第14章 光と影の約束
月の泉が、青白い光を放ちながら波紋を広げていた。
その中心に立つ“影の継承者”が、ゆっくりと腕を広げる。
「お前たちが“封印の鍵”か……。
セラの血を引く者たちよ――運命を継ぐ覚悟はあるのか?」
リアムは剣を握り直し、冷たい光を放つ刃先を影へ向けた。
「母が命を懸けて守った世界を、壊させはしない。」
ミナも一歩前に出る。
「お母さんの力を、もう恐れない。
これは私の中に生きてる“光”だから。」
二人の魔力が重なった瞬間、泉の光が一気に弾けた。
リアムの“氷の紋章”とミナの“月の紋章”が絡み合い、天井の封印が共鳴する。
「行くぞ、ミナ!」
「うん――リアム!」
剣と杖が同時に振り下ろされ、光と氷が奔る。
しかし影の継承者は黒い霧のように形を変え、攻撃を吸い込むように受け止めた。
「無駄だ……。お前たちは“母の欠片”に過ぎぬ。
完全な存在ではないのだ!」
その声と共に、影が暴走する。
学園全体が揺れ、天井の魔法陣がひび割れていく。
ミナは膝をつきそうになりながらも、リアムの背に手を伸ばす。
「リアム……信じて……。
私たちは“欠片”じゃない……。お母さんが託した、希望なんだよ!」
その瞬間、ミナの胸から柔らかな光が広がった。
母・セラの声が、風のように二人を包む。
『……あなたたちは二つの魂。
光と影、月と氷。
共に歩む時、封印は再び満ちる。』
リアムはミナの手を強く握る。
「……ああ。母さん、見ててくれ。」
二人の魔力が完全に共鳴した。
氷の剣が光を纏い、月の紋章が剣の中心で輝く。
「――共鳴魔法・《ルナ・フロスト》!」
放たれた一閃が、影を貫いた。
光と氷の嵐が吹き荒れ、泉全体を包み込む。
悲鳴とともに、影の継承者は霧のように消えていった。
静寂――。
やがて、光が静かに収まり、泉の水面に二人の姿が映る。
リアムが息を整えながらミナに視線を向けた。
「……終わったな。」
「うん……でも、きっとお母さん、まだどこかで見てるね。」
リアムは小さく笑う。
「そうだな。
――お前が光で、俺が影。
これからも、二人で一つだ。」
ミナの頬が少し赤く染まる。
けれどその笑顔は、どこまでも穏やかだった。
泉の光がゆっくりと昇り、天井の封印が再び閉じていく。
そして月明かりが差し込む中、二人は静かに手を重ねた。
「ありがとう、リアム。」
「……礼は言わない約束だろ。」
「ふふっ、もうツンデレなんだから。」
「なっ……誰がツンデレだ!」
その声が、封印の間にやさしく響いた。
――こうして、セラの願いは果たされ、
ミナとリアムは“光と影の守護者”として、新たな未来へ歩み出した。
そして夜空の月は、
まるで二人の旅立ちを祝福するように、静かに輝いていた。




