⑯ タイムリミット残り19日!?
おれと風月、水月ねーちゃんの3人は世界休めの残り5つの能力の行方を占ってもらうため、幽眉笛という名の凄腕占い師が居る街を求めていた。風月の情報によると、この幽眉笛って霊は30ちょい過ぎのか〜な〜り、ウサンクサイ男…らしい。
ちょっとだけ話は変わるけど、風月と水月ねーちゃんは《五占巫教会》という、巫女さんとか、え〜と、お…男巫…、だっけ?巫女さんの男バージョン…まんまだな…。まあ、そんな神聖な霊たちがいる組織の様なトコから来たらしい。あの世でいう警察みたいなもんなのかな?なんかそんな感じのイメージだ。
んで!その五占巫教会に元々、所属していたのがその幽眉笛っていう男らしく、結構上の階級に居たらしい。…だけど数十年前に男巫の資格をまるまる剥奪されたらしく今は辺鄙な街に隠居してる。
んで!おれの流霊としてのタイムリミット!!49日以内…!つまりもう今だと残り19日。それまでの間におれは“戸籍”を手に入れなければならない。ホント…夏休みの宿題を終了1日前のギリギリに仕上げているかのような…今はそんな気分だ。19日なんてあっという間だろうなぁ〜…生きてる感じがしない…。あ、もう死んでるんだっけか…。生きてた頃の記憶が無いもんで、未だに死んでるっていう実感無いんよな〜。
まあ!取り敢えずなんやかんやで今この状況。3人で占い師目指して歩いていると段々とゾロゾロ人たちが増えてきた。働いてる人たちなのかな?なんかワイワイしてる。いい街だ…ホントに“あの世”…だよな?みんな『活きてる!』って顔してるもんなぁ〜。まあ、元気なのは良いことだ!間違いなく。
…よし、なんか着いたっぽいな?やっとこさ、休憩できる…。おれは、明日檜姉妹によって改造された髪の毛を揺らしながら、街へ辿り着いた。
「…着いたぞ。まだ道中の街だが、休憩がてら住人たちにお前の養子の件について尋ねて周るか。」
「ほうほう…!ここは何というか…さっきの田舎町よりかは栄えておりますな…!」
「幽眉笛さんの所までは、まだまだだけど…茅蒔くんの命が最優先だからね…!」
建物がいっぱいだなぁ〜なんか一気に文明が進んだ気がする…。やっぱ隣町まで来てよかった!おっ!アッチには温泉もあるのか!!むむ、、…アッチには駄菓子屋も…!!ヤバいなあ〜…!これじゃ目と足が足りないや!アッチにも行きたいし…コッチのリサイクルショップみたいなのも…う〜ん…迷うなあ〜…──あ?
急に俺の視界が─ぐーんと あがった!
「はい…!茅蒔くん!あなたの目的は自分の命の確保!はやく、優しい霊さんを見つけますよ〜?」
「あ…は~い…。…てか、たかっっ!!」
どうやら、水月ねーちゃんに抱きかかえられてしまったようだ。水月ねーちゃんホントにデカいよなあ〜…いつもこんな風景なのか〜。カブトムシとかすぐ捕れるなコレ。
「ガキが…ウロチョロすんなよ?」
「分かってるって〜…ちゃんと髪も“キマってる”し…。良い子ちゃんにするって!」
「ふふふ…ホントに似合ってるよ茅蒔くん。その髪型!」
ツインテール…。ホントはめちゃくちゃ恥ずかしいけど…少しでも“カワイイ良い子”に見られるためには恥なんて捨ててやるぜ…。でも正直、前までのなっが〜い髪の毛がちゃんと結ってあるとなんか落ち着く気がする。
「あはは…そう、かな?たまに視野にチョロチョロ入って虫と思って勝手にビビってる時あるけど…。」
「遊んでんじゃねえぞ。…よし、まずはあの少し裕福そうな爺さんから行ってみるぞ…!お前、自分のことは“わたし”って言えよ?か弱く見せるんだ、いいな?」
「占い師より先に、詐欺師に会った気がする…。」
「つべこべ言うな!話を合わせろよ?…。うしろをトコトコついてこい。」
あ~あ〜…とんでもない“お遊戯タイム”の始まりだ…。しかもよりにもよってあんな、優しそうなお爺ちゃんって…!騙すのやだよ〜…!てゆーか、もし養子にしてもらってもその後どーすんだ?世界休めのこともあるから〜…固霊になった瞬間、そのままバイバイ、だよね?う、うわ〜…マジで嫌になってきた…!!断われ!断われ!お爺ちゃん!!…。
「あの〜…すみません。私、五占巫教会から来た明日檜風月という巫女なのですが、少しお話を宜しいでしょうか?」
「んっ…?おっこれはこれは…巫女さまですか。ほっほ…いつも我々の為、お勤めご苦労様です。」
「身に余る御言葉です。市民の皆様の協力あっての事ですので…。」
「よ…よそ行き用の顔だ……。」
いつもの言葉遣いのきちゃない不良巫女の風月からは想像も付かんような会話だぞ…。しかも、あんな笑顔見たことね〜…!レア…レアすぎる!!笑う表情筋生きてたのか…。
思わず突っ込んでしまったもんだから『キッ!!』っと睨まれてしまった…!ヤバいよ…あのお爺ちゃん獲られる…!!
