表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/28

㉕ 腹心・ヒューク!


 「ヒューク……」


 目を開ける。

 さっきの閃光がまだチカチカしていて、視界がボケる。

 やっと、目が慣れてきた。

 そこには、戦士が大きな両翼で空を覆うかのような風景があった。


「な……バカな……!? なぜ『雷撃(ギラ)』が効いていない……! それは神にも等しい“憤怒”の力……バズーカ様から授かった絶対の……っ!」


 コレールの裏返った荒々しい声が聞こえてくる。

 おれの視野に現れたヒュークは、その全身に赤白い稲妻を纏わせながらも、微塵も揺らいでいない。

 さっきまでの、瀕死で錯乱していたヒュークの面影は微塵もなかった。

 

【気がついたか、茅蒔よ。】

「おまえ……あの、雷から守ってくれたのか…?」

【───そうだ。】


 ──身体中に黄金の幽気を纏わせている。

 怪我した部分が、その幽気でゆっくりと治癒・再構成されている。

 それどころか、研ぎ澄まされたヒュークの幽気は、借り物の雷すらも己の翼の一部として取り込んでいた。

 そうか、“成功”したのか…!『忠誠』の対象を、移すことに…!

 おれは、気になっていたこと───

 ヒュークが“どちら”に憑いたのかを聞いた。


「ヒューク、おまえ…どっちに…憑いたんだ?あの一瞬で判断したんだよね?」

【簡単な話……。───()()だ、茅蒔殿。】

「あぁ〜〜…おれか!!そっかそっか…。…………、────へ…?」

【それでは……“返すぞ”…!!!拾ってもらった礼だ…!!!】


 その瞬間───

 おれの身体はヒュークの幽気で包まれた。

 たくさんの切傷、疲労、息苦しさが、ゆっくりと癒されていくのが分かる…!!

 まるで、生命力をドンッッ、とダイレクトに渡された気分だ。

 『忠誠心』を取り戻したから、ヒュークの幽気が元に戻ってんのか…?…いや、前よりも増えた!?

 ………というか…!!


「お、おい……ヒューク!?“お主”…って、まさか…おれを『忠誠』の対象にしたのか!!??ケガ治ってんのは嬉しいけどさ…!?大丈夫なのか!?」

【お主以外、誰がいよう。ワタシが決めたのだ。お陰で息を吹き返したぞ、礼を言う。】

「おれで…良かったの…?あっちの巫女さん、ふたりのほうが強いよ…?まじでいいの…?」

【茅蒔殿、クドいぞ。お主の純粋さと献身の心に、ワタシは文句の付けようのない程の忠義を抱けたのだ。】


 まじか、お、おれに…憑いたのか!?

 このヒュークが…!?あのヒュークが!?

 というか、コンプレックス味方にしちゃった!?

 あ〜…まあ、おれもコンプレックスみたいなもんか…!?


「ヒュークゥウ……!!!貴様……!!主を裏切った罪……バズーカ様が許さんぞ…!!!!!!」

【コレール。お主の信仰は、所詮は“恐怖”という名の隷属に過ぎん。……だが、我が新しき主、茅蒔殿が示したのは『献身』という名の絆よ。】


 ヒュークは、自分の胸に突き刺さっていた雷撃の残滓を、素手で引き抜く。


【──貴様のゴミだ。……返してやろう…!!】

「や、やめろ……! や、、やめろぉおおお!! 私はバズーカ様の……ぎあぁああああああ!!!」



 ヒュークが投げ返した雷撃は、コレール自身の傲慢さを焼く業火となり、彼を文字通り「一撃」で沈黙させる。

 バズーカの力を笠に着ていた男の、あまりに惨めな自滅だった。


【茅蒔殿。これで晴れて───ワタシはお主の、“腹心(ふくしん)”だ。受け入れてくれるか…?】

「“腹心”……腹心…!!すんごい…カッコいい響きじゃんか!!!うん!ヒューク!おまえをおれの腹心にする!!!」

【誠に感謝する──。…お主に拾われたこの魂、今この時より、お主の影として捧げよう───。】


 大鷲の頭と翼を持つ人間型のコンプレックス──

 “忠誠心”のヒュークは、今、正式におれの腹心と成った…!!


 さっきまでの張り詰めた緊張感が嘘のように解けた。さっきまで、命のやり取りを、おまえとしてたはずなんだけどな!

 ヒュークは、もう治っているおれを『お姫様だっこ』して、水月ねーちゃんと風月の元まで運んでくれた。

 っていや、いいって!!また抱きかかえなくて!!

