㉗ 赤髪の少年
コレールとの戦いが終わって、おれは宿で3日間も寝ていたらしい。
流霊として、おれの存在が無くなるまで後、12日しか無くなってしまった。
結局、コレールとの戦いで得られた固霊への昇華の情報は何も掴めなかった。
しかし…おれには、頼れる仲間が“ひとり”増えた。
【──茅蒔殿、お目覚めか?】
「おお…ヒューク!おはよう!おれ3日間も寝てたらしいけど、元気でやってた?」
【“怠惰”の名に恥じぬ寝っぷりだったぞ。ワタシはワタシで修行をしていたところよ。】
「…修行?それ以上強くなんのか?」
ヒュークはそう言うと、翼を折りたたみ、縮こまるように身体を丸めはじめた。
まるで…凝縮するかのように。
やがて、ヒュークは小さな球体の様な形に成ってしまった…。
な、なにが始まるんだ…!?
身構えたその時、ヒュークが幽気の光で少し輝き始めた。
そして、その“姿”におれは驚愕した。
【───どうだ!茅蒔殿!!】
「…めっちゃ小鳥サイズになった…?!すご…どういうシステム……!?」
【なあに、少し『存在感』を弄くっただけのこと。元の姿にだって一瞬で戻れるぞ!】
「ホント…なんでもありだよな。コンプレックスって…。」
ヒュークはパタパタと羽ばたきながらおれの肩にとまり、そう言った。
3日間、水月ねーちゃんと一緒におれを看病兼、この小型化の修行をしてたらしい。
生まれてからの今まで、小さい化身態になんぞなろうとも思わなかったらしいからな。苦戦したんだろう。
まあ、ヒュークは流石にデカいし目立つからなあ〜…。しかも、確実にコンプレックスってバレる見た目してるし。
この修行はおれにとってもいい結果なのかもしれない。
このサイズなら、同行してても自然だし。
【そういえば…茅蒔殿。残りの余命のことだが…】
「残り…12日だ。う〜ん…はやいとこ見つけないとなぁ〜〜。そういや、あのふたりは?」
【この地を探索しておるようだ。茅蒔殿はお疲れの様子だったからな。宿を探しに、この町まで歩いたきた次第よ。】
「なるほど〜…迷惑かけっぱなしだなあほんとに。助かったよヒューク。」
そんなことを話していると、部屋の扉が開いた。
「よぉ、目覚めたようだな?おまえ爆睡してたなマジで。」
「風月…!!お、おはよ〜…!はは、なんか前もこんなシチュエーションあったような…」
「だいぶ回復したっぽいな。体調戻ったら宿出るぞ。おまえの“後のこと”もあるしな。」
「体調はね…もうダイジョーブ!!よし!外、行きたい!!」
おれは疲れた体を起こし外出した。
日の光と、風月がなんだか懐かしいくらいだ。
おれと、風月と、ヒューク…なぞのトリオだな…。
ヒュークは肩に乗ってるけど。
町並みを歩いてると、なんだか、騒がしいな…?
人もいっぱい居るし、お祭りでもあってるのか?
ん、そういや…
「そういや、水月ねーちゃんはどこいったの?」
風月はいるけど、水月ねーちゃんがいないことに少し疑問と不安を感じた。
また、変なことに巻き込まれてなければいいんだけど…
「おまえのために色々調達しにいったぞ。だが…私も遅いと思ってたトコだ。…もう、2時間は経つな。あいつ何処で油売ってんだか…」
【なら…一刻も早く水月殿を探さねば…無駄足をさせてしまう!】
この人混みの中から水月ねーちゃんを探すのか…
いや、待て…カンタンじゃん?水月ねーちゃんのあの身長なら余裕で見つけれる…!!
ヒュークの言う通り、戻られる前に出会わないと!