「それで…お話というのは?」
「…はい。実はこの子…名を茅蒔といいまして…。流霊として彷徨い、飢えを自身の悲し涙で凌いでいた処を我々が保護しました…。御迷惑承知でお尋ねします。もし宜しければ…養子として、新しい家族として…迎え入れてあげて、もらえないでしょうか…?ほら…茅蒔ちゃん。挨拶は?」
「は…始めまして〜…茅蒔です…。よろしくお願いします……?」
う…おれの設定めちゃくちゃ悲しすぎないか…?流霊ってこんな感じなの?てゆーか…“保護”って…あなた、おれを殺しかけてませんでしたっけ……?ま、まあいいや!過去のことは!!今は未来!未来のことだ!
取り敢えず、ちょっとよそよそしく…あざとく…完璧に、か弱いアピールで風月の後ろから出てみたぞ…!な、なんか…一気に罪悪感が…。どうなるんだろ…。優しい人を騙すのはやっぱり…─
「───、要らん!!!…流霊じゃと〜?穢らわしい!!!疫病神じゃ!!!さっさと祓わんかっっ!!!」
「……え…。」
………。………………………。……。……。
……………………………。
「この街の空気を汚くしおって…!!何を考えとる!?飢えて、泣いてた…?当たり前じゃ…!食わす飯などあるかっっ!!!」
「……ご…ごめ…」
「巫女ともあろう清い存在が…罰当たりな…!!…この様な…この様な…病原き…──」
だめだ、こころがこわれる。
──ヒュッ
「──…それ以上喋ると、斬る…。」
ツーーー───
「……なっ…なんてことを……!!」
「“なんてことを”…だと?貴様と同じ行動をしてるんだぜ…?言葉の遣い方には気を付けるんだな…」
「………ふう…げつ…。」
目の前には、いつもの風月が爺さんの喉に刃を突きつけていた。背後から一瞬で。一月の間、ずうっと聞いてきた、荒い言葉遣い…野蛮な行動…
……風月は…巫女として、今やってることは世界で一番、間違ってる…。
でも……おれの目には、世界で一番、カッコいい巫女に映った…。
その後、あの爺さんは逃げるようにドタバタと帰っていった。文句を撒き散らしながら。おれは…ちょっと、気分が悪いや…。
「茅蒔くん?気にしなくて大丈夫だからね…?…って、ちょっと難しいか…よしよし…。」
「水月…お前、もうちょっとその圧…抑えろ。相変わらず不器用だな〜…」
「…ごめん。姉ちゃんが行かなかったら……手、出てたかも………。」
「…水月ねーさん!??」
『よしよし』の手はまるで仏様のように優しいのに…左手の方は、そうはいってないみたい…めっちゃ握ってる…。な、なんか…幽気がそこに高密度で凝縮してるみたいだ…。周りの風景もゆらゆら歪んでるし…正直、めっちゃ怖いです。
でも…この、おれには絶対に向けられないであろう怒りが、変な話…嬉しい。ホント、変な感じなんだけど。
「まぁ〜なんだ、茅蒔。流霊ってのは、昔っから蔑みの対象でな…まあ、古い馬鹿共の戯言だ。わざわざ気にしたり〜だの、落ち込んだり〜だの、クズ共の為にお前の大事な心を遣うな。」
「風月……。」
「それに…お前には最強の“疫病神”が憑いてるだろ?」
「ほ、ほんと…口悪いなぁ〜…悪影響だよ…。でも、ありがとう…風月。さっきもカッコよかった…!!」
「……おう。」
風月は頭ポリポリしながらひと言だけ。
髪で隠れて、ちょこっと出てる耳が見間違いかな、少しだけ赤かった。お、…おもしろい…。今度から褒める回数増やしてみようかな…?
あと、世界休め…ごめん。疫病神扱いされちった…☆
まあ、お前なら多分「ま、いいけど…」って言ってくれるよな…?い、一応…『神』だしな!!
『お前の大事な心を遣うな』…か、なんか、ちょっとだけカッコいいじゃんか。いつか、おれも受け売りにして使ってみたいな…。…あ、気が付いたらもう、夕焼け小焼けか。
「はぁ〜…よし、この調子でどんどん尋ねて周るか。」
「こ…“この調子”って…いつか死者が出るんじゃ…。」
「茅蒔くん!絶対に良い人がいるからね!!一緒に頑張ろう!!」
「う、うん…!!」
もう、どんなに酷い言葉をかけられても平気かも。
風月の言葉が、水月の心がおれを支えてくれるから。