 足は動けるから!!立てるから!!そう言ってもヒュークは「まだ陣の中…油断はできん」と言って、警戒している。

 まあ、正直、安心するけどさ?ホントに『忠誠心』の化身なんだなぁと、その姿を見てしみじみ思った。

 気を失っているコレールの近くを通り過ぎる時、ヒュークは静かに言った。


【安心しろ、茅蒔殿。この男はまだ、生かしてある。】

「ん!そうなの?…そんな器用な感じの威力じゃなかった気がすんだけど…。大地えぐれてますけど…。」

【あのバズーカから借りていた『雷撃』だが、あくまでも、()()()()()()『雷撃』──。幽気量も破壊力も訳ない。それを、そのまま返しただけのこと。】

「なるほどな〜…いくら最強の能力を借りても、使い手程度の火力しか出ないってことね。」


 コレールは、そのまま起き上がることはなかった。

 おれはヒュークに抱きかかえられたまま、ふたりの前に連れて行かれた。 

 風月がほんの少し、顔に冷や汗を垂らしながら呟いた。


「……信じられん…。コンプレックスを…従えた…。…茅蒔…おまえ、やはり只者じゃねーな…。それに従うオマエもオマエだけどな…。」

「茅蒔くん…!!!!良かった…良かった……生きた心地がしなかった…良かった…。」

「ふたりとも…ゴメン。迷惑ばっかかけて。」

「ホントに……良かった…!!うう……」


 風月は少しヒュークに警戒する仕草を見せる。

 水月ねーちゃんはその横で、力が抜けたのか泣き崩れてししまった。

 ヒュークは気を遣ってくれたのか、おれを抱っこから降ろしてくれた。

 水月ねーちゃんは直ぐに、おれを抱きしめてくれた。


「水月ねーちゃん…ごめんね。…結局、固霊になれなくて騙されちゃったけど、また会えてよかった!」

「わたしも…もっとちゃんとしてれば…ごめんね…!辛かったね…。」


 今日は、いっぱい抱きしめられる日だ。

 …ホントに、生きてて良かった。

 そんな想いを、胸に詰め込んでいると、ヒュークが不思議そうに語りかけてきた。


【…お主、なぜ泣いている?茅蒔殿はこの通り、生きている。なぜだ?…悲しいのか?】

「あ〜…えと、ヒューク?もしかして、うれし涙とか知らない…??」

【??…なんだそれは?そのような症状か?】


 オイオイ…ヒュークさんよ。やっぱりコンプレックスとやらは、自分の固定観念 以外の感情には疎いのか?

 まあ一応、部下…なんだし?教えてあげるのも務め…だよね!!

 どっかで聞いたことあるような説明口調でおれはヒュークに語りかけた。


「説明しよう!うれし涙っていうのは〜…!言葉通り、嬉しい時とか感動した時とかに流れてしまう涙のことであ〜る!」

「馬鹿!!!自分で言うな…!ったく…心配ばかりかけやがって…!」


 ──ボコッ…

 風月に頭を小突かれました。確かに泣かせてしまってる自分で言うことじゃありませんね…。

 でも、もうちょっと優しくコミュニケーション取ってくれよな〜!!

 すんごい、結構!本気で痛い!!むきーー!!!あとからジンジンしてきた…!!!


「痛ってーーー!!!!…くそ〜…なんで『我が身可愛さ(オートマチックガード)』で察知出来なかったんだ〜…?アイテテ…」

【……茅蒔殿、それは…今の行動は『愛情』なんじゃないのか?敵意じゃないから、()()()()()()()()。…間違っているか?】


 …………。風月と目が合う。

「「ゲゲ〜〜〜〜……!!!!!」」

 初めてのリアクション シンクロ芸である。とても複雑なコンビネーションだ。


【……。()()ていたか……?申し訳ない。】

「あ、あああ、、『愛情』だと〜〜〜…!!?ヒュークだったな!?さっきの闘いの続きでもやってやろうか…?!あぁ〜!?」

【愛情ではない…なら、『慈愛』とかか…?そういや貴様、“一応”巫女だったな…?口調はかなり粗雑だが…】

「“い・ち・お・う”、つったなオマエ……!?よし来い!!!3枚に下ろして、揚げてやる!!!待てコラーーー!!!」

【茅蒔殿!!やめるように言ってくれぬか!!?忠誠心が…『恐怖心』に、、上書きされそうなのだ!!!!】


 さっきまで、目を潤ませていた水月ねーちゃんは、その光景を見るなり「ぷっ…!」と、子どものように笑っていた。

 笑えるほどバカバカしくて、微笑ましいモノでも見るかのような瞳だった。

 いつもの優しくてかわいい笑顔になっている。それをみておれも、つられて笑ってしまった。


「ふふふ…ヒュークさんも、お姉ちゃんも…もう仲良くなったんだね!」


「ってねーーーよ!!!!!」

「っておらん!!!!!!」




───“忠誠心”のコンプレックス。

 ヒューク、おれの腹心になる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