② 世界休め?
「火の玉が…喋った…。」
なんだこの…緑の火の玉…。
絶対なんかしてくるタイプ…死神か…?
逃げたほうがいい…?鬼よりも怖いかも…。
ユラユラとしてて…不気味だ。
もしかして迎えに来たのか…?
…逃げなきゃ捕まる…?
でも捕まったとこでなあ…。おれ、一人だし。
火の玉でも話し相手にはなるしなあ…。
まあ取り敢えず、
この火の玉に色々と聞くことにするか。
「キミみたいなガキが、なんでこんなトコに…
いや…というか、どうやって封印を解いた…?」
「えっ、封印…?あっ…“剣”のことですかね…?」
あーあ、火の玉と喋っちゃった。
おれ、どうなるんだろうか…。
連れて行かれるのかな…。…!そういや…
“封印”解いただの今、言ったな…?
まさか、あの剣を抜いたから…?
そんな、マンガみたいな…展開!?
…でも、オカシイな。
だったら普通、喜ぶべきだ。
…封印を解いて用済みになったおれを
とっとと殺せばいいのにダラダラ喋ってる。
おれにはまだコイツにとって“価値”がある…?
「…マジぃ?…あれは簡単に“抜ける”仕様じゃないんだけど…ガキんちょに解かれるとは…。」
さっきから、あんまり怒ってないよな?
ていうか……人……??幽霊?オバケ??
どっちだ…?
意外と穏やかなヤツ(?)なのかも。
でも、こんなシチュエーションでも
“ガキ”って言われるの…
結構、ムカつくんだよなぁ…。よし…!
どうせ、殺されちゃうんならおれからも色々と喋ってみるか…。
「“ガキガキ”って…おれには茅蒔…っていう名前がある!気が付いたら、ここで寝てて…そっから前の記憶は一切無い。…です。」
取り敢えず、現状でも伝えときますか、この火の玉さんに。
ん?でも…こいつ…
“目”…あるよね…?“ガキ”って言ってきたし
こっちのことは見えてるってことか。
ひとつ、気付きを得たぞ。
それと逃げても無駄ってことも解った気がする。
まあ取り敢えず自己紹介だよな…。
…仲良くなったら許してくれるかも知れない…。
「…名前は…覚えてる…、と。そんで、キミ…歳はいくつ?」
「10だけど…。」
どうしよ。名前どころか歳も言っちゃった〜…。
そのうちおれん家にまで来るかもしれない…。
あ…。ん?う〜ん…そういや
“自分の家”とかもなんも思い出せない…。
兄弟はいたっけ…。漠然とか覚えてない…。
おれ、記憶喪失…なのか?
「ふ〜ん。じゃ、もひとつ…キミさ。なんで“死んだ”の?」
「…やっぱり…?」
いま“死んだ”って言われました。ハイ
う〜んまずいな。おれ、ちゃんと死んでるじゃん…。
まあ、前世の記憶がゴッソリ抜けてるからか、
別に悲しみにも浸れなく、変に受け入れちゃった…。
ということは、この“火の玉人間”はおれを迎えに来たのか?
あ、ソレは違うか。おれが封印解いてこうなってたんだっけか。
ま、もうそのへんはどうでもいいや。
…おれ、ちゃんと生前は楽しんでたんかな?
友達とかいたのかな…?好きな女の子とか
夢とか、…あったんかな…。
さっきからずっと身体がフワフワしてたのも
もう、おれが生きてる者じゃないからか。
まあ、そうだろうな…火の玉が喋る世界だぜ。
幽霊がいないのが逆に不思議なくらいだ。
「…そうか流霊か、キミ。自分が死んでるっていう自覚があるんだね。」
「“りゅーれー”…?なんだ…それ?自覚は無いけど、まあ…そうなんだろうな──って感じ…。」
「流霊って〜のは、現世で死んで此処に流れ着いて来る霊のことだよ。」
「ふ〜ん…。流れる霊で“流霊”─ってことね。死んでからも勉強になります…。」
流霊、か。
わざわざ、流霊とかいう言葉があるってことは…
別の霊もいるのかな?
例えば地縛霊とか守護霊とか…。
おれ、もしかして、おれ今すごい体験をしてる?
それと…だからか…。
さっきから見たことないような虫とか植物がチョコチョコいるのは…。
正直、幽霊とか火の玉よりも虫の方が気色悪い…。
実害あるしね。
まあ、虫が喋ってもそれはそれでまた別のキモさが…
「ここが“あの世”ってのは分かったよ、火の玉さん。んで、…ここは、“天国”?ってやつ?」
「う〜ん…合ってるようで合ってない…。この世は…天国も地獄も一緒くたになった“天国と地獄”──という世界でね。まあ物凄く、簡単に言うと君の言うようにまさに“あの世”さ」
「天国と地獄…ふ~ん。なんか、ちょっとカッコいい響きだね。」
天国と地獄が混ざった世界─ダブルヘイムか…。
よく分からんけど、なんかこうして
火の玉に説明を受けてると段々ヤバいことに足突っ込んできたのかも。
まあ、突っ込んでるはずの足はプラプラと浮遊してるんだけど。
ところで、この火の玉人間が今は気になる。
名前とかあるのか?問いただしてみるか。
「あとさ、何個かついでに聞きたいんだけど。君さ、“ボク”って言ってるけど“男”なの?あと〜、名前はあるの?」
「キミ、随分と肝が据わってるよね。…まあいいけど…ボクにゃ性別なんて無い。ハイハイ、名前ね…
───《世界休め》…。それがボクの名前。」
「…せ、“世界休め”〜…!?変な名前…。男でも女でもないのか、もしかして神様?天使?」
世界休め───
マジで神様かなんかか?封印されてたしな…。
もしかしてとんでもないヤツを叩き起こしたんじゃねえかなおれ。
「神様ってのはともかく、“この姿”で天使はないでしょ…。ま、いいや。ところでキミ、茅蒔だったっけ…?キミにはしてもらう仕事があるんだけど。」
「あ〜…封印解いたから?……仕事?この森のお掃除とか…?」
「違うね、キミには重大な仕事がある。
ボクを再封印すること、だよ。」




