㉑ 重力の風…!!
このヒュークという、コンプレックス。
大鷲の様なアタマに翼。でも身体は人間タイプ。
体は2メーターは普通に超えてるなぁ。
水月ねーちゃんと、どっちが大きいんだろうか。
翼を含めればもっとだ。
腕を組んでいて、気付かなかったけど両腕の爪も中々に大きいな…。
ブラックを基調とした容姿…。
こうやって見ると“モンスター戦士”って感じでちょっとカッコいいな…ムカつく。
【こちらからいいか…?】
「お好きなようにどうぞ?」
世界休めの存在力。
この、相手の幽気をダラケさせる力は確かに凄い。
だから今、こうして余裕ぶっこいてる訳なんだけども。
しかしね?おれ、なんとこのタイミングで物凄いことに気付いてしまったぞ……。
遅すぎるくらいに…
そう──おれは!
『攻撃する力』が全くといって無い!
…ということだ……!!
これは結構ちょいまず?前に戦った『孤独』のコンプレックスは戦わずして浄化させてあげられたけど…
コイツはどうかな…。浄化…できるのか…?
コイツの『心』を、まだ欠片も理解していない…。
厄介な問題になってきたなぁ〜。
でもやるしかないか!!
【では……】
「ゲッ……飛び道具かよ!!!」
ヒュークは右の翼を天に仰ぎ、羽根の弾丸をマシンガンのように発射してきた!!
どうする…どうする…?!
固定能力の効果の範囲内なのか…!!?
ん、あ…そうだった…。
“何もしないでいい”んだった。
────キィン……カンカンカン!!……。
【ほう…。このスピードを見切るとは…。】
「へへへ…まあね!!」
『我が身可愛さ』…やっぱコレすげえな…!!
なんでもかんでも除外してくれる!
取り敢えず、コレで物理的なダメージは守れることが確定した…!!
でも、長期戦はマズイな…また、幽気切れになる…!そしたら、今度こそアウトだ。
なるべく、早くアイツを『理解』しないと…!
【成程…。流石は世界休めの器というだけはある。子どもとて、こちらも本気で行くしかあるまい。】
「おれ…最初から本気だったんだけど〜…」
容赦のない羽根の弾丸の雨が降り続く。
しかし、おれの髪は高速でそれらを捌いていく。
うっかり腕を伸ばしたりしたら吹っ飛んでいきそうだ…。
埒が明かないと思ったのか、ヒュークは羽根を陽動に自らが突っ込んできた…!!
やっぱ、そうくるよなあ!!?
……!!背後に一瞬で回ってきた…!!ヤバい…?
すかさず、『我が身可愛さ』が動かす髪の剣がソレをいなした。
──ギキィイイイン!!
【ほう…まるで、後ろにも目が付いているようだ…。】
「背中狙うなんてヒキョーだぞっ…!!ていうかさぁ…、ちょっと思ったんだけど…!なんでアンタみたいな、つえ〜のがあのメガネに従ってるのさ?」
【探っているな…?器よ。ワタシの心を。】
「う〜ん…まあそれもあるけど…。純粋に疑問というか…」
なんで、こんなバケモノじみたヤツがあの程度の男の言いなりになっているのか、疑問しか浮かばない。
そういう契約…ってやつか…?
でも、コイツなら問答無用で、力で捩じ伏せれそうなんだけど?
あの、自殺させようとする能力もコイツには…効かなそうだよな…?なんでだ…?
「ヒューク…遊んでんじゃねえ……。アレを使えッ!!」
「別人みたいに口悪くなったなあ…。…って…!!まさか、ステレオ…能力か…?!」
【……了解。】
ヒュークは幽気を翼に込め始めた…。
空間が震え始める。まるで次元が歪むかのような程の圧力が両翼に加わっていくのが分かる。
そして、次の瞬間───
両翼を地面に叩きつけるような勢いで振り下ろした。
──────ゴォオオオオオオオオオ…!!!
──…ドンッ……!!!
「───うぐぐぐ…!!!な、…なんだ……!!!身体が………!!!めちゃくちゃ重い……!!!なんて風圧だよ…!!!!!」
真上から…!空から…!!
まるで、ブルドーザーがズドンと全身にのしかかって来るかのような重さだ…!!
圧迫感がヤバい…マズイ!!!ヤバすぎる…!!!!
『我が身可愛さ』の防御範囲を越えてる…!!!
ぬ、…抜け出せない!!!
風圧で呼吸も出来ない……!!!
や、ヤバい……!!
でも、死なない……!!!!気のせいか?
いや…違うッッ!!!
世界休めの存在力が…
この致命的な攻撃を和らげてる…!?
はは…やっぱホントにすげーな…あいつ。
【“重力”を立体化した風──『業翼』…。流霊ごときの小僧に遣うような力ではないが、貴様をひとりの戦士と認め、この能力で葬ってやる…。】
「………骨が……潰れそうだ……。くっ、クソ……なんか手は……?いや…待てよ……?」
───この剛風…利用してやる…!!!
『我が身可愛さ』!!
おれの考えを実行して!!
想像を送る!!
髪の毛を……『傘』みたいにしてくれ!!
今まで『クッション』や『腕』に変形出来たんだ!!頼む……!!
「おれの…計算が正しければ……!!!!」
────ばいんっっ!!!
【な、…なんだ…!?あの奇妙な髪型は…??】
「こ、…これだーーー!!!!サンキュー!!『我が身可愛さ』!!!!!」
普通、傘は強風に煽られるとぶっ壊れる。
──だがしかし…!!
『我が身可愛さ』と一緒に作った…
世界休めの幽気を編み込んだ“普通じゃない傘”なら……?
壊れないように、 なるべく頑張れる この傘で強風を浴びたら…?
答えは一つ……!!
────びゅううううううう!!!!!!
【…なっ……なんということだ…】
「何ィイイイイ…!!!??あのガキ…!!“脱出”しやがっただとォ!!!???」
「っっっひょおおおお!!!見たか〜〜!!!答えは…『そらをとぶ』…だッッッ!!!!」
クチバシをあんぐり開けて、ただただ見上げるヒュークと、その遠い後ろで同じように見ているコレール。
フヨフヨしてる流霊の体質も上手いこと働いたのか
──見事、圧力の風の檻から吹っ飛ばされたぞ!!
小学生に知恵比べで負けるとは…くっくっく!!
『我が身可愛さ』の知能にも、ほんの少しだけど勝てたのかもしれないな!
にしても、必死に念じて…
協力してくれた時はマジで嬉しかった……!!
ありがとう…『我が身可愛さ』!!
──っし!灯台の高さまで飛んだぞ〜!!
テッペンに着地してポーズ!
「へっへっへ…!!『業風』…攻略成功なり!!」
「クソが…!!ヒューク…貴様…まさか手を抜いたか…!??」
【そんなことは……。『世界休めの器』だからと注意を払っていましたが、本当に警戒するべきは…
あの、小僧自身……!】
ちょっと全身がバキバキで痛いけど…!
希望は、まだおれの近くに居てくれているらしい!




