⑪ 世界休めについて…
「…そういえば、風月。」
「あァんん!??お前…嘗めてるなっ!?!?このガキ…自分が安全な立場になったと思ったら調子に乗っ──」
「看病ありがとう…。おれ風月のこと、まだ少し恨んでるけど…。でも、ずっと横に居てくれたし…ありがとう。」
「……チッ…。」
なんだよ。せっかく、仲直りしようと思ってたのに。言わんと良かった…。でも、もう殺そうとは思ってないみたいだ。なんで…なんでなんだ?なんか、逆に気持ち悪くなってきた。聞いてみるか。
「風月…なんで、おれのこと看てくれてるの?」
「…監視の為に見てる。」
「…監視かぁ。」
「…お前は、やべーやつに取り憑かれちまってる。」
「こないだも言ったろ、《コンプレックス》…。悪霊に取り憑かれてんだ…お前は。本来ならお前ごと殺してる。…水月に感謝するんだな。」
コンプレックスか。言ってたなそんなこと。
人間の“心”を複合・具現化した存在──。
巫女さんたちは、そいつらを倒す生業ってことかな。
この世界に来てから聞いたことない言葉だらけで頭が痛い。でも、世界休めとの“約束”があるし…。頑張って勉強しよう。
「もひとつ…コンプレックスって、他にはどんなのがいんの?」
「まあ…色々だな…。人間の心の化身みたいなもんだからな。あん時、お前と出会う数時間前は“不安”のコンプレックスを倒した。」
なるほど〜…“不安”…か。ずっとソワソワしてるような、コンプレックスだったのかな?…“心の怪物”…そんな感じか。風月たちは怖くないんかな…?そういや、世界休めってなんの“心”なんだろ…。やっぱり、“眠い”とかか…?
「なんとなく分かった…。そんで、おれの中にいる世界休めは何の具現化なの?」
「…怠惰だ。」
「…タイダダ?」
「“怠惰”だよ。茅蒔くん!要するにお寝坊さんとか〜…面倒臭がり〜とか…サボりたがり屋さん…っていう意味だよ!」
あ、水月ねーちゃん…。“怠惰”…。たいだ…、まさしく今聞いた通りの性格だったなあ。なんか、ホントに強いんかな?世界休めって。う〜ん…でも、おれもお昼寝好きだから何も言えないや……。
「けどね?裏を返せば…気を楽にしてくれたり、睡眠をちゃあんと取らせてくれたり…まさに世界を休ませてくれるような存在…。
──とも言われてるんだよ。…だから、茅蒔くんをどうこうしようとは思わないと思うの…“怠惰”だしね…!」
「…おれ最初、世界休めのことがほんの少し怖かったけど。…でも“怠惰”は、気が合うかもしれない…。」
アイツは多分そんなことしないと思う。一応…。
“世界を休ませる…”だから…“世界休め”。
なんかちょっとだけカッコいいな…。《怠惰》か…。初めて、この世で会った“ともだち”……かな?。…おれだけかな…?そう思ってるの。
「それで…?その世界休めさんは、なぜ子どものお前に憑いてんだ…?」
「うん…─」
おれは風月と水月おねーちゃんに全部話した。
おれが世界休めの封印を解いたこと、世界休めの6つの能力の内のひとつ『我が身可愛さ』を借りてること…。そして…バラバラになった力を、おれが探して、取り戻し世界休めを再封印すること。全部、全部話した。その後に風月たちとすぐ会ったことも。
「なるほど…。随分と…壮大な、“義務教育”を課されたな…オマエ…。少し同情するぞ……。」
「お姉ちゃん……。」
「…はぁ…ちっ…。…私たちのできる範囲で、オマエを手伝ってやる…。」
「ソイツを封印するためだからな……!業務だからな……仕方なくだ…!」
なんか、勝手に話が進んじゃってるけど〜…大人の味方がついたってことで喜んでいいのかな…。
それもいきなり、巫女さんが2人も。ひとりはおれを殺そーとしてた人だけど。まあ、いいか…!おれ冒険する気マンマンの感じの気持ちだったんだけど…そういうことなんかな?…おねーちゃんたちと旅か〜…なんか、いきなり恥ずかしくなってきたなぁ…。
「…水月…。このことは教会には連絡するな…。いいな?」
「まあ…お姉ちゃんに考えがあるなら信じるよ…!改めて、よろしくね。茅蒔くん!」
「よろしくっ!!!…でも…
……お腹…すいた…。」
幽霊の体でもお腹はすくんだな…。
おれはそう思った。




