第47話 ナゾカケ無双
「うわあ! 急に出て来んなよお前! さっきまであっちにいなかった!?」
「お題ください」
「なんで!? そんな唐突に来るもんなの!?」
「お題ください」
「それしか言えねえのかお前は!」
長めの黒髪をセンターで分けた出っ歯の男は、赤いジャケットの襟に手を置いてお題を要求してくる。
こいつ、噂には聞いてたけど本当にお題だけ要求してくるのかよ……。めんどくせえやつだな。
「お題ください」
「ああもう分かったよ! そうだな……じゃあ信号機で」
「整理整頓しました」
「整えましたでいいだろ!」
「信号機とかけまして、久しぶりのお風呂と解きます。その心は、どちらも赤が止まるでしょう」
おお……。まあ成立してんな。上手いのは上手いけども……。でもこれで満足なのかこいつ? なんでずっと謎かけを求めてくるんだ?
「お題ください」
「また!? お前ほんとそれしか言えねえの!?」
「お題くださいお題」
「ちょっと催促強めんなよ! お前そんなにお題求めてどうしたいんだよ!?」
「お題ください」
「ああもう分かったって! じゃあ財布!」
「大掃除しました」
「なんで整えねえの!?」
「財布とかけまして、トラウマに触れられた人と解きます。その心は、どちらも口を閉じるでしょう」
おお、すげえなこいつ……。確かに謎かけ自体は成立してる。でも待ってくれ、これオチまで自分でやってるから、ツッコミどころが無いぞ? これどうしたらいいんだよ……。ボケルト人にツッコミを入れないと、俺の生き返りゲージも回復しないし、雨も降らせることができない。
これはちょっと困ったな……。どう対応していいか何も分かんねえぞ……。
「お題ください」
「まだ!? なんで満足しねえのお前!?」
「お題くださいお題」
「めんどくせえやつだな! 確かに嫌われてるのは分かったけども!」
「お題くださいお題くださいお題」
「分かったってもう! そうだな……じゃあ寿司ならどうだ! まずボケルト人なら寿司を知らねえだろ!」
「握りました」
「絶対知ってんなこいつ!?」
「お寿司とかけまして、高音が出ない日のカラオケと解きます。その心は、どちらもサビ抜きでしょう」
「寿司はサビ入れててもいいだろ! お前の好みじゃねえか!」
しかしなんだこいつ……。ちゃんと謎かけできるやつじゃねえか。今のはたまたま粗があったからツッコミ入れられたけど、こいつに俺は何もできないんじゃないか……? これはちょっと困ったぞ……。
「お題ください」
「おい、ちょっと勘弁してくれよ。もうお題が思いつかないんだって」
「お題ください」
「おいおい、やべえぞこいつ! これしか言わねえ!」
ひたすらにお題を求めてくるナゾカケの対応に困っていると、空のマヨネーズ容器を2つ持った高橋が戻って来た。
「どうしたんですか玄司様。あたかも困っているかのような顔と態度ですけど」
「実際困ってんだよ! 見りゃ分かるだろ! ちょ、高橋助けてくれよ」
「助けてくれと言われましても……。私には玄司様を助けることしかできませんよ?」
「じゃあできてんじゃねえか! さっさとしろ!」
「分かりました。何をすればいいんですか? ソリティアですか?」
「ソリティアはもういいわ! もうスマホかなぐり捨てとけよ! 違うわバカ、このナゾカケがずっとお題をくれって言ってくるんだよ。なんとかしてくれよ」
「お題ですか? えーっと、税込で460円です」
「そのお代じゃねえよ! バカだなお前は! そもそもそれ何のお代なんだよ!?」
「ああ、このマヨネーズです」
「それは自分で払え! 何ナゾカケに払わせようとしてんだ!」
やっぱ高橋じゃダメか……。こいつに助けを求めた俺がバカだったな。でもナゾカケの芸はもうこいつ1人で完結してる芸だ。対して俺にはツッコミしか武器が無い。
本当にどうしたらいいんだ……? このままじゃナゾカケには敵わない。何もできずに終わっちゃうぞ?
「玄司様、お題ください」
「お前もかよ! なんでお前にもお題やらなきゃいけねえんだよ!」
「簡単なことですよ玄司様。ナゾカケに謎かけで勝てばいいんです」
「謎かけで……?」
なるほど、その手があったか。確かに謎かけでこいつに勝てば、自信を失って謎かけのお題を求めてこなくなるかもしれない。高橋にしては冴えてんじゃねえか。
「よっしゃ、じゃあ行くぞ。そうだな……饅頭とかどうだ?」
「整理整頓しました」
「とっ散らかしました」
「どっちかは整えてもらっていい!?」
まずはナゾカケの方を聞いてみよう。これが高橋の謎かけの基準になるからな。
「饅頭とかけまして、アイデアマンの頭と解きます。その心は、どちらも餡が詰まっているでしょう」
……上手いな。これ高橋勝てるのか? いやでも高橋が自信満々にお題を求めてきたんだ。勝てるはずだ。頼むぞ、高橋!
「饅頭とかけまして、お好み焼きと解きます。その心は、どちらもマヨネーズをかけると美味しいでしょう」
「やっぱダメだこいつ! マヨネーズかけることしか考えてねえ!」
高橋に期待しちゃダメだったか……。どんだけ期待を裏切るんだよこいつ。でも結局俺、今回何もしてなくないか?
「お題くださいお題くださいお題ください」
「わあああああ! 高橋、逃げるぞ!」
「すみません今オンラインでリバーシやってるので」
「すぐやめろバカ! 逃げるぞ!」
俺は高橋の手を引いて、とにかくナゾカケのいないところへと駆け出した。




