帰郷 - 4
語り:ミレイユ・カロ
ダリウスはヨークに、監視塔を取った理由を説明した。
目的は一つ。
アルヴェイン家の人間をここへおびき寄せること。
ヨークは話を聞き終えると、腕を組んだ。
それから、うーんと唸る。
「……そんなにうまくいくかねぇ。」
半信半疑といった顔だった。
セラがまっすぐヨークを見た。
「ヨークさんに迷惑はかけません。」
少し身を乗り出す。
「だから、協力してください。」
ヨークは何も言わなかった。
腕を組んだまま、じっとセラを見ている。
セラは続けた。
アルヴェイン家のこと。
聖環のこと。
エリアスとの婚姻のこと。
カイルのこと。
トリスタンの死のこと。
今までに起きたことを、隠さずすべて話した。
そして最後に言った。
「私は……」
少し言葉を探す。
「私を弄んでいる、この陰謀みたいなものの正体を知りたいんです。」
静かだった。
「そのためには、父――レオンと、モルヴァン司教と、話をする必要があります。」
ヨークはしばらく黙っていた。
腕を組んだまま、空を見上げる。
「うーん……」
少し考えたあと。
ヨークは首を振った。
「悪いが、それは無理だ。」
セラとダリウスが同時に聞いた。
「どうしてですか?」
「なぜだ?」
ヨークはセラを見た。
「この案は、嬢ちゃんが考えたのかい?」
ダリウスが答えた。
「俺だ。」
ヨークは、少し驚いた顔をした。
それからダリウスをじっと見る。
「天下のダリウス・エルネストの作戦にしちゃあ……」
少し間を置いた。
「お粗末じゃないかい?」
ダリウスが憮然とする。
ヨークは構わず続けた。
「レオンかエドマンドか、どっちが来てもいい。」
顎で城の方を示す。
「で?」
視線をセラに戻す。
「来た連中を皆殺しにするつもりか?」
セラは首を振った。
「そんなつもりはありません。
私は、ただ――」
言葉を選ぶ。
「本当のことが知りたいだけです。」
ヨークは呆れたように言った。
「“本当のことを教えてくれ”って言われてな、実はですね、なんて白状する人間がいるわけないだろ。」
それから真顔になる。
「仮にレオンが来たなら、まだ話はできるかもしれん。
だが――。」
少し身を乗り出す。
「エドマンドが来たら、どうするつもりだ?」
セラは迷わなかった。
「少し痛い目を見せます。」
淡々と言う。
「そうすれば父を引きずり出せるでしょう。」
ヨークはダリウスを見た。
「お前も同じ作戦か?」
ダリウスは少し考えた。
「そこまでは考えていなかったが……」
小さく息を吐く。
「結果としては、そうなるだろう。」
ヨークは呆れた顔をした。
「お前ら親兄弟に、何でそんな物騒なことを平気で言えるんだ?」
頭をかく。
「お前ら、どんな育てられ方したんだ?」
セラとダリウスは黙った。
ヨークは続けた。
「妹にやられて逃げる兄がいるか?」
間を置く。
「親が、娘に口で負けると思うか?」
静かな声だった。
「今のままじゃ、殺し合いにしかならんぞ。」
その言葉は、かなりきつかった。
私は思った。
ヨークの言葉は、ずいぶん酷い。
けれど――。
セラもダリウスも、位の高い人間だ。
もしかすると。
普通の家族というものを、あまり知らないのかもしれない。
二人とも、何も言い返せなかった。
ヨークはその様子を見て、ふっと笑った。
「そこでだ。」
身を乗り出す。
「俺が策を授けてやる。」
ダリウスが眉を上げた。
「策?」
ヨークは自信ありげに言った。
「俺に任せろ。」
その瞬間。
配下の兵たちがざわついた。
「隊長の策か……」
「それ大丈夫か?」
「嫌な予感しかしない。」
ヨークが振り向いた。
「うるさい!」
兵たちは一斉に口を閉じた。
ヨークは私たちを手招きした。
「まあいい。」
地面を指さす。
「まずは話を聞け。」
私たちは自然と近づいた。
輪が、少し小さくなる。
ヨークは周りを見回した。
そして言った。
「いいか。」
少し声を落とす。
「よく聞け。」
ヨークは地面に指で線を引いた。




