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【完結保証】ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第二楽章 コボケ町のリタルダンド

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第54話 失意の玄司

 カーテンの隙間から、朝日が差し込んでくる。後頭部に微かに感じる温かさと、白く照らされる壁を見て、俺は朝が来たことを知った。


 でも、体は動かない。まだここで眠っていたい。ただそれだけの思いしか無い。だって、俺はこの世界にいても何もできないんだから。かと言って元の世界に戻る方法も無い。そこにあるのは、絶望と虚無だけだ。


 そんな俺の背中から、いつも通りの高橋の声が聞こえてくる。


「Hey Bob! It’s a great day today! Let’s go to the jail together!」


「うるせえよなんで英語なんだよお前は! 最後一緒に刑務所行こうって言ってなかった!?」


「すみません、最近英語の勉強をしてるんです。英語は世界共通語ですから、できて損はありませんしね」


「それ地球での話だから! ボケルト王国でその常識通用しねえだろ! あと最後一緒に刑務所行こうって言ってなかった!?」


「それにしても素晴らしく晴れた日ですよ! 早く外に行ってドッジ脚立しましょう!」


「ドッジボールじゃなくて!? 脚立投げ合うのはもう喧嘩だよ! あとさっき最後一緒に刑務所行こうって言ってなかった!?」


「早速ドッジ脚立のメンバーを集めないとですね! オフトン、コヅツミ、フクラミ、あとナゾカケですかね」


 ナゾカケ……。その名を聞いた途端、体がびくんと跳ねる。俺はナゾカケを恐れているんだ。もうあいつには会いたくない。まだ『お題ください』と迫って来るあいつの顔が、俺の脳内にこびり付いている。


 なんで高橋はこんな俺の様子を見ても、いつも通りでいられるんだ? 俺が落ち込んでいることぐらい分かってるはずなのに……。


「玄司様、大丈夫ですか? お腹をさすってゆっくり呼吸するといいですよ」


「俺食べすぎたわけじゃねえよ! 起きてから俺が何か食うの見た!?」


「起きてからは見てませんが、寝ながら引くほどマドレーヌを食べてましたよ。よく水分無しであんなにマドレーヌ食べられますね」


「ほんとに言ってるお前!? 俺寝ながらマドレーヌ食ってたの!? ちょっと信じたくないんだけど!?」


「ああすみません間違えました。フィナンシェでした」


「どっちでもいいわ! 寝ながら何か食ってたこと自体がショックなんだよ! マドレーヌかフィナンシェかは聞いてねえよ!」


「今度は寝ながらヘアアイロンとか食べてみて欲しいです」


「食わねえよ! リクエストすんなそんなもん!」


 いつもと全く様子が変わらない高橋にツッコミを入れるものの、俺の心にはずっともやがかかっている。ナゾカケのことが引っかかってるんだな。これを晴らすにはナゾカケにツッコミを入れるしか無いんだけど……。今の俺にそんなことができる自信は無い。なんなら今高橋にツッコミを入れるのにも、かなり気力を使ってしまっている。


 ダメだ。やっぱりまた眠ろう。今の俺には、何もできないんだ。


「すまん高橋、ちょっと外してくれないか?」


「顎をですか?」


「席をだよバカ! なんで急に顎外せとか頼むんだよ! 新手の拷問か!」


「席を外すと言っても玄司様、私と外に出ないのですか? ボケルト人にツッコミを入れないと、玄司様の目的も、この町を救うことも、縄跳びで三重跳びをすることも、何も叶いませんよ?」


「最後のは別に叶わなくていいわ! 俺三重跳びしたいって言った!? いやお前さ、いいからちょっと出てってくれよ。俺は今1人になりたいんだよ」


「でも玄司様と私の左臀部は常に一緒って言ったじゃないですか」


「言われてねえよそんな気持ち悪いこと! 普通心とかじゃねえのそういうの!?」


「右に変えておきましょうか?」


「まず臀部を変えろよ! なんで俺お前とケツ共有しなきゃいけねえんだよ! ちょ、もういいから出てけ!」


 高橋を押して部屋の外まで連れて行き、呆気に取られる高橋の顔を見ながらドアを閉めた。ちょっとだけ罪悪感が出て来るが、今はとりあえず1人になりたい。高橋の相手をしてられる心境じゃないんだ。


 ドアの外にいる高橋が、大きな声で俺に話しかけてくる。


「玄司様ー! 早くこのドアをスライドしてくださーい! 私が中に入れませんよー!」


 いやここのドア引き戸じゃねえだろ。なんでスライドさせようとしてんだよ。また壊れて損害賠償請求されるわ。


「玄司様がこのドアを開けるまで、私は待ち続けますからねー! あ、次のソリティア始まっちゃう」


 またソリティアしてんのかよ。暇じゃねえか。そのノリで暇つぶししながら待つやつとかいる? もうちょい真面目にできねえのかよこいつは。


「玄司様も一緒にブラックジャックやりませんかー? カクカクしますよー!」


 ソリティアって聞いてたんだが。あとワクワクじゃなくてカクカクなのかよ。不具合じゃねえかもう。そんな状態でリリースすんなよ。


「玄司様がドアを開ける3秒前! 3! 5! 7! 11!」


 増えてるし素数じゃねえか。全然俺にドア開けさせる気ないだろあいつ。いやほんともういいんだよ。今は、ただ眠りたいんだ。


 やかましい高橋の声が聞こえないフリをして、俺はまた目を閉じた。

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― 新着の感想 ―
玄司……落ち込んでる!!落ち込んでるやん!!! 初動の刑務所行こうって言ってなかった?が三回出てほんと面白くてwww 臀部も一緒だしwww そして次のボタンがないことにまた悲しみに暮れます。 ソリテ…
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