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【完結保証】ボケルト異世界狂想曲〜手違いで死んだ俺は生き返るためにツッコミを入れる〜  作者: 仮面大将G
第二楽章 コボケ町のリタルダンド

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第35話 落下する2人

「うわああああ! 落ちる! 落ちるって!」


「大丈夫ですよ玄司様。落ちてもまた来年があります」


「俺受験の話してねえから! 呑気かお前バカだな!」


「そんなことより地面が近づいてきましたよ。手を振って挨拶しましょう」


「地面ってキャラクターか何かだっけ!?」


 そんなこと言ってる場合じゃないんだよまじで。町の住人たちに放り投げられた俺たちは、何故か『止まれ』と叫んだ高橋のせいで地面に真っ逆さまだ。


 このままじゃ本当に落ちる……! この場合俺死んだらどうなるんだ? この命は神に与えられた仮の命だけど、これすら失ったら俺復活できないんじゃ……。


『安心するが良い城金玄司よ。お前の命はステンレス製だ』


「丈夫だとかそういう話してねえんだよこっちは! 何命がステンレス製って!? ていうかお前久々に出て来たな! 何してたんだよ今まで!」


『すまない。韓ドラに夢中になっていてな』


「主婦か! そんなことしてる間に俺を助けろよ!」


『それが助けてもらう者の態度か? もう少し礼儀というものを弁えた方が良いぞ』


「そもそもお前のせいで俺こんなとこに来させられてんだよ! いいから助けろ!」


『私に今すぐこの場をどうにかする力は無い。後で温かいコーヒーを持って行くことぐらいはできるぞ』


「要らねえわそんなちょっとした気遣い! もうほんとお前何ができんの!?」


 ずっと思ってたけど、こいつ神のくせにできることが限られすぎてるんだよ。もっと状況をどうにかできる力とか無いのかよ神のくせに。でもいちいち俺に試練を与えて生き返らせようとしてる辺り、多分そんな大した力は無いんだろうな。そんなやつに生死の管理任せんなよ。


「いや役立たずの神が出て来ても何も解決してねえ! どうすんだよこれ!」


「玄司様、大丈夫ですか? 突然取り乱すのは精神疾患の可能性があります。いい心療内科を紹介しましょうか」


「落下してんだから取り乱すだろ普通! むしろなんでお前は冷静なんだよ!」


「何言ってるんですか玄司様。私は冷たいパスタじゃありませんよ」


「冷製パスタの話してねえから! ああもうアホだなお前は! ダメだもう地面に……」


 目の前に地面が迫って来る。俺はもう諦めて覚悟を決め、目を瞑った。

 ああ、結局俺の人生はここで終わりか……。ピアニストになる夢、叶えたかったな。あとせめて日本で死にたかった。なんで俺こんなアホな異世界で死ぬんだろう……。


 そんなことを考えていると、体が何か柔らかいものに包まれた。優しくて少し甘い匂いが俺の鼻をくすぐり、思わず目を開ける。すると俺の視界は、柔らかく白っぽい色で埋め尽くされていた。


「なんだ……? 何が起きた? 助かった……のか?」


「生きてるんだから助かったに決まってるじゃないですか。何言ってるんですか玄司様」


「お前いちいち場面ぶち壊しにすんなよ! 何かが起こって助かったことを確認するのは必要だろ!」


「見れば分かることを口に出さなくても、すぐ把握すればそれでいいじゃないですか。回りくどい生き方してますね」


「お前はもう小説のキャラクター失格だよ!」


 しかし本当に何が起きたんだ? 俺たちは地面に激突する寸前だったはずだが……。それにこの白いものは何なんだ? 


「玄司様、これ美味しいですよ。食べてみてくださいよ。まるで味の溶接工場です」


「1ミリも想像つかねえ食レポだな! 不味そうだし! てかこれ食えるのか?」


「美味しいって言ってるんだからそうですよ。毎回言わせないでくださいね本当に」


「なんでお前今回そんな嫌なやつなの!?」


 高橋が美味いと言うのを信じて、目の前にある白いものをちぎって食べてみる。ふかふかの食感と、ほんのりとした甘さが口の中に広がる。

 これは……パンだな。でもなんでこんなデカいパンがあるんだ? さっきまで地面しか見えてなかったはずだが……。


 不思議に思いながらパンを食べていると、上の方から男の声が聞こえてきた。柔らかく包み込むような声だ。


「大丈夫かいお前さんたち。今助けるから、そこでパンを咥えて待っていてくれ」


「珍しいな咥えるもんが! 指とかだろ普通!」


「玄司様、指を咥えて待つというのは、羨ましい時に使う言葉です」


「知ってるわ! それは分かった上で『パンを咥えて』って言葉にかけて話してんだろ!」


 高橋のアホに付き合っていると、上から光が見えてくる。パンをかき分けて、キャスケットのような帽子を被ったふくよかな男が顔を出した。


「大丈夫かい? 生きてるかい? 今引っ張り上げるから、このフランスパンに掴まるんだ」


「パンで徹底してんだな!? 別にもう助かるならなんでもいいけど!」


「玄司様、私は後で大丈夫です。先に行ってください」


「いいのか? なんだよお前、やっといいとこ見せたな」


「いえ、このパンが美味しすぎて、もう少し食べていたいのです」


「クソみたいなやつだな本当お前は! いいわもう勝手に食ってろよ!」


「このパン、多分マヨネーズをかけたらもっと美味しいですよね玄司様?」


「俺に聞くなそんなこと! その会話はマヨラーの間でやってもらえる!?」


 とりあえず高橋は放っておいて、俺は目の前に降りて来たフランスパンに掴まる。少しづつ引き上げられていき、俺はパンの中から外に出ることができた。

 周りには人集りができていて、俺の方を心配そうな目で見ている。コボケ町、いい人ばっかりなのかもな。


 俺が座り込んでいると、ふくよかな男は高橋も引っ張り上げ、助け出していた。


「もう少し食べていたかったですが、仕方ないですね。この大きなパン、もらえないですかね?」


「もっと命が助かったことを喜べよ! 割と危なかったぞ!?」


「お前さんたち、大丈夫かい? 怪我や病気は無いかい?」


「怪我だけでいいだろ! 病気があったら多分この落下関係ねえわ!」


「元気そうで良かった。落ちていくお前さんたちを見て、咄嗟にパンを焼いてクッション代わりにしたんだけど、無事でホッとしたよ」


「焼いたの!? あの一瞬で!? お前すげえパン職人だな!?」


「玄司様、この男見たことがあります。確かコボケ町でもかなりの有名人だった気がしますよ」


 そうなのか……? 確かに周りを見ると、俺たちじゃなくパン職人の方に目を向けている人もいる。いきなり有名人に会っちゃったのか俺たちは……?

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