第3章 封印の娘と氷の契約
放課後の学園は、誰もいない静寂に包まれていた。
ミナは図書室で魔法の研究をしていたが、心ここにあらず。
――さっきの中庭での、リアムの言葉が頭から離れない。
「君の存在は、この王国の秘密に関わっている」
なんだか怖い。でも、胸の奥には不思議な高鳴りがあった。
「はぁ……どうしたらいいんだろう……」
肩を落とすミナに足音が近づく。
「ここで何をしている?」
リアムだった。銀髪が光を反射し、昼間より少し柔らかい表情をしているように見えた。
「勉強です……」
「ふん。君に必要なのは、座学だけではない」
リアムはミナの前に立つと、静かに手を差し出した。
「……契約を交わそう」
「け、契約?」
「君の魔力を俺が守る。その代わり、俺の導きに従うこと」
ミナは驚きで言葉を失った。
でも、目の前の彼が自分だけに向ける真剣な眼差しを見て、心が自然に頷いた。
「……わかりました。お願いします」
リアムの表情が少しだけ柔らかくなる。
「……無理はするな。君が倒れたら、守る意味がない」
その言葉に、ミナは胸がきゅんとした。
彼は普段冷たくて完璧なのに、今だけは――自分のことを気遣ってくれている。
「……ありがとう」
「別に、感謝されるようなことじゃない」
そう言いながらも、リアムの手はミナの手に触れた。
冷たくて、でもじんわりと温かい感触。
ミナの心臓は、一瞬で暴走した。
「……リアム、さま」
「……呼ぶな」
互いに少し照れながら、二人は小さな契約を交わした――
落ちこぼれ魔女と、氷の王子。
これから訪れる試練、戦い、そして恋。
すべての始まりだった。




