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【完結保証】ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第三楽章 ズッコケ山のクレシェンド

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第90話 ズッコケ山を抜けて

 またしても現れた山賊に、俺と高橋は大きな声を浴びせる。


「おいこら山賊! また出やがったな! なんでフンシツの馬車を執拗に狙うんだ!」


「間もなく3番ホームに列車が参ります! 危ないですから黄色い線の内側までお下がりください! ただいま真ん中辺りの車両大変混雑しております! 端の方の車両は比較的空いておりますので、分散してのご乗車をお願いいたします!」


「なんでお前だけ電車のアナウンスしてんだよ! ちゃんとやってくれる!?」


「ちゃんとやってるじゃないですか。混雑している車両に無理やり人が乗ったら、押し潰される人が出てくるかもしれませんよ?」


「うんお前が駅員ならちゃんとやってんな!? でもお前駅員じゃねえから! マヨネーズ泥棒だから!」


「マヨネーズ泥棒なんて失礼ですね。ちゃんと

マヨネーズ大泥棒と呼んでください」


「どこにプライド持ってんだよ! お前いいからまたあの山賊追っ払うぞ!」


 山賊は余裕そうな表情で口髭を触りながら、俺たちの方をゆっくりと見る。にやにやとした笑みを浮かべる山賊は、俺たちに向かって口を開いた。


「ああん? なんだてめえらは? この漏れに何か文句でもあるってのかああん?」


「まだ成長してなかった! こいつの脅し文句やっぱこの1パターンしかねえんだ!」


「ですが玄司様、ほとんど同じようで少しだけ違うセリフもあるんですよ。よく読み返してください」


「読み返すとか言うなバカ! 内容が一緒だから一緒なんだよ!」


「でも玄司様、ちょっとだけ違うセリフを見つけられた時、めちゃくちゃ気持ち良くないですか?」


「セリフでアハ体験すんな! そんなもん求めてねえんだよ! ちょ、お前1回話題逸らすのやめられる? 話戻すぞ!」


「分かりました。コボケ町はオトボケ村から山手線で1駅ですよ」


「どこに戻ってんだ! それ第2章の最初の方だろ! 戻りすぎだわバカ! 1個前に戻れよ!」


「分かりました。……って心音じゃねえか!」


「1つ前の作品に戻ってどうすんだよ! それ誰も伝わらねえだろあんま跳ねなかったから! せめて作品内で戻ってもらえる!?」


 なんで1個前に話題戻すだけでこんなに疲れなきゃいけねえんだよ。あと誰が1個前の作品『後輩がまた違うバイトしてる〜なんで俺の行先知ってんの?〜』を知ってんだよ。そんなマイナーな作品持って来るんじゃねえよ。


「ああん? なんだてめえら? この漏れに何か文句でもあるってのかああん?」


「文句はあるわ! お前なんでこんな平和なハイキングコースで山賊やってんだよ! なんか理由でもあんのか!?」


「ああん? 理由なんて決まってんだろ! 他の山じゃ山賊が警戒されてて、誰も近寄らねえからだよ!」


「一応会話できるんだお前! なら最初からして欲しかったな!」


 他の山は警戒されてるのか……。てことは、割と山賊とか出る世界ではあるんだな。意外と物騒だなボケルト王国。


「お前、山賊を辞める気はねえんだな?」


「ああん? あるわけねえだろう!? この漏れは、人を襲って身ぐるみゆっくり剥いで電気消してムードを演出するのが好きなんだよ!」


「なんで途中から初めてのホテルみたいになってんだよ! そんないいもんじゃねえだろ山賊行為!」


「うるせえ! 漏れはこの世界で、山賊として頂点を取るんだ! てめえらも襲ってやる!」


 山賊が俺たちに襲いかかってきた瞬間、ものすごい勢いで何かが飛んで来て、山賊の頭に直撃した。


 ポトリと地面に落ちたそれは、マヨネーズの容器だ。


「な、なんだあ!? 誰だこんなことしやがったのは!」


「おーっと、不法投棄しようと思ってた期限切れのマヨネーズを、うっかり当ててしまったみたいでやんすねえ!」


「お前は……ランオウ!」


 俺たちが寝ている間に空のマヨネーズ容器を放置しに来ていた犯人、ランオウだ。なんであいつがここに……?


