第12章 氷の記憶と母の声
ミナは夢を見ていた。
深い水の底のような静けさの中で、懐かしい声が響く。
「――ミナ、リアムを信じて。彼はあなたの“もうひとつの光”なの。」
振り向くと、そこには母・セラの姿があった。
淡い銀の髪、優しく微笑む瞳。けれどその体は、光の粒となって崩れ始めている。
「お母さん……どうして……?」
ミナの声は震えていた。
セラは静かに首を振る。
「昔、世界を守るために“封印の儀”を行ったの。
けれど、その代償で――私の魂は二つに分かれてしまったの。」
光が強くなる。
ミナの胸の奥で、氷のように冷たい感覚と、温かい月の光が混ざり合う。
「リアムは……そのもう一つの“魂”を受け継いだ子。
あなたたちは、血のつながりではなく、魂で結ばれた双子なの。」
ミナは息をのむ。
リアム――あの冷たく見えて、誰よりも優しい瞳。
ずっと感じていた不思議な共鳴の理由が、今つながった。
「あなたたちが出会うことは、運命だった。
二人が手を取り合うとき、この世界は……再び光を取り戻す。」
セラの声は、風に溶けるように消えていった。
――ぱちん。
現実に戻ると、ミナの手を誰かが強く握っていた。
「ミナ!」
リアムの声。額には汗がにじみ、彼の瞳には焦りと優しさが宿っている。
「目を覚ませてよかった……。心配したんだ。」
ミナは微笑み、彼の手を握り返した。
「リアム様……私ね、夢を見たの。お母さんの……そして、あなたのことも。」
リアムは静かに目を見開く。
その瞬間、二人の胸の奥から、柔らかな光が溢れ出した。
「……あたたかい。」
「これが……“共鳴”か。」
互いの光が混ざり合い、空に向かってひとつの道を描く。
遠くで鐘の音が鳴った。
――それは、運命の再会の合図。
ミナとリアムは顔を見合わせ、ゆっくりと立ち上がる。
「行きましょう、リアム様。お母さんが残した約束を果たすために。」
「……ああ。俺たちで、終わらせよう。」
二人の足元に、白い花が一輪、静かに咲いていた。




