応のストレートすぎる素直さを発揮する茅蒔。取り敢えず“起こしてしまった”という事実を飲み込み、両手を合わせて謝る。
「罪悪感があるなら、できるよね?“おしごと”。」
「…えと、えと…!ね〜むれ〜…ね〜むれ〜…?」
「…子守唄だろそれ多分…違うから。キミがやるべきことはただひとつ、ボクの再封印を手伝ってもらう。」
茅蒔の天然ボケを軽くツッコみ、淡々と諭す様に世界休めは自分の要求をぶつける。
「さいふーいん、だっけ?…おれ、むずかしいことできないよ?なにするの?」
「んー…そうだなあ…。説明するとなるとメンドいな…。」
「あ!もしかしてこのきたない剣で世界休めをもっかいさすとか?」
茅蒔は興味本位で火の玉の姿を持つ世界休めをチョンチョンとつついてみる。しかし、まあ当然なのだろうが、その切っ先は火の玉をただただ通過した。
「ムリムリ…、“この世”の万物じゃボクは殺せない。あと、そんなふらふらで振り回さないでくれる?」
「…こうかがない…ようだ…」
茅蒔は少しガッカリしながら、内心ではワクワクしていた。
これからどんな内容の要求があるのか?、『ところでこの“世界休め”ってナニモノなんだ?』─そんな感情を抱いていた。
「話戻すよ…再封印はね…。ボクの“力”がいるんだ。よく覚えてね?その力は《神通力》といってね…。超能力みたいなもん。」
「ほうほう…!ひっさつわざみたいな感じ?!」
「例えを例えるなよな…。ま、いいや…ボクの神通力は名と同じ《世界休め》って言ってね…。ま、字面から想像できる通り、まさに封印術のような“力”でね。」
「え、じぶんの名前をひっさつわざにしてるんだ…。」
一度に色々な情報がまだ幼い茅蒔に飛び交う。
この世に超能力のような存在があることを認知した茅蒔。その瞬間─翡翠色の火の玉姿の世界休めは茅蒔が持ってる剣に燃え移る。まるでこの剣になにかあるかのように。驚く茅蒔を横に更につらつらと説明しだした。
「でも…とある巫女に、キミが今持ってる“鏡返しの剣”で《世界休め》の効力丸ごと取り込んだ状態で貫かれ、ボクは自らの力によって封印…。さらに神通力を六つに砕かれるおまけ付き、っていうワケ…。ここまでおわかり?」
「え〜?じぶんにふういんされたの?だ、ださい…。」
「…段々気安くなってきたね…。ま、いいけど…」
世界休めはザクザクと自分の痛いところに入り込んでくる茅蒔にムッとなりながらゆらゆら揺れている。
「?でもさ、なんで“さいふーいん”?それはなんで?そのきってきた人をたおしたいとかじゃなくて?」
「変なとこで感が鋭いね、キミ…。」
世界休めは茅蒔が握りしめている剣から離れると再度、茅蒔の目の高さまで浮遊しはじめた。そしてゆっくりとまた語りはじめた。
「ずーーーっとずーーー…っと、眠らせ続けられて…変な話、“これも悪くない”ってなってね。数百年は寝てたんじゃないかな、めんどくさいから数えてないけど。」
「じゃあ…じゃあ!!せかいやすめは…100さいってこと!?!」
世界休めは自分の心情を語るも、茅蒔は自分より遥かに長い年月を生きている世界休めに興味が尽きない。
「まあね。そんでその100歳程のボクを誰かさんが叩き起こしたってワケ。」
「…おれ、めっちゃワルモノみたいじゃん…。」
茅蒔はちょっぴり罪悪感を覚えた…。