 困惑していると、今度は何か丸いものが、山賊の足元に向かってすごいスピードで転がっていく。


「どわあっ! な、なんだあ!?」


「あちゃーしもたな! レーンにボール投げたつもりが、あんさんの方に行ってしもたみたいや! いやーすまんなあ!」


「カリヤド! お前今日はまだ宿の設営時間じゃ……」


「おう兄ちゃん! いやーちょっと暇やったもんでな、ボウリングの練習しとっただけなんや! すまんな驚かして!」


 起き上がろうとする山賊の上から、今度は人が降ってきて、山賊の上に跨った。


「おっとすまないね。王都に向けて進もうと思っていたら、方向を間違えてしまったようだ。オデったら、つい勢いを付けすぎてしまったね。誰かを下敷きにしてしまったよ」


「ギャクバリ! お前まで! どうしたんだよお前ら!」


 ズッコケ山で出会ったランオウ、カリヤド、ギャクバリが、山賊を懲らしめている。何が起こってるんだ……? こいつら、まさか俺たちのピンチを察して……。


「いやーなんかな、今日の夜王都の門の前で花火が上がるっちゅうから、見に行くために王都の方に向かっとったんやけどな。まだ夜まで暇やったからこいつらとボウリングしとったんや」


「ああ別に助けに来てくれたわけじゃねえのな!? なんかちょっとガッカリだわ!」


「あっしも花火が見たかったんで、こっちに来たんでやんすけど……。いやーマヨネーズの期限が切れてたのはショックだったでやんすねえ!」


「お前も助けに来たわけじゃねえんだ! 何なんだよお前ら! せっかくちょっと感動してたのに!」


 しかし、花火がある……? そんな噂別に流れて来なかったけど……。誰がそんなこと言ったんだ?


「あ、私です」


「お前だったのかよ! 何適当なこと言ってんだ! 花火なんてねえだろ門の前なんかで!」


「何言ってるんですか玄司様。この間花火作ったじゃないですか」


「ああお前あれ本当に作ってたの!? どんな花火作ったんだよ!?」


「それはもちろん、『火遊び禁止』の文字を」


「全然説得力ねえな! 火遊びで火遊び禁止って言うなよ!」


 しかし、高橋が適当なことを言ったおかげで、こいつらが助けに来てくれたのか。結果的なだけど。それはちょっとだけ感謝だな。


「さあ玄司様、あとはあなた様がトドメを刺すだけですよ」


「俺が……? え、どうやって?」


「玄司様の武器と言えば、ツッコミじゃないですか。だからどつきツッコミですよ」


「めちゃくちゃ暴力! え、俺どつきツッコミとかやったことねえけど!?」


「ほら行きますよ玄司様、あの山賊にボケ振りしますからね。山賊! 今すぐ大人しくしなさい!」


「ああん? なんだてめえら? この漏れに何か文句でもあるってのかああん?」


「いい加減にしろ! なんでお前はそのレパートリーしかねえんだよ!」


 俺は反射的に山賊の頭を叩いていた。すると山賊はとんでもない勢いで空に向かって吹き飛ばされ、キラリと光って消えてしまった。


「ええ……? ええ……?」


「見ましたか皆さん! これが救世主、シ・ロカネゲンジのツッコミの威力です!」


「区切るとこ間違えてんだよだから! お前いつまでそれ引きずってんの!?」


「いやあ、でもこれであの山賊、アラクレを退治できましたね。良かった良かった」


「え、お前名前知ってたのか? なんでだよ、あいつ名乗ってなかっただろ」


「何言ってるんですか玄司様。山賊なんて私とほぼ同業じゃないですか」


「ああお前マヨネーズ泥棒だもんな!? その界隈では有名なんだあいつ!?」


「玄司様、泥棒ではなく大泥棒です」


「分かったようるせえな!」


 無事山賊アラクレを退治した俺たちは、そのまま目の前に迫った王都に向かって歩いて行った。完全に道は平坦になり、ズッコケ山を完全に越えたようだ。


 これで山越えは完了。さあ、いよいよ王都オオボケに入るぞ。例の王様、一体どんなやつなのか知らねえけど、絶対満足させて生き返ってやる。


 チラリと生き返りゲージを見ると、95パーセントまで溜まっていた。

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