第87話 隠し条件
山賊のことは一旦忘れ、俺たちはしっかり風呂に入って温まり、着替えて眠ることにした。
いつまでも山賊について考えてても仕方ねえからな。山賊なんて治安の悪いもんが出るのは怖いけど、あの山賊自体は別に怖くなかったし、あまり気にすることでも無いだろう。また出て来たら高橋に追っ払ってもらえばいいしな。
今日も今日とてボウリングのレーン上に現れた和室空間に布団を敷き、俺と高橋はそこに寝転がった。
「はあー……。今日はやけに疲れたな」
「本当にそうですよね。たくさんボウリングしましたもんね」
「してねえよボウリング! 何お前いつの間にかやってたの!?」
「玄司様がお風呂に入っている間に4ゲームやりましたよ」
「やりすぎだろ! 何高速で投げてんだよ!」
「そりゃあれですよ、4つのレーンで同時にやりましたからね。実質1ゲームの時間で4ゲームやってます」
「なんでそんな無駄なことを!?」
「ちなみにスコアは全部32でした」
「ド下手じゃねえか! 前はバンバンストライク取ってなかった!? なんで急にそんな下手になったの!?」
「ボールの重さを200グラムに変えたんです」
「ひき肉みたいな重さ! そんなボールあるんだ!」
「一般的にはボールとは呼ばれていないんですよ。珍しいものなんです」
「そうなのか? じゃあなんて呼ばれてんだよ?」
「ハンバーグと」
「ハンバーグじゃねえか! じゃあお前それひき肉だよ! 調理済みだし!」
「失礼ですが玄司様、ちゃんとひき肉だけでなく卵、玉ねぎとナツメグまで加えてますからね」
「知らねえよ! ボール投げろボール!」
ずっと何を言ってんだこいつは……。なんでボウリングでハンバーグ投げてんだよ。むしろそれで全部32もスコア取れてるのびっくりだわ。
隣のレーンではフンシツが寝巻きに着替え、布団の上でくつろいでいる。どうやら神経衰弱をやっているようで、布団の上にはトランプが大量に乗っている。1人でやって楽しいんだろうか。
ウマシカは天蓋付きの大きなベッドで既に眠っている。こいつもずっと歩きっぱなしだし、色々トラブルにも見舞われてるからな。1番疲れてるのはウマシカだろう。
まあそう言ってる俺も疲れてるんだけどな。明日も進まなきゃいけないし、今日はもう寝るか。
隣でハンバーグを焼き出した高橋は一旦無視して、俺は枕に頭を乗せ、目を閉じた。
『……ろ。こっちを見ろ。城金玄司よ』
「んん……なんだよ? 誰だ?」
『私だ。波……じゃなくて網……でもなくて、あそうだ。ラミだ』
「神だろ! なんだその陽気なホームランバッターみたいな名前は!」
『ああそうそう、そうであったな。私は神だ。うん覚えたぞ。神だな』
「うるせえなお前! また俺の夢に出て来たのかよ! 今度は何の用だ!?」
『今日はそなたに大事なことを伝えに来たのだ。いつもとは違うぞ』
「いつも大事なこと伝えに来て欲しかったな! 前回とか服選ばされた気がするんだけど!?」
なんなんだよこの神……。ずっとふざけてんな。でも今回は真面目っぽいからな。ちゃんと聞いてやろう。
『そなたに、生き返るための条件を伝えに来たのだ』
「生き返るための条件……? ツッコミを入れてゲージを回復させりゃいいんじゃねえのか?」
『確かに私はそう伝えていたな』
「お前は伝えてねえよ! 高橋から聞いたわそれ! お前なんも俺に教えねえな!?」
『今回は違うと言っておろう。実は、そなたは生き返りゲージを満タンにするだけでは、日本に生き返ることができないのだ』
「……はあ!? なんで!? じゃあこのゲージ何のためにあるんだよ!?」
『そのゲージはあくまで生き返るための条件の1つ。そして、ゲージを満タンにした上で、そなたには果たすべき使命がある』
果たすべき使命……? 王様をなんとかするとかか? 確かボケルト王国の王様は、ボケルト人たちに笑いを禁止しているって話だったよな。だからこの国にはツッコミがいないんだと……。それをどうにかしたらいいってだけじゃねえのか?
『そなたの果たすべき使命とは、この国の王を満足させることだ』
「満足って……。どういう意味だよ?」
『まあなんかそれはおいおい考えてくれたら良い。今はそのことを頭の片隅にでも置いておいてもらえれば』
「なんだそのテスト前に出そうなとこ言う時の教師みたいなの! 適当だな相変わらずお前は!」
『話はこれで以上だが、まだ時間がある。何か話していくか? トイレットペーパーを格安で手に入れる裏技とか』
「なんでお前神なのにそんな庶民的なこと知ってんの!? どこで使うんだよその裏技!」
『知っているとはいっていない。そなたが知っていればいいなと思っただけだ』
「なんだ神この野郎! 俺も知らねえわそんなこと! 神がトイレットペーパーなんか使うな!」
『そんな理不尽な……あ、そろそろ時間が来たようだ。ではサラダバー』
「『さらばだ』だろ! サラダバー案内して帰んな!」
神の声が途絶えたところで、俺は目を覚ます。一体何なんだよあいつ……。まあでも、とりあえずゲージを満タンにするのは生き返るための必要条件ってことだな。はあ……。そういうことは先に言っておいて欲しかったな。
変な時間に目が覚めてしまったので、俺はもう1度布団に身を沈め、目を閉じた。




