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一章 〜きみはだれ?〜

ギョロッとしたどんぐりお目目で驚く少年。

そこには翡翠色の綺麗な火の玉がふよふよと揺蕩う様に浮いていた。


「キミみたいなガキがなんでこんな処に…いや、というかどうやって封印を解いた…?」


「え…剣ぬいたら…」


「…マジかよ…あれは簡単に“抜ける”仕様じゃないんだけど…ガキんちょに解かれるとは…。」


人間の言葉を遣い、話し続ける火の玉。

初めて見る超常的な存在に目を奪われる少年。

恐怖で少しだけ震えるも好奇心のほうが勝る。


「“ガキガキ”言わないでよ…おれ茅蒔(チマキ)だもん!」


そういうと少年、茅蒔はまだ持っていたなまくら刀で“茅 蒔”と拙いが読める程度で地面に刻んだ。


「ふ〜ん…名前は覚えてる。…と。歳は幾つ?」

「ろく!!」


えっへん!と言いたげな感じで腕を組んで答える茅蒔、その火の玉は続けて応えた。


「その歳で自分の名とはいえ…字を読み書きできるとは…。少しだけ興味があるかも…キミなぜ“死んだの?”」


「ん?」


「…そうか流霊(りゅうれい)か。ま、だろうな。此処に来たのは今日なの?」


意味不明な素っ頓狂なことを話し続ける火の玉。

感情が置いてけぼりになる茅蒔、聴こえた“霊”というワードに胸がじわじわと熱くなる。


「きたのは今日だけど…おれ…おれ…生きてるよ?」


「ま、認めたくないのは分かるよ。みんなそう言うから。」


「死んでないし…」


「じゃあなんでフヨフヨしてんのキミ。」


「…!?…たしかに…」


最初はへらへらしていた顔が段々と強張る茅蒔。

段々と事の重大さを理解し始める。しかしその事実は余りにもまだ6歳の茅蒔には重すぎた。

頬が少しずつ潤んでくるその顔を見て火の玉は、やれやれといった感じで再び話し始めた。


「悲しんでいる暇なんてないよん、茅蒔とやら。キミにはやることがあるんだぜ?」


「え?」


「仕事してりゃー悲しいことなんて考えれなくなる。…まぁーボクは仕事キライだけど。」


“やさしさ”なのか、それとも単に面倒くさいから適当にいなしているのか。

どちらにしても今、世界に一人で迷いこんだ小さい茅蒔が少しだけ不安感を取り除けているのはこの火の玉のお陰なのだろう。


「…“ボク”って、きみは男の子なの?…そいえば、きみの名前は?…」


「話聞きなよ…まあいいけど…ボクにゃ性別なんて無い。名前かあ…そうだなあ。」


火の玉は少し気怠さを表したような声色で答えた。


「《世界休め(せかいやすめ)》…それがボクの名前かな。」


「セカイヤスメ〜!?…なんかすごい名前!!」


聞いたこともない響きのワードに茅蒔は目をキラキラさせていた。

さっきまで泣きべそをかいていた少年の面影は吹き飛んでいた。

“世界休め”と名乗る火の玉は、目の前でなぜかはしゃぐ子どもを面倒くさそうに、続けて話し始めた。


「話し戻していい?さっき言った“仕事”のはなし…」


「なになに〜?せかいやすめ!!」


「気安いな…ま…いーけど、さ。」

「仕事の内容…それは…」


「ごくり…」



「ボクを()()()すること、だよ。」


「さいふ…え?」


茅蒔はまたまた素っ頓狂な顔をしていた。

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