「なら、私はおまえらと別れて探す。何かあったら大声出せよ。」
「う〜ん、ならヒュークは空から見つけてくれる?そっちが速そうだし…目も良いよね?」
【効率的だな。了解した。──ワタシは上空から偵察しよう。】
「まあ!なんとかなるでしょ!なら各々、任せたよ!」
風月とヒュークと三手に別れて行動することになった。
空からも探せるのは有難い。ヒュークを腹心にして良かった。
それにしても、この町…いやシティか…?デカすぎるな…ホントに迷子になりそうだ。
いったいどこいったんだろう、探索しながら人混みをかき分けていると、一際目立つ真っ赤な髪色の少年が おれの視野に入ってきた。
おれと同じくらいの背丈…
取り敢えず、手掛かりがほしい。おれは吸い込まれるかのように、その赤い髪の少年に話しかけた。
「あの〜…君、すんごい真っ赤だね〜!」
「ん?…はは、君だって“緑色”じゃん…?」
「あ、たしかに…。あーいや!そうじゃなくて!!人を探してんだけどさぁ〜…協力してくんない?」
「え〜…ヤダなあ〜…メリットないし…」
なんか、世界休めみたいなやつだな…。
そうだよなあ。ギブ・アンド・テイクってやつか?
う〜ん、どうやって協力してもらおう…
「そもそもオレ、君のこと何も知らないし」
「う、…。お、、おれは茅蒔!!10歳!!」
そうだよな、自己紹介からだよな。
おれは取り敢えずの形だけど名乗った。
「チマキ……美味しそうな名前だね…!!ふふ!!それに10歳か〜!!オレもオレも!!!」
さっきまでツンツンしてた少年は、サプライズプレゼントでも貰ったかのように急に笑顔になった。
おれも、それで緊張が緩んだのか、つられるように笑顔が戻った。
「あ、やっぱタメだった!?なんか良かった〜〜!!そんで…えーと、君の名前は…」
「あーオレ?勇凛っていうの!!勇気凛凛のアタマとオシリで───“勇凛”。よろしく茅蒔…!」
「ゆ、勇凛…!へぇ~カッコいい名前じゃん!」
なんか、初めて同年代と喋った気がする…。
久々に楽しい瞬間だった。
今までが、殺伐としすぎてたからなぁ。このギャップな時間がとっても心地良いや。
「てかさぁ…背中のソレ!!剣じゃん!?なに〜?茅蒔は冒険でもしてるの!?…コンプレックス狩りとか?」
「いや〜…そんな物騒なことしないけど。そうだな〜…“捜し物”してるって感じかなぁ!!」
「へぇ〜〜〜……」
勇凛はそう言うと、ベタッと肩をくっつけてきた。
スキンシップが激しいやつだな?!
それとも“この世”じゃこんくらいフツー…なのかな。
「なら、さっきの話の続き。一緒に探すか……ハイ!」
「え、なに…これ?」
勇凛は自分の手のひらを差し出してきた。
「“手ェ”!!!手繋ごう!!はぐれたら困るし……って君、そんな“頭”してるから見つけるのラクそうだね。」
「お互い様だろ〜…ま、ちょっと恥ずいけど…んっ!」
さらにスキンシップを要求してきたぞ。
う〜ん、まあいいか…。別にヤなやつじゃないしな。
手繋ぎかぁ…男同士で……?
女の子と手を繋ぐより恥ずかしい気がする…
…まぁいいや!少し小っ恥ずかしいけど…なんか仲良くなれそうだし…!素直に応じよう!
しかし、勇凛は おれの手を握ると同時にさっきまでの笑顔が曇った。
「……。君、なんか───普通の霊じゃないね?」
その言葉に、少しだけ心がギョッとした。
“敵意”じゃないナニカ…だ。
もしかして、世界休めのことを…感知された…?
「えっっっ…そ、そうかな???ただの流霊なんだけど……!!って、あ!!手繋いでも、良かったんかな…?おれ、流霊だし…」
おれは恐る恐る聞いた。
もしかして、感づいたのは流霊の幽気か…?
だとしたら、手を繋ぐだなんて相当、嫌だったのかもしれない…。
しかし、それは杞憂だった。
「……別にいいけど?なんで?駄目なの?」
「いや…!!駄目じゃない!!…けど。」
流霊差別しないのか。
なんか、たったそれだけでおれの心は勝手に救われてしまった。
「流霊だから───とか、オレにはどうだっちゃいーんだ、茅蒔。逆にオレ 君のこと、ちょっと好きになってきたみたい…。」
「え、……好きって…えええ??もしかして…『友達』…なってくれるの…?」
「…ふふ…“それ以上”かも………ねぇ茅蒔、オレのこと───『勇凛』って呼んでよ…。」
勇凛の顔は、その髪の色に負けないくらい赤くなっている…
なんだか、とんでもないことになった気がするぞ…




