⑱ 儀式らしいです!
この町の名は“留座町”
といって本来は、この町に来た霊たちは、その風情や娯楽に夢中になり次の旅路への足を止めるほど─と云われてる。
し・か・し…、
おれには、そんな余裕はもうなくなった!
なぜなら、おれは未だ流霊だから…、
そしてやっと!固霊への希望を掴んだから…!!
だから今猛烈に走っている!この町の最果ての灯台に!
風月と水月ねーちゃんと離れ離れになっちゃったのは、心淋しいけど…
取り敢えず、おれは西に落ちる太陽を目指して灯台のある丘へ向かっていた。
そして数時間後…
「灯台ってコレだよなあ〜?見ればわかるって言ってたからまあ…コレなんだろうけども。」
着いちまったぞ灯台。多分。
辺りはもう暗くなってきたなあ…
こんなくれーのにあの、メガネの兄ちゃんとふたりぼっちになるのか…
なんか嫌というか…、気まずいな…。
そもそも、なにをするつもりなんだろうか。
どのくらい、時間がかかるのだろうか。
そもそも、無償なのだろうか。
着いてしまって今頃になってから、片付けてなかった気持ちが押し寄せてくる。
まあ、悪い人ではないんだろうけども…ちょっと不安だなぁ…。
そんなこと考えてると、後ろから人影が一人分、近づいてきた。
「おっ!速いねぇ〜!さすが子どもは元気の子だね〜!」
「あ、左備さん…!おれも、さっき来たばっかだよ!」
「ごめんごめん遅れて…やっぱり歳は取るもんじゃないねえ…ははは。さっ!てと…じゃあ儀式の準備始めようか!」
そういうと、大袈裟な大風呂敷を床に広げ始めた…。
なんか車輪の着いた箱にバケツ…その他もろもろ…。
な、何が始まるんだろうか。
ってか儀式…か。痛い系なのかな…?
うわ、モノすっごい怖くなってきたぞ…
すぐ終わりますようにすぐ終わりますように…
「茅蒔くんにも協力してもらおうかな?せっかくの固霊になる儀式なんだし…!思い出に残ると良いと思うし!」
「あ、ハイ…!喜んでなんでもしますよ〜!死なないためなら、なんだって!」
「良い子だね…!よし、ならソレで石灰をこの“絵”のように引けるかな?」
「任されました!」
なるほど、この車輪の箱は中に石灰が入ってんのか。
これをうまい感じにコロコロすると……
お〜引けた引けた!
なるほど…
わざわざこの地を選んだのも、地面に草も生えてない平らな場所ってのもあるのかな〜?
取り敢えず、貸してくれた本の“絵”の通りに引いてみる…。
案外、難しい模様だなこれ…手がプルプルしてきた。
しかし、頑張らなければ…おれのため…
世界休めのため…世話をかけた二人のため……。
よし…こんなもんか…?
儀式って意外とアナログ的なものなんだな…
「左備さ〜ん!こんなもん〜?」
「オーケーオーケー!!完璧〜!茅蒔くんは絵心があるね〜!」
少し遠くから両手でオーケーマークのサイン。
ちょっと嬉しい。
線を踏まないように気をつけて左備さんの次の指示に従う。
「次はね〜茅蒔くんの“声”や“感情”をこのバケツに吐き出してみて」
「え、吐くの…?いきなり、難しいなぁ…」
「“吐く”っていっても気持ちだけさ。魂の情報をほんの少しでも手に入れればいいんだ。」
「わ、わかった〜?やってみる…。」
「あ〜…あ〜…いうえお〜おお〜〜!!…………こ、こんな感じ…?」
「うんうん!大丈夫大丈夫!バッチリですよ〜!いい感じです!」
なんか酔っぱらいの人みたいになっちゃったけど…
良いって言ってるしいいか…!
あ、あとは何をするんだろう…
「次は何するの?」
「僕の方の準備はこれでオシマイです!茅蒔くんが飲み込みが早いから助かったよ!これで、僕のステレオ能力で儀式を始めれる!」
「あ、そう?…飲み込みってより吐いてたけど…」
「大丈夫大丈夫!ちゃあんと成功させるさ!」
これでコッチは準備OKか…。
なんか速く終わったら終わったで、それはそれで緊張してきた…。
「では…次は茅蒔くんの方、君が大事に背負ってるその“剣”。それを両手に握って…離さないように…。儀式の大事なアイテムだからね…。もう一つの命と思って握るように!」
「は、はい!こうですか…!」
「うんうん!バッチリ!とっても似合ってるよ〜!」
「似合うかどうかは、いいかも…」
「ごめんごめん…!茅蒔くんは真剣だったね…!反省!なら、茅蒔くんがさっき描いてくれた陣の真ん中に立ってくれるかな?」
やっぱ掴みどころがわかんない兄ちゃんだなあ…
ま、悪い気はしないけどさ。
真ん中に行けって言ってたな。踏まないように…
改めて見ると、デカいなあこの丸い陣。
よくこんな複雑な模様、自分で描けたな〜と思う。
我ながら圧巻である。
「…よし、そこで大丈夫…!茅蒔くん…緊張してるかな…?」
「う、うん…。ドキドキしてる…。やっと…消えるまでのタイムリミットが無くなると思うと…やっぱり嬉しいな…」
「ふふふ、それは違うよ。君はちゃんと、これからこの大地を踏みしめて生きなくちゃあならない。あの巫女さん方のためにも…!生きなきゃね!茅蒔くんは、ちゃんと…この世に残してあげる…!僕との約束だ…!茅蒔くん!じゃあ─いくよ…?」
…いよいよか…!長かった…!
やっとフヨフヨの幽体から卒業だ!
おれも…みんなの期待に応えれるように生き抜かなきゃ…そう思えた。
無事に終わったら…
風月と水月ねーちゃんに早く報告したいな…。
早く…会いたいな…!!
よしっ!!心の準備…できたぞ!!!
どんとこい!!!
「そら、いくよ!……──『馘首・慈悔相』─。」
「──…。え?クビツリ…??」
────チャキ……
ななななんだなんだなんだ!?!?!?
お、おれの…おれの右手が…
勝手におれの首を……
斬ろうとしている…!!?????
斬られる……!!目を瞑ったその時───
おれの髪の毛がまるで『腕』の形になってソレを必死に抑えていた…!!
『我が身可愛さ』…!!!
発動してるってことは…
まさか…まさか…ぐっ…ううう…
────ち、…力が…強すぎる…!!!!
「茅蒔くん。僕はさっき君に『違うよ』─と言ったでしょう?」
「あ…ああ…!?…ぐ…ぐうう……?」
「もう、“タイムリミット”じゃあない…。“カウントダウン”なんだよ。君の命のね。」
「さ…左備…さん…?」
「君は自分の手によって、自害するのだよ。忌まわしい『世界休め』よ…。」
「は、…はぁ!?…ふ…ふざけんな…!!!」
混乱と後悔が頭の中をグジャグジャにする中、
おれは必死に“迫りくる剣”を抑えていた。




